蜜月の刻(とき)
物語を読むのが苦手なわたしが、編集社を希望したのには理由がある。
本は嫌いじゃない。ファッション雑誌やなんかの隙間に、しおりのように掲載されているコラムやエッセイ、体験記などを読むのが好きだ。そして、それらを読み込んでいくうち、それを書いた人物に興味が湧く。その人物を知るためにいちばん手っ取り早い方法は…と考えたとき、編集者になれば出会えるかもしれない、と思ったのだ。
だが、それは、とんだ浅はかな考えだった・・・・。
なんの知識もない素人が、小学校の学級新聞程度の経験値で、使用スキルも持たない新入社員のペーペーちゃんが、おいそれと作家に出会える機会などありはしないのだ。
「え? コラムですか?」
「そう。好きなんだろ?」
「そりゃ好きですけど…」
「これ資料な。あとよろしく」
「わたしが、書くんですか?」
「そう言ったろ。なんだ、5000字じゃ不満か?」
「そういうことじゃなくて、書けませんよ、わたし」
「なんで」
「なんでって…」
「好きだって言ってただろ」
「好きですけど、読むのが好きなんであって…」
「読めるなら書ける! 材料はあるんだから」
「ちょっと、待ってください」
「待てないの。期待してるぞ」
「え~!?」
そう言って編集長に手渡された資料は『初体験はいつですか?』という一行のみ記載された、ペラペラの企画用紙だった。
「え、今さら? 『自由』がテーマの大人の雑誌で?」
やる気あるのか・・・・?
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いつもお読みいただきありがとうございます
とにかく今は、やり遂げることを目標にしています
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