カレー

連載『オスカルな女たち』

《 ココだけの話 》・・・13

「ごめん…。ただオレは」
「だ、か、ら、いやだ、って言ってんじゃん」
 カレーを頬張りながら、顔も見ずに応える真実(まこと)。

「そんな、おまえ…」
「てめーに『おまえ』呼ばわりされたかない」
「美古都(みこと)だって…」
「美古都はちゃんと解ってるよ」
 イライラで、食すペースもいつもの倍だ。

「でも…」
「祐介…! いい加減にしなよ」
 カラン…と、カレースプーンを投げ出し、怒り心頭とばかりに腕組みする。

「もう関わりたくないって言ってるじゃん…」
 極力抑えめに言ってはいるが、その心情は充分に伝わる低い声。

「なに? この茶番。なにしに来た? もうやめなよ、そういうの…。ちゃんと美古都にだって会わせてるし、養育費だってもらってない。あんたの条件は全部飲んだ。そっちになんの迷惑もかけてない。これ以上なに? 会いたくないって言ってるあたしの要望も受け入れてよ。ほっといてよ!」
 これは離婚当初からの懲りないやり取りだった。

「まこと~」
「情けない声出すな…!」
 それで刑事がよく務まるな…と、いつものパターン。
 先日の結婚の話で、やっと次に向かう覚悟ができたのか、やっとこのくだらないやり取りから解放されるのかと、安堵したのもつかの間、結局ぬか喜びだった。

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たゆ・たうひと
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです