そして在来線の旅は熊本から鹿児島へ。栗めしを食べてスイッチバックを体験できて、火山も見られる楽しい肥薩線。②
在来線での九州縦断の旅2日目は人吉駅まで到着しました。今号では「いさぶろう・しんぺい」に乗車して一気に鹿児島駅に向かって南下していきます。今回のルートはこちら。
人吉駅から鹿児島までを肥薩線でそのまま南下です。九州新幹線のルートは地図左側のグレーのルートですが、僕たちは山間部を攻めたかったので火山活動が活発な霧島連山を横目に九州南部を中央突破し、同じく火山活動が活発な桜島を見ながら鹿児島駅に向かうという「火山ルート」をとりました。
いきなりご飯かよ!と思われるかもしれませんが、今号ではいきなり駅弁のお話です。前号でもお伝えした通り、JR人吉駅の駅弁「栗めし」は「第11回九州駅弁グランプリ決勝大会」で第9位に入った逸品です。熊本駅〜人吉駅間で食べた駅弁は玄米おにぎりで少量だったのであれから1時間半しかたっていませんが、僕はもちろん食べれます。
どうですか。この素敵なレイアウトと色合い。朱色の栗の形をした器に栗の実の黄色に合わせた同系色のおかずと混ぜご飯の数々。見ただけで食欲が刺激されます。そして山の香りだけではなく、小海老を入れることで天草の海の恵みをさりげなくアピール、これぞ「THE熊本」という駅弁になっています。味も栗の甘さと混ぜご飯のコクが全体の味をリードしていますが、実は(個人的に大好物でもある)高野豆腐が「一旦停止ボタン」の役割をこのお弁当の中で果たしています。全体的に水分の少ない食べ物が多い中で、高野豆腐は水分を多分に含んでいますので食べることで「はっ」と現世を思い出し(オーバーですが)、お弁当を食べることに没頭しすぎず、車窓からの景色を見ることを思い出させてくれる絶妙なワンポイントになっています・・・と、そんな事を考えながら食べているうちにあっという間に次の駅に着いてしまいました。
JR大畑駅です。これで「おこば」駅と読みます。おこば駅はJR肥薩線の山線と呼ばれる険しい山間部区間にある駅で、日本で唯一ループ線の中にスイッチバックを併せ持つ駅としても知られています。この駅の昔の様子をWikipediaで見る事ができます。少し引用します。
開業当時に走っていた蒸気機関車のために設けられた、信号所と給水所としての役割が大きかった
駅で、現在でも駅の周りには人家がなく、大畑の集落に出るには徒歩1時間近くかかる。
人吉駅から連続した勾配を登ってきた蒸気機関車は、この駅で給水をする必要があった。
また機関士たちのみならず、トンネルの連続で乗客達も顔や手が煤汚れするため、駅のホーム
にある湧水の洗顔場で洗っていたという。人吉駅から大畑駅まで、D51形蒸気機関車で1トンも
の石炭を消費し、1分間に250リットルもの水をボイラーに送り続けていたという。
特に、1927年まではこのルートが鹿児島本線とされ、多くの重量貨物列車が往来していた。
この駅近辺の様子をGoogle mapで見るとわかりやすいので以下に記します。図をクリックすればGoogle Mapに飛びます。
ループをしていくのがわかります。しかしそれほどきついR(コーナー)でもなさそうなのですが、スイッチバックが必要というのはやはり急勾配なのでしょうね。
・・・ん?何かこの駅変ですね。
おおおお・・・何か貼ってあると思ったら名刺の数々。車内放送を聞いた所、ここに名刺を貼っていけば出世すると言われているようで訪れる人たちがみんなここに名刺を貼っていくそうです。勿論、僕も貼って帰りました。
大畑駅の時刻表です。1日3本しかありません。それも朝一は通常各駅停車で残りの2本は僕たちが乗っている特急列車です。電車でちょっと近所まで・・・というのはもう難しいようです。時刻表ってどこか物悲しさがありますよね。僕は時刻表を見ると少し悲しい気持ちになる時もあります。
本当に近くには何もない駅です。少し物悲しさを感じますが、花が元気に咲いていて訪れる人たちにひとときの安らぎの世界を提供してくれます。
さて電車はスイッチバックを行います。車掌さんの座席が前方から後方へと変更になります。車掌さんが急いで後方へ向かいます。列車はスイッチバックをひっそりと行い次の駅へ向かいます。
矢岳駅です。この雰囲気、いいですね。ひらがなとアルファベットの隣の駅表示は個人的には大好きです。とても時代感のある家に持って帰りたいくらいの素敵な質感です。
