「今日は胸の日」「限界まで追い込む!」があなたに本当に必要なのか?
はじめに
ボディメイク系のインフルエンサーやパーソナルトレーナーは相変わらず「分割法」を指導したり実践している方が多いようです。
それも「今日は胸の日」「背中の日」「肩の日」「脚の日」という風に4分割以上にすることが多いようですが・・・
さらに彼らが好きなのは「追い込む!」という表現。
「追い込む」ことは彼らのアイデンティティーのようです。
それこそまさに「筋トレガチ勢」が今までやってきた方法。
ただ近年のリサーチでは細かい部位別の分割法より、1度のトレーニングで全身のトレーニングを行う「全身法」や全身を大きく分ける「2分割法」の方が筋力向上にも筋肥大にも効果が高いと言われています。
そしてまさかの「追い込む」ことが必要ないのかも・・・
その鍵となるのは「トレーニング ボリューム」です。
今日のnoteでは「トレーニングボリューム」の考え方を通して筋トレメニューについて考えてみたいと思います。
トレーニング ボリュームとは
トレーニングボリュームとは、筋トレや運動を行う際の「全体の量」を指します。具体的には、以下の3つの要素を掛け合わせたものです。
セット数:一つのエクササイズを何セット行うか。
レップ数:一つのセット内で何回繰り返すか。
重量:扱うウェイトの重さ。
例えば、ダンベルカールを10kgのダンベルで3セット、それぞれ10回行うとします。
この場合のトレーニングボリュームは、次のように計算されます。
トレーニングボリューム=10kg × 10回 × 3セット= 300kg
トレーニングボリュームは、筋肉の成長や体力の向上に大きく関わっています。
基本的に、ボリュームが多いほど筋肉にかかる負荷が増し、筋力や筋量が向上しやすくなります。
「追い込むこと」は本当に重要なのか?
さらに「追い込む」ことが必要かどうかもこの「トレーニングボリューム」と関連付けて考える必要があります。
トレーニングボリュームは、筋力トレーニングにおいて非常に重要な要素です。
単に毎セットごとに限界まで追い込むよりも、週ごとのトレーニングボリュームを計画的に増やす方が効果的である理由を、以下のように論理的・段階的に説明します。
1. 筋力と筋量の成長のメカニズム
筋肉は、適切な負荷を受けることでダメージを受け、回復とともに強くなる「過負荷の原則」「超回復の原則」に基づいて成長します。
もちろん古い概念である「筋繊維をトレーニングで傷つけて、それを回復させる」というのは誤解を生む考え方ではありますが・・・
この負荷の総量がトレーニングボリュームであり、これが筋力と筋量の成長に直結しています。
2. トレーニングボリュームの重要性
トレーニングボリュームが高いほど、筋肉が受ける刺激が大きくなり、それに応じて筋肉の成長も促進されます。
例えば、週に10セット行うよりも、週に20セット行う方が筋肉にかかる負荷が大きく、成長の機会が増えることになります。
3. 毎セットごとに限界まで追い込むリスク
毎セットごとに限界まで追い込むと、以下のようなリスクが伴います。
過度の疲労:体が過度の疲労状態になり、回復が追いつかなくなる。
怪我のリスク:フォームが崩れたり、筋肉や関節に過度の負荷がかかり、怪我をしやすくなる。
持続可能性の低下:精神的・肉体的に疲弊し、継続的なトレーニングが難しくなる。
4. 週ごとのトレーニングボリュームの増加の効果
週ごとのトレーニングボリュームを計画的に増やすことで、以下のような効果が期待できます。
安定した成長:計画的に負荷を増やすことで、筋肉が適応しながら成長していく。
回復の最適化:適切な休息を取り入れながらトレーニングを行うことで、回復が促進され、次のトレーニングでより高いパフォーマンスが発揮できる。
怪我のリスクの低減:無理なく負荷を増やすことで、怪我のリスクを低減できる。
5. 実践的なアプローチ
トレーニングプランを組む際には、以下のように段階的にボリュームを増やすことが推奨されます。
初期段階:自分の体力レベルに応じた適切なボリュームで開始する。
進行段階:数週間ごとにセット数やレップ数を少しずつ増やし、トレーニングボリュームを段階的に上げていく。
評価と調整:定期的に自身の進捗を評価し、必要に応じてボリュームを調整する。
