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【64風3Dアクション】『Yellow Taxi Goes Vroom』感想



【前書き】


『Yellow Taxi Goes Vroom』
今年の4月にひっそりとリリースされていた3Dアクションゲームである。

いや、731件のレビューに加えてうち98%が好評という素晴らしい結果を残している以上、何がひっそりなんだという話ではあるんだけど、少なくとも自分のTLでこのゲームが話題になっていたところを見たことが無かった。
本作を見つけたのも海外のインディーゲームサイトでの紹介であり、それまで自分のSteamクライアントのオススメにも上がって来ていなかった。

そんな『Yellow Taxi Goes Vroom』、直感的に惹かれるものがあって実際にプレイしてみたところ予想以上に面白かった。
こういうゲームと思わぬ形で出会えた時が、リアルでもネットでもゲームを漁ってて楽しい瞬間のひとつだと思う。
せっかくなのでこの喜びのまま、本作を軽く紹介してみようというのがこの記事ができた経緯だ。
ちなみに日本語にはしっかり対応していて翻訳も問題ナシ。
余計に、もうちょーっと日本でも話題になってもいい気がする?

【ゲーム概要】64風探索3Dアクション?

本作のゲームジャンルを言葉に起こすなら、「探索3Dアクション」と言ったところだろうか。

メインとなるエリアからいくつかの異世界に飛ぶことができ、それぞれの世界の中に大量に散らばっている「ギア」を集めるのが主なゲームの目的となっている。

このギアを集めたり、特定のイベントをクリアすると行ける場所が徐々に増えていく、というゲーム構成だ。

ボリューム(世界の数)も結構すごい。ワールドマップを初めて開いた時はびっくりした。

勘のいい人は気づいたかもしれないが、要するに、かなりマリオ64やマリオオデッセイに近い作りになっている。
大きな違いをあげるとすれば2つあり、1つは敵らしい敵が殆ど存在せず、体力ゲージも無いこと
死因の大半は落下死であり、その際は近い場所からリスタートする。
残機の概念も無いため、かなり探索に特化したゲームだと言える。

もうひとつは、なんというか、主人公がタクシーであることだ。

左のタクシーが主人公。着せ替え機能アリ!!

タクシーに乗っている誰かですらなく、タクシーが主人公なのである。
車の外観に恥じずその動きは俊敏(?)で、ややレースゲーム染みた疾走感のあるプレイ感は本作の魅力でもあり、難点でもある。

【特徴】時に親しみやすく、時に牙を剥く「64感」

現代において本作『Yellow Taxi Goes Vroom』の最大の特徴は、その隠す気もないニンテンドー64感溢れる3Dグラフィックだろう。

同じようなコンセプトの作品はいくつか見てきたが、本作はその中でも64感、及び単純に作品の規模が抜けていたように思えた。
画面フィルターも種類もなんだかやけに豊富で、懐かしさの再現には全身全霊の姿勢が伝わってくる。

ところがこの64愛の結晶とでも言うべき作風が、皮肉なことに本作の難点にもなっている
カメラアングルが割とクソ寄りなのである。

64と言えば3Dゲーム黎明期。
見ていればまあ慣れてくるグラフィックそのものよりも、それを画面に映すカメラアングルに難を抱えていたゲームが多かった時期だったような気がする。
ノウハウがあまり培われていなかったのかなと思う。

本作ではこうしたあの時期特有のカメラアングルのなんとも言えない不自由さまで再現されており、それが意図したものかどうかは断定できない。
事実としてあるのは、主人公が車であることによって生まれるスピード感との相性がたぶんあんまり良くないことである。

スピードがあるからか?あるいはスピードがあるように見せるためか?
基本的にまず視野が割と狭いので、状況の確認が結構大変。
何も考えずに思い切り走ろうものなら…………ああ、壁にぶつかってひっくり返ってなんかもう何も分かんねえ!
距離感もよく掴めねえ!高低差も分からねえ!

世が世なら「マリオ64はニンテンドー64のローンチソフトでありながら既に3Dアクションとして完成されていたぞ」と比較されていった無数のクソカメラゲーの中の1本として名を連ねていたであろうことは想像に難くない。
単純にマリオ64にレースゲームのようなスピード感を足しただけのゲームではないというのは、残念ながら強く念押ししておかなければならない。

一方で、操作性に難を抱えているからこそ探索だけが目的のゲームが成立しているという側面もある。

ワールドを見渡して「あそこになにかありそうだ」という発見から、実際に辿り着くまでが中々大変。
ルートを見つけるのも簡単ではないし、見つかったとしてもそのルートを走破するのにはこのゲームのカメラアングルや挙動を理解した上での独特の操作技術が求められる
カメラ様のご機嫌を損ねないように電撃イライラ棒のような疾走感をかなぐり捨てた操作を強要される場面もあれば、そういえばわたくしタクシーでしたわと言わんばかりに全速力で地や空を舞うこともある。

いまいち説明が難しいのだけど、『Yellow Taxi Goes Vroom』の魅力と面白さはこうしたゲームの仕様、挙動との対話にあったと思う。
ただ遺憾ながら基本的にゲーム側に対話の姿勢は無いなので、いかにこちらが上手く合わせられるかが大事になってくる。
職場の付き合いのような難儀な作品だ。

【総評】体験版をやってみよう

手のかかる子供のような本作を、自分はあまり嫌いにはなれなかった。
ただ、間違いなく人を選ぶゲームである。
ゲーム性以前にまず3D酔いを起こす可能性もある。
(ちなみに自分の3D酔い耐性は「Portalをゲーム開始30分で目が回って続けられなかった程度」だけど本作は大丈夫だった)

総じてポップで親しみやすく、懐かしい見た目とは裏腹に、何かと気難しい作品。
幸いなことに体験版がストアページに公開されているので、ダメ元でプレイしてみるのも良いだろう。
「あの頃のゲーム」に浸りたい人ならきっと楽しめると思う。


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