「具体」↔︎「抽象」のレイヤー

「もっと抽象的に考えろ」

「もう少し具体的に説明してほしい」

こういった会話はよく見かける。
特に上司や部下の関係においてやり取りされやすいかもしれない。

しかし、いくら「抽象的に考えろ」と言われても、その指示自体が抽象的であるため、具体的にどうしたらいいのか分かりにくい。

そこで、少しでも皆様のご理解を促進したいと思い、具体と抽象の間にあるレイヤーについて説明していく。

これを理解しておくことで、両者間を行き来するのが幾分か楽になるはずだ。

そのレイヤーとは下の通り。

数字・記号・固有名詞

事象・出来事

情報・知識・学問

人間(生物)の営み

組織・社会

国家

地球環境

自然法則

宇宙もしくは万物における法則

さらに高次なもの


ざっくりとではあるが、人間(私)の認識できる限りでは、「具体」と「抽象」はこのようなレイヤーの範囲内に収まっている。

下に進むにつれ、より抽象的な概念に近付いていく。


その中で最も具体的なものは固有名詞(および数字や記号)。

固有名詞とは事象をこれ以上ないほど細かく分割したものである。

「桃太郎」と聞いたときに、一般的な日本人がイメージする人物はおそらく1人しかいない。

「桃太郎は犬・猿・雉の3匹の家来を連れて、鬼ヶ島に鬼退治に向かった」

固有名詞を多用した文章。

これはかなり具体的な説明と言えるだろう。


反対に最も抽象的なものは、誰も知らない。

というより、私たち人間には到底理解できない。

「これこそが最も抽象的なもの」と仮定しても、その上にはさらに高次なものが存在しているかもしれないからだ。

おそらく人間にとっての最上位の抽象概念は、真理と呼ばれるものだと思われる。


以上のように、「具体」と「抽象」はこのようなレイヤーに限定されている。


ちなみに上司はなにも部下に対して嫌がらせをしたいわけではなく、「もっと仕事の本質的な意味を考えろ」、つまり、「自己流じゃなくて組織の方針や活動に沿うように仕事を進めろ」と指摘しているに過ぎない。

しかし一方で、上司の側も部下の目線に合わせる努力をしておらず、怠慢と言えば怠慢である。部下は経験不足からその本質の部分が見えないからだ。


このような上司と部下のギクシャクした関係から、もう1つ面白いことが分かる。

それはどのレイヤーを捉えるかによってその人間の世界観も変わるということ。

要するに天才数学者と覚者の見ている世界はまるで異なるということである。
いや、逆にそこまで行くともはや同じかもしれない。

いずれにせよ、どのレイヤーに焦点を合わせるかによって見える景色も変わってしまう。

相互コミュニケーションにおける齟齬の原因の1つには、このレイヤーの違いが間違いなく影響しているように思われる。


ちなみに私は抽象世界の住人なので、具体側の言ってることは全然頭に入らない。数字ばかり言われると、「結局何が言いたいんだ?」となる。

逆に具体世界の住人にはきっと「フワフワしていて具体性を欠くやつ」と思われているはず。

しかし、基本的にどちらが良い悪いなど存在せず、どちらも行き来できた方が単純に頭が良さそうに見えるので、両方訓練しておくのが無難だと思う。


というわけで、今回の内容が皆様の一助となれば幸いである。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?