マガジンのカバー画像

うたかたの…

93
短編…より短いかな。小話かな 詩…とか、心のささやきとか
運営しているクリエイター

2018年10月の記事一覧

いい女は、滴っているか

子供の頃に見た大人のドラマは 内容こそ覚えちゃいないが刺激的 失恋した女が雨の中ずぶ濡れ な~んてシチュエーションは未だ健在 子供心には衝撃で憧れさえ覚えた 幸せなシーンより悲劇に惹かれ、焦がれ 夢見る少女は雨の中外へ出た でもどしゃぶりの中ずぶ濡れって そうそう簡単にはいかない 撮影のあのどしゃぶりホースじゃないからね 長時間そとにいるのもなんだと、雨どいの下に・・・ 手っ取り早く濡れる計画のはずが 何故か真っ黒のゴミだらけに 雨どいって基本外だし野ざらしよね

新しい漢字

「お母さん、ぼく、今日コワイ漢字習ったよ」  ボクちゃんは小学4年生。まだまだ知らない漢字がたくさんです。 「なに? 『死』とか?」  「違う。『コロス』って漢字だよ。コワイよね」  「そうなの?」  「こんな言葉があるから、殺しちゃったりするんじゃないの?」  新しい漢字を覚えるたびにいろいろと考えることも増えるね、ボクちゃん。 ・・・・な~んてやりとり。 ときどき、こんなちょっとしたことにうるうるするお母さんなのでした。

やさしいたまご

ボクちゃんは、小学4年生。 なんでも4年生は、学校で飼っている鶏小屋の掃除を当番でするそうな。 「たまごがあったらもって帰って来ていいんだよ」 「えー食べたい」 鶏の大きさがどの程度かは知らないが、新鮮卵はありがたい。 「でしょー・・・でもね、今日は3つしかなかったの。  もうひとつあったらみんなもってこれたんだけど・・・」 なんでも、当番は5人一組で班編成されてるらしい。 今日はひとりお休みで、4人だったのだそうだ。 でも、たまごは3つしかなかったので、

夫婦の実感

「あたしたちって、夫婦なのよね?」 パソコンの画面に夢中の彼の顔を覗き込こむ。 彼はきょとんとして、彼女を見返し、 「なに言ってんの?」とすぐにパソコンに目を落とした。 彼女は目線をそのままに、 「実感あるの?」と更に問いかける。 彼はパソコンの手を止め、 「あるよ」と彼女に目を移す。 「ふーん。どんな?」 いまさらながらな質問を投げかけておきながら、 バツが悪そうに視線をそらす彼女。 ダイニングチェアにもたれ、天井を仰ぐ。 「たとえば、こうして帰っ

個性を持った個人 生まれた時からひとりの人間 いつまでも自分の分身ではない 始めからわたしの分身ではない わたしという「疵」をつけたい わたしのものだという烙印 それはエゴ ただ、ただ愛しいと思うだけ ごめんね、いつも傷つけて ちょっと人より独占欲が強いみたい 本音は傷つけたいわけじゃない 抱き寄せて、温めて、感じて、 独りよがりの押し付けかもしれない ただただ、愛しているだけ わかってる、でももどかしい あなたの愛も受け取っている 足りないわけじゃない、足り