駅構内も綺麗に維持されています。僕たちが訪問した時は構内で寝ているおじさんがいましたが、どうやら電車を楽しみに待っていたようでむくっと起き上がってきました。しかしこの駅はこの駅舎だけではありません。お楽しみがもう1つあります。
SL展示館です。駅から徒歩30秒の所にSL展示館が設置されているのでわずかな停車時間の間でも見に行くことができます。この肥薩線の良いところは、各停車駅の素敵な部分を漏れなく紹介して見る時間をくれるという点です。この配慮が何度も言いますが「沿線住人が愛している鉄道」であるという事を再認識させてくれます。
いかがでしょうか。立派なSLでしょう。もちろん運転席にも登ることができますよ。時間が限られているので駅についたら猛ダッシュで1番乗りをすると比較的余裕を持って見ることができます。
当時の様子がわかる運転席です。
展示館の中には地元の人たちが持ち寄った地元の名産品が特設売店として出店されて販売されています。この辺の品物はこの辺でしか買えない価格ですので激レアです。そろそろ発車の時間です。急いで列車に戻りました。なんか銀河鉄道999に乗っている星野鉄郎の気持ちです。(乗り遅れたら遥か未来まで待たないといけない錯覚に・・・)
列車は険しい山道を進みます。遠くに霧島連山が見えてきました。
突如山間に素敵な雰囲気の駅が見えてきました。映画のワンシーンにもなりそうな本当に素敵な佇まいと周辺の木々です。線路が並行していますがこれからこの線路に入っていきます。そうです、スイッチバックが間も無く行われるという意味です。
真幸駅に到着しました。横断幕で知りましたが、この肥薩線は日本の20世紀遺産20選に選ばれているのですね。本当によくわかります、その意味が。この鉄道はいつまでも続いて欲しい素晴らしい鉄道です。さて、この真幸駅ですが、興味深いものが2つありました。
幸せの鐘です。
山津波記念石です。こんなに大きな石が山から落ちてくるなんて想像するだけで怖いですね。
そして電車は先に進み、「いさぶろう・しんぺい」の終着駅である吉松駅に到着しました。
これから鹿児島に向かう在来線とのツーショットです。
駅のホームには「いさぶろう・しんぺい」が来たタイミングで開く売店がありました。撮影しているうちに閉まってしまい残念!
鹿児島行き電車への待ち合わせは約1時間ほど。その間、駅周辺を見たいと思い外に出ました。ちなみに待ち合わせの時間は畳の待合室がありますので、そこでのんびりとしてもいいかもしれません。
駅前には吉松駅開業100周年記念碑、記念館、汽車が止まっています。
売店もあります。でもこれもおそらく「いさぶろう・しんぺい」などのような特別列車が入って来たタイミングしか空いていないようです。僕たちが周辺をうろうろした後に訪問した時はすでに閉まっていました。残念。
駅前には日帰り温泉もありましたので、空き時間に時間を潰すには丁度良いかもしれません。今回は利用はしませんでしたが、同じ列車に乗っていたおじさんは入って行きました。
吉松駅はこんなデザインです。
意外と時間が潰せる吉松駅、いよいよ鹿児島に向けた在来線が出発の時間です。電車に乗ることにします。ここから先は普通の車両ですが扇風機がいいですね。渋いです。
電車はどんどん自然の中を進みます。
路線としては自然と街が交互に出て来てとても楽しい路線です。次の目的地は隼人駅での乗り換えになります。隼人駅まで来るとちょっと駅の構内デザインも都市感がでてきます。ちなみに、肥薩線の終点は隼人駅になります。ここから先はJR鹿児島線です。
吉松駅から感じていたのですが、この路線は沿線に学校が多いようで、高校生や学生さんが多く鉄道を利用しているんだなと感じました。
そして今日の目的地、鹿児島駅が近づいて来ます。しかしその鹿児島駅に到着する前のお楽しみはこれ、桜島です。
轟々と噴煙あげて噴火していますね。桜島。噴火ですよこれ。雲ではありません。すごい迫力です。
そして遂に今日の目的地、鹿児島に到着しました!
新幹線はJR鹿児島中央駅になるようで、この鹿児島駅は結構渋目の駅です。しかしあの鹿児島の名を持つ駅ですから、感慨深いものがあります。今日の旅はとにかく電車で弾丸ツアーをして南下してきましたが、やはり肥薩線の「いさぶろう・しんぺい」は最高でした。もう1回乗りたいところです。
次号はさらに鹿児島線に乗ってJR最南端を目指す2日間の旅に出ます。お楽しみに!
G1でした。あいがとさげもした!