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あれ、単なるウワサが呪いになってた

窓を開けるか開けないか贅沢な悩みを抱えられる心地の良い季節になってきた。風が吹いている〜♪ほんと、きもちいい。

ただ、ここがもし実家だったら。

どんなに暑くても、窓は開けない。

私が、自分の部屋の窓を開けられなくなったのには、理由がある。

平日の午後、うちの裏では会議が行われる。そう、井戸端会議である。

その声が、耐えられない。だから、窓をぴしゃりと閉めてしまう。

すべての窓とか、すべての声とか、すべての井戸端会議を恨んでいるわけじゃない。

ただ、その井戸端会議だけが嫌なのだ。あのときのことを、思い出すのだ。

中学生のとき、友達は、見た目が派手な子たちだった。

だけど、見た目はピカピカでも、中身もそれ以上にピカピカした友達で、一緒にいるとずっと笑っていられてた。

その子たちと、お祭りのあと、3人で家の前で花火をしていた。盛り上がった。

翌日、我が家に訪問者があった。

井戸端会議のメンバーの一人の、岡田さん(仮名)だ。

彼女は、母に言った。

「娘さん、昨日の夜、タバコ吸ってたらしいですよ」

話によると、彼女の友人が私たちの花火を目撃しており、それが怖くて怖くて、道を通れなかった。そして、私達はタバコを吸っていた、と言っていたらしい。

それを、正義感が強いのか、噂が大好きなのか、とりあえず、自身の正義を信じた正義の味方、岡田さんは、井戸端会議のメンバーでもない母に言いに来てくれたのだ。

騒いでしまったことは、申し訳なかったが、

もちろん、タバコなんて誰も吸っていなかった。

そう、全くのデマである。

母は、岡田さんを信じなかった。だから、その話で私が怒られることはなかった。母が私の方を信じてくれたという経験は、今でも宝物だ。

その友達とは今でもずっとずっと仲が良い。集まると、あのときのようにいつでも笑い合えている。

もともと特別な接点のない岡田さんと、関わることもない。

ハッピーエンド。

なんだけど、

胸に突っかかった思いは、今でも拭えない。

だから、岡田さんがメンバーの井戸端会議の噂話を聞きたくない。

窓が、開けられない。呪いだ。

ただ、これも母から聞いた岡田さんのウワサでしかない、のだ。でも、私はやっぱり母の方を信じる。

私を信じられなかった岡田さんと、岡田さんを信じれなかった私。

ウワサで傷つけあった寂しい関係。それだけ。

悪い噂って、呪いになる。言葉は消えても、呪いは消えない。

今度、実家に帰ったら、思いっきり窓を開けよう。

私の人生の新たな幕を開けるのだ。

さあ、呪いを振り払おう。

風が、吹いてる。

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