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江戸のとある町はずれに、その姿を見るだけで溜息の出るような見目のいい男が棲んでおりました。その者が町に出る際はいつも腰ぎんちゃくがついておりまして、とはいえそれらは友でも身内でもない「生きた壁」の如く男を囲んでそぞろ歩いており、なんとも異様な光景でもありました。男はそれを由とするわけでも甘んじる様子もなく、彼にとっては腰にぶら下げる印籠か煙草入れの根付けの如く、そこにあるのは主従関係のみでございました。 そんなわけですから、 「あ~また今日も伴をお連れだ…」 「芝居見物にで