トランスウィドウからみたトランスジェンダー② 被害者意識
トランスジェンダリズムの根底には被害者意識がある。妻にカムアウトする際もずっと性別違和のことで苦しんできたと言い、妻側がどう思うかは考えない。おそらく男性社会で虐げられてきた反動だろう。自分はこれだけ我慢してきたから、妻は彼らの精神異常を理解するべきと押し付ける。『Behind the Looking Glass』によると、幼少期の性的虐待によって女装するようになり、男性の体でいることの嫌悪が原因でトランスジェンダーになる人もいるという。幼少期のトラウマの有無に関わらず、彼らには誰よりも自分が可哀想であり同情されて保護されるべき存在である、という価値観が存在する。
トランスジェンダーのデモで「私たちを殺さないで」と書かれたプラカードを見たことがあるだろうか。トランスウィドウからすれば、いつどこで彼らが不利益を被ったのかという話だ。トランスジェンダーであることで特定の仕事に就けなかったり、家を借りられなかったり、病院にかかれなかったことがあるのだろうか?彼らはまるで社会の底辺にいるように語るが、法律は彼らとトランスジェンダーたちを搾取する人々が有利になるように変えられている。
私の元夫はカムアウト後、いかに結婚生活が彼自身を不幸になったかを語っていた。私のせいで貯金が底を尽きて、借金までする羽目になり、私と結婚したせいで本当の自分を隠していた、と。実際は彼自身の浪費が原因であるのに、その記憶はすっぽり綺麗に抜け落ちたらしい。それが終わると、今度は世界中のトランスジェンダー絡みのニュースを取り上げて、トランスジェンダーたちがいかに差別の対象になっているかを熱弁し始めた。トランプ元大統領のせいでトランスフォビックが広がっていると嘆いたり、トランスジェンダーの自殺率が高いと主張した。
残念ながら私は冷徹な人間なので、それを聞いてなんとも思わなかった。彼は社会がいかに男性のために作られているかを知らない。彼は男性だから入学できる学校に通って、男性に有利なエンジニアリングの職場で出世した。彼の職場には女性もいたが、管理職は全員男性だった。日本よりはいささかマシかもしれないが、イギリスも女性の管理職といえば人事やマーケティング、経理担当ばかりで、技術や経営に大きく関わるような役職に女性はまだ少ない。グローバルな企業でも特に大企業はその傾向にあるし、地方の企業だとそれこそ男ばかりだ。
元夫がトランスジェンダーであることを理由に直接差別されたことはない。しかし、まるで被害にあったかのような熱量で話す姿に私は病的なものを感じた。彼のような男性にとって、女という性別は言い訳ばかりなのだろう。妊娠、出産、生理、更年期障害、子育てなどの理由でいつでも仕事を辞めることができるし、不当な扱いをされたら差別と言えばいい。学校や就職先には優先枠があって、大黒柱として家族を支えることもまずない。もちろん、私はそんなの事実ではないと分かっているが、彼は男性として「言い訳の出来ない環境」にいた。
彼は経済的に恵まれ、健康で学力に問題はなく、最低限の人間関係を構築する能力もあった。しかし、「男らしさ」だけはどうしても手に入らなかった。海外のマッチョイズムは日本より強烈で、たとえば「これは男性差別だ」などと口にしたら「自分は社会的敗者です」と自己紹介しているようなものだ。レディーズファーストの文化もそうだが、ほとんどの男性は社会がまだ男性に有利であり、生物学的に女子供は男に劣ることを知っている。それにケチをつければ女々しいルーザー以外の何者でもない、と男女どちらからもフルボッコにされる。
実際に現実社会で女性が優遇されている場面などそうそうないのだが、被害者意識の強い人は冷静に他人を分析しようとなどしない。常に自分が主人公でなければ気が済まない。それに、被害者になれば今まで手に入らなかった他者からの注目が集まる。言いたいことが言えず、劣等感の塊の男性がもし性別が選択できるとしたら、女性と言う性は彼らにとって食いつかない訳がないほどの好条件だ。
ここで私がはっきりさせておきたいのは、元夫のようなトランス女性が捉える女性像は、隣の芝が青くみえている状態の他ならないということだ。彼らの考える女性は常にチート状態で、優遇されているのだろう。しかし、私たち女性はそうではないことを知っている。女性であることを理由にきょうだい間で差別されたり、進路や就職先を限定されたり、男性のために身なりや立ち振る舞いを制限される。こんな散々な性別に憧れや嫉妬の念を抱く人がいるなら、その人は紛れもなく「女性ではない」だろう。
私はトランスジェンダーたちの被害者意識を彼らの精神的セルフプレジャーだと考える。現実社会で実際に差別されていないのをいいことに、可哀想な自分を演じることで満足しているだけだ。彼らの自己満足のために社会全体が付き合わされることになれば、それは間違いなく狂気であり、現実と解離することになる。
今の社会はトランスジェンダーたちの要求を甘く見ているが、トランスウィドウたちは彼らがいかに貪欲で要求に終わりがないことを一足早く知っている。彼らの言うように、トランスジェンダーが社会で虐げられているのであれば、なぜ世の中は自己申告で性別を自由に選べるようになっただろうか?彼らの主張にはクエスチョンマークがいくらあっても足りない。
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