街猫街犬パラダイス、トルコ 6
エフェス、謎が解けた?
いよいよエフェス遺跡だ。ヨシオはセルチュクのホテルの車で遺跡南チケット売り場まで送ってもらった。南北にチケット売り場があるが、南からなら広い遺跡を下り坂で見て歩けるうえ、出口となる北の売り場からはセルチュク行きのミニバスが出ていて、安く帰れる。
「地球の歩き方 イスタンブールとトルコの大地2019~20」にエフェス遺跡の入場料は60リラと書いてある。2023年10月は700リラ(約4000円)と10倍以上に跳ね上がっていた。
世界的な観光地だけに朝からものすごい人出。ヨシオは修学旅行のお伊勢回りを思い出して苦笑した。
遺跡近くには聖母マリアの家などもあり、キリスト教徒なら一生に一度は訪れたいのがエフェス遺跡一帯とされている。伊勢神宮も日本人にとっての聖地なのだ。
10月というのに太陽を遮るものがない遺跡は、ヨシオにはやはり厳しい。遺跡は広く丁寧に見て回ったらたっぷり1日はかかるだろう。
そんなところにレモンジュース売り場があって、ヨシオが店員の言う通り120リラを払おうとすると、横にいたおばさんが店員を叱るような口調でたしなめ100リラ(約550円)になった。
別の街でのことだがレストランでワインを注文、ヨシオが「高い」と言うと、おやじは100リラ負けてくれたことも。観光客価格と地元向けが違う店もあるようだ。
ヨシオは何度もベンチや石造建造物の破片に腰を降ろし、隣の旅行者に何気なく「どこからですか?」と聞いてみた。スペイン、バングラデシュ、アゼルバイジャン、聞く度に国籍が違った。もちろん日本語や中国語の団体も。
ヨシオは遺跡の目玉とされるケルスス図書館という巨大な石造建築を目の前にして、「これだったのか」と一つの謎を解くことができた。
「地球の歩き方」中表紙の写真、つまり本編の扉写真はケルスス図書館中央の女性像だったのだ。このガイドブックの扉写真にはなぜか説明がない。トップに掲載されているのに、どこにある何の写真なのか分からないのだ。
しかし、写真はそれぞれの国の注目スポットなり、編集者が想定するぜひ行ってほしいところであることは明らかだ。ということで、ヨシオはエフェス遺跡で扉写真の本物に出会ったのだった。
ちなみに「歩き方」は表紙のイラストにも説明はない。
エフェス遺跡には茶色の犬がよく似合う。