筋力トレーニングにおいては、毎セットごとに限界まで追い込むよりも、週ごとのトレーニングボリュームを計画的に増やす方が、筋力と筋量の効果的な成長につながります。
これにより、安定した成長、回復の最適化、怪我のリスクの低減といったメリットを享受しながら、持続的にトレーニングを続けることが可能となります。
一般の方に「分割法」が現実的でない理由
一般の人が健康やダイエットのために筋力トレーニングを行う際、全身を4分割するような「分割法」のトレーニングは現実的ではない理由を、以下のように論理的・段階的に説明します。
1. 分割法の概要
分割法とは、体の各部分を異なる日に分けてトレーニングする方法です。例えば、月曜日は胸、火曜日は背中、水曜日は脚、木曜日は肩と腕という具合に分けて行います。筋トレ愛好者やアスリートにとっては、この方法は効果的な筋肉の成長を促進します。
2. 一般人のライフスタイルとトレーニング頻度
一般の人は、仕事や家庭の都合でトレーニングの頻度が週に2〜3回程度に限られることが多いです。この頻度では、分割法を効果的に実施するのが難しくなります。
3. 分割法の非現実性
3.1 効率の低下
分割法を採用すると、特定の筋肉群に対するトレーニング頻度が低くなります。
週に2〜3回しかトレーニングできない場合、各筋肉群を十分に刺激するための時間が足りなくなります。
例えば、胸のトレーニングを行った後、次に胸をトレーニングするまでに1週間以上空いてしまうこともあります。
これでは、筋肉の成長や維持に必要な頻度を確保できません。
3.2 筋肉の維持と成長のための刺激不足
筋肉は定期的な刺激がなければ、成長しにくく、維持も困難です。
分割法では、1つの筋肉群をトレーニングする頻度が少なくなるため、筋肉に対する刺激が不十分になります。
結果として、筋肉の成長や維持が妨げられる可能性があります。
4. 全身トレーニングの利点
一般の人には、全身をまんべんなく鍛える「全身トレーニング」がおすすめです。以下にその利点を挙げます。
4.1 効率的な時間の活用
全身トレーニングでは、1回のトレーニングセッションで全ての主要な筋肉群を刺激できます。
週に2〜3回のトレーニングでも、全身をまんべんなく鍛えることができます。
4.2 筋肉の頻度と回復のバランス
全身トレーニングは、各筋肉群に対するトレーニング頻度が高くなります。
これにより、筋肉が定期的に刺激を受け、成長や維持に適した環境が整います。
また、週に2回で連続した日に設定しないなら、適度な回復時間を確保できるため、過度な疲労や怪我のリスクを低減できます。
4.3 ダイエット効果の向上
全身トレーニングは、1回のセッションで多くの筋肉を使うため、消費カロリーが高くなります。これにより、ダイエット効果が向上し、体脂肪の減少にも効果的です。
5. 実践的な全身トレーニングの例
以下は、週に2〜3回の全身トレーニングの一例です。
スクワット
デッドリフト
プルアップ(懸垂)
プッシュアップ(腕立て伏せ)
プランク
これなら自宅で最低限の器具を使ってトレーニングすることができます。
また一つの種目を2〜3セット続け、その間に適度なインターバルを取るセット方にせず、この5種目を連続して行い、それを繰り返すサーキット法なら時間効率性も高く、消費エネルギーも増え、代謝能力の向上にもつながるのでおすすめです。
これによって主要な筋肉群をカバーし、効率的なトレーニングが可能です。
結論
一般の人が健康やダイエットのために筋力トレーニングを行う際には、全身を4分割する分割法よりも、全身トレーニングの方が現実的で効果的です。
全身トレーニングは、限られた時間でも全身の筋肉をまんべんなく鍛え、効率的に健康とフィットネスの目標を達成するための最適な方法です。
もちろん筋トレ系インフルエンサーに憧れてその方法を真似するのもそれが「好き」で、それで続けられるのであればOKだと思います。
大切なのは「トレーニングは一生もの」だということ。
あなたのライフスタイルや価値観に合わせて好きにすれば良いのですが、どんな形であれ、一生続けられる選択をしてほしい。
年齢と経験でやり方が変わるのは当然。
情報に振り回されず、しなやかに変化させながらトレーニングを続けてほしい。
トレーニング歴41年のシニアトレーナーだからこそ、それを最後にお伝えします。