連載『オスカルな女たち』
《 ココだけの話 》・・・10
「あ、じゃぁ、操(みさお)先生…また…」
手を振ろうとして玄関ドアの天井に手をぶつける佑介。
「いて…」
「あ~聞かなくていい」
冗談じゃない…と、憤慨しながら真実(まこと)は駐車場の方へ促した。
「な、なんだよ…」
「なんだよ、じゃない。てか、こっちのセリフ…。職場にまで押しかけて来るってどういうこと? ここはあんたのような野蛮な輩が顔出していいところじゃない」
正面玄関からしたたか離れた位置で立ち止まる。
「こうでもしなきゃ、話ができないだろうが…っ」
「なんの用?」
「なんの用って…」
決まってるじゃないか…と口ごもる。
「とりあえず…ここじゃなんだから」
そう言って道路向かいの喫茶店を顎で指し示す。
「…ここに来るのも久しぶりだなぁ」
席に着いてからもそわそわと落ち着きのない佑介。
「昔話しに来たわけじゃないだろ…」
対し、その吞気さに真実は苛立たしさで落ち着かない。
「なんだよ…」
「あたしお昼これからだから、迷惑料としておごってもらうからね」
ランチには少し時間が遅いが、コーヒーだけじゃ話は収まりそうにない。
水を運んでくる店員にメニューも見ずに真実は、「チキンカレー」とだけ告げた。
「ちぇ…なんだよ、しっかしりてんなぁ…。オレ、アイスコーヒー」
「当然だろ。くだらない話聞いてやるんだから…」
憮然と答える真実の頭の中は、本音はそれどころではなかった。
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