
トランスウィドウからみたトランスジェンダー① 社会性の欠如
トランスウィドウとトランスジェンダーの子供たちについてのドキュメンタリー『Behind The Looking Glass』を皆さんはもう観ただろうか。同作はパートナーまたは父親がトランスジェンダー女性になった女性たちの証言を中心に構成されていて、精神医学者や心理学者、ジャーナリストによる解説も含まれている。そのなかでも私が共感したことや重要だと思うパートを、体験談を含めながら複数回に分けて紹介したい。まだ日本語字幕はついていないが、(*2025年1月に日本語字幕が追加されました)かなり良質なドキュメンタリーが全編無料で公開されているので、英語が大丈夫な方にはぜひ観ていただきたい。
『Behind The Looking Glass』で複数のトランスウィドウたちが、元夫が男性として強すぎるこだわりを抱えていたり、意思疎通が不自由であることに触れている。彼女たちは元夫が昔ながらの男社会で育っても男らしくなれなかった結果、幼少期に女装に目覚めたり、恋愛対象が男性だから自分の性別はやっぱり女性だと結婚後にカムアウトする男性がいるという。
これはかなり興味深い点で、ハリポタ俳優が支援している若者のためのオンライン掲示板『TrevorSpace』を調査した記事によると、掲示板に出入りする子供の多くは性同一性障害ではなく同性愛と自閉症の傾向が見られるという。そんな子供たちが自分の憂鬱な気分も性別違和のせいかもしれないと掲示板で相談する。すると、彼らより明らかに年上のような人物が「自分の性別は自分で決めていい」「自分が10代前半のときも同じ感じだったけど、性転換後は気分が晴れて生きやすくなった」と言う。その上、オンライン上には楽しそうなトランスジェンダーたちのSNSがそこら中に存在する。そんな環境で、「もしそうではなかった」場合のこと、性転換・トランジションは取り返しのつかない行為だと想像する方が難しいだろう。
子供の場合は怪しい掲示板で助言を求めて信じてしまうのはしょうがないかもしれない。彼らはまだ世間を知らず、コミュニケーションが苦手な子供の場合は尚更だ。しかし、私が気になるのは、大人で性別違和を主張する人々が自己判断で結論づける傾向にあることだ。大人であれば、オンライン上に転がっている情報を鵜呑みにしてはいけないと分かるはずだ。風邪の症状をGoogle検索したら癌かもしれないと不安を煽る記事が見つかるように、オンライン上の情報は何でも真実になり得るし、全てが嘘の可能性もある。
普通の人なら、まず家族や医者、カウンセラーに相談しようとするところを、彼らは1人で決めてしまう。そして彼らの独断にノーと言う人が現れたら、その人を非難する。以前書いたジェンダークリニックの記事でも言及したが、望むものが手に入らなければすべてが相手の責任と感じる。違った視点を取り入れることができない、他人の意見を聞くことができないのは社会性が育っていないと言えるのではないだろうか。
私の元夫も社交性が壊滅的だった。思春期に非行に走るなど反社会的な行動は一切なかったが、誰に対しても本音を隠していた。母親によると幼い頃から徹底してそうだったらしい。言いたいことがあっても言わないし、腹が立つことがあっても我慢していた。しかし、妙なこだわりだけはあって、決まった服しか着なかったり、ずっと同じ食べ物を好んで食べていた。男性時代はジーンズにグレーか黒のTシャツに黒のパーカーを着て、冬はその上に革ジャン。食事は冷凍ピザかパイ、辛いインスタントヌードルにマッシュルームとブロッコリー、空豆を入れたものしか食べているところを見たことがない。「気分を変える」ということを知らないようだった。私は彼に同じものばっかでよく飽きないね、とは言っていたが、彼ののらりくらりとした性格的に変化を必要としない人なのかとも思って大して気にしていなかった。だが、よく考えてみると、服装はこれ、食べ物といえばこれしかないというこだわりがある人は、一種の決まり事を自分の中で作りやすいのだと思う。
それもそのはず、彼はルールに堅実で、ズルをする人間を許さなかった。一緒にスーパーに行ったとき、私はバッグを持っていなかったので、野菜を入れる用の無料のナイロン袋に商品を入れて店を出た。すると、彼は「袋のお金払っていないよね」と言う。ろくに食材すら買い物したことがない人にとって、ペラペラの小さいナイロン袋も有料に見えるらしい。私がこれはレジ袋じゃないと言っても彼は信じなかった。人には言わないが自分がいつも正しいと思っているんだな、と呆れた。
こんなこともあった。彼が祝日にオフライセンスの店に行ったら、その店のグーグルマップに書かれている営業時間が間違っていて、もう閉まっていたという。オフライセンスの店はこちらのコンビニのようなもので、年中無休で朝早くから夜遅くまで開いている。大体は移民が経営しているので、クリスマスなどの祝日も開いている。もちろん個人経営なので適当なところが多い。それなのに「営業時間が間違っていたから明日文句を言ってくる」と言う。実際に彼は次の日に同じ店に行った。いつもは人に文句など言えない腰抜け野郎なのに、彼の中ではグーグルマップ=絶対的に正しいはずで許せなかったらしい。
元夫のそういう妙なこだわりであったり、自分なりのルールが「男であるにはこうじゃなければいけない」という縛りを生み出していたのではないかと思う。もちろん、女性という性別は負け犬男性の駆け込み寺ではないので同情は一切しない。ただ、その人の生まれ持った性格や家庭環境によって、誰にでもそう考えるようになる可能性はあるということだ。
だからこそ家庭以外の学校による性教育は重要であるにもかかわらず、一部のイデオロギーに染まった層は性別はグラデーションだとか、性別は自分で決めるものなどと真っ赤な嘘を教えたがっている。もしも社会性の発達にハンディキャップをもった子供がこの思想に触れたら、結末は言うまでもない。
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