連載『オスカルな女たち』
《新しい風》・・・7
「髪、切ったんだな…」
「うん。気分転換…変?」
いい歳の弟を見上げてつかさが不安な顔をして見せた。
「いや。若返った…」
「まだまだいける?」
「いける、いける、」
軽く笑いながら答える継(つぐ)。
「よく言うよっ…」
「じゃ、聞くなよ」
「女はいくつになっても人目が気になるの…」
「そんなもん?」
「そんなもん、そんなもん。みさきちゃんだってそうでしょ」
「どうかな…」
「そうなの…! でも、…髪切るみたいに、簡単に身も軽くなればいいんだけどねー」
だが、現実はそう簡単にはいかない。
髪を切るだけでもどんなに時間を要したことか。
「そっちは、まだまだかかりそう…?」
「相変わらずよ…。でも、離婚届のストックがなくなっちゃって。これからどうしようかなーっと思ってさ。そろそろ、弁護士でも立てた方がいいのかなって」
いい加減、自分のいない間にバスルームを我が物顔で使われることも、その都度大量の洗濯物を放置されていることも、いちいち空き巣のように寝室が散らかり放題にされることにもうんざりしていた。
むしろそれがストレスとなり、最近では洗濯物を扱うのにも違和感を覚え、気が変になりそうなくらいだった。
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とにかく今は、やり遂げることを目標にしています
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