「ミャンマーの地理・文化および観光の最新事情」というテーマで講演しました【後編:観光の最新事情・旅行の具体的なノウハウ】
2019年06月07日に成蹊大学でミャンマーをテーマに講演を行いました。
本noteは以下の前編の続きとして、講演の後半で学生向けにお話ししたことを記していきます。
具体的には、ミャンマーの観光における最新事情と個人での旅行方法を解説していきます。
実際に、過去3年間に渡って個人でミャンマーに3回渡航し、現地の観光政策について大学の卒業論文も書いた僕の知識と経験もとに執筆しております。
▼大学で執筆した卒論についてまとめた有料noteはこちら
ミャンマーを旅行される予定の方は、このnoteを読むことで現地の状況や旅行の具体的なノウハウが事前に分かるかと思うので、旅行前の参考にしてもらえると嬉しいです。
当初は有料で公開予定でしたが、もっと多くの人にミャンマーを知って欲しかったので無料に変更しました。
「地球の歩き方」や「るるぶ」等に出てこない情報をかなり多く提供している僕の完全オリジナル・コンテンツになりますので、ぜひご一読いただければ幸いです。
ミャンマーの観光政策の現状
早速ですが、ミャンマーの観光政策の現状について解説していきます。
訪日外国人を増やそうと奮闘している現在の日本ですが、これはミャンマーも同じです。
ミャンマー政府は現在、自国の経済発展と外貨獲得のための政策の1つとして、自国の観光立国化を図っています。
具体的には、2020年までに750万人の外国人観光客訪問を1つの目標としており、そのための観光開発政策を実施しています。
ちなみに、2018年にミャンマーを訪れた外国人観光客数は355万人で、この目標については達成はかなり難しい状況となっています(後述)。
現在のミャンマー政府が行っている観光政策は主に以下の3つです。
ミャンマーの観光政策の内容① 対外PR活動
ミャンマーではホテル観光省(Ministry of Hotels and Tourism) が特に率先して対外プロモーション活動を実施しています。
▼対外PR活動の例
・ホテル観光省Webサイトの新規開設
・YouTubeやInstagramによる観光情報の提供
・芸能人やインフルエンサーを活用した発信活動
・ツーリズムEXPOなどへの出展
▼ホテル観光省の新規Webサイト(旧サイトと比べ格段に見やすくなりました)
英語による活動が中心で、ITを活用したデジタルマーケティングを積極的に行っているのが特徴です。
日本では森崎ウィンさん(日本育ちのミャンマー人俳優)を観光大使に任命するなどして積極的なプロモーションを行っています。
ミャンマーの観光政策の内容② インフラ整備
「観光客の呼び込みにインフラ整備は欠かせない」という政府側の認識があります。
これに関しては、先に観光地化が進められている他の東南アジア諸国(タイなど)に追従する形で、できるところから投資を行っています。
そして、インフラ整備事業の一部を日本のJICA(国際協力機構)も支援していて、将来的にはヤンゴン・マンダレー間の鉄道の高速化が行われる予定です。
ここ2〜3年の傾向としては、宿泊施設や交通関係の整備がある程度進んだ印象です。
例えば、
・ドミトリータイプの格安宿の増加
・ヤンゴン国際空港ターミナルビルの整備
・デコボコの道路が整備されたことによる高速バス所要時間の短縮
などがここ最近で実現しています。
ミャンマーの観光政策の内容③ ビザ緩和
観光客を呼び込むために、ビザ緩和政策を取っています。
日本人・韓国人は現在観光ビザの免除措置が実現していて、2019年9月末まではミャンマーへの完全ビザ無し渡航が可能です(2020年9月末までさらに延長がほぼ確実です)。
▼詳しくはこちらのブログ記事もどうぞ
他の国に対しては、オンラインビザ取得サービス(E-Visa)やアライバルビザの導入などを積極的に行っています。
観光ビザに関しては、現状観光客がまだまだ少ない状態なので今後も規制緩和の流れが続くと予想しています。
ミャンマーを訪れる外国人観光客が少ない理由
ミャンマー政府は積極的な観光政策を実施していますが、肝心の外国人観光客はまだまだ少ない状態が続いています。
2018年の外国人観光客訪問数は355万人足らずで、政府が目標としている2020年までに750万人の来訪を実現するのは絶望的な状況ですね。
隣国のタイでは年間3,000万人以上の外国人観光客が訪れているので、その差は約10分の1と歴然です。
ミャンマーの外国人観光客が増加に転じない理由は、僕が思うに以下の3つが挙げられます。
・ロヒンギャ問題などにより治安が悪いイメージがある
・発展途上国である
・観光地としての魅力がまだまだ知られていない
上記の3つについて、僕の実体験をもとにした考えを述べていきます。
ミャンマーは本当に治安が悪いのか?
ミャンマーの治安については非常によく聞かれる質問で、ブログ経由でお問い合わせをいただくこともあります。
背景としては、2017年8月にラカイン州西部で生じたロヒンギャ問題があるのだと考えています。
▼ロヒンギャ問題について詳しくはこちらの動画をどうぞ
ロヒンギャ問題に限らず、ミャンマーでは以前からシャン州やカチン州などの国境地帯で民族問題を抱えており、過去には軍事衝突も起きています。
そういったこともあり、ミャンマー=治安が悪いというイメージができているのかもしれません。
しかし、ミャンマーは国境地帯を除けば情勢は安定しており、観光地であれば安全に旅行することが現状は可能です。
また、殺人事件といった凶悪犯罪はおろか、窃盗などの軽犯罪も滅多にありません(最近では徐々に都市部で犯罪率が高まっているというデータもありますが...)。
外務省の海外安全情報では全域でレベル1(十分注意)ですが、体感的には東南アジアの中でも治安の良い国だと僕は考えています。
その理由は、
・敬虔な仏教徒が多く、日頃から功徳を積む暮らしをしていること
・経済発展の途上で、貧富の格差がまだまだ小さいこと
が挙げられます。
加えて、ミャンマーでは国境地帯を中心に外国人の立ち入りを制限するエリアを設けており、これによって旅行者が情勢の不安定な地域へ足を運ぶことが物理的にできない状態となっています。
なので、ミャンマーの治安については、あくまでも旅行で訪れるのであれば現状は過度な心配をする必要はありません。
とは言え、最低限の対策は必要なので、基本的な安全対策は行いましょう。
▼詳しくはこちらのブログ記事でも詳しく解説しています
ミャンマーで治安よりも注意するべきこと
ミャンマーで治安よりも注意するべきなのが、以下の3つです。
・仏教の冒涜に繋がる行為
・政府や軍に関する施設の撮影
・交通事故
仏教の冒涜に繋がる行為は、外国人観光客が逮捕されて実刑判決を受ける事態も生じています。
最もミャンマー人が嫌うことの1つが、仏教施設内を土足で歩いたり露出度の高い服装で立ち入ることです。
必ず、パゴダや寺院の敷地内(外を含む)では、土足・肩や膝上を出さない服装をしなければなりません。
また、首都のネーピードーで政府の許可を得ずに国会議事堂を撮影していたフランス人観光客も逮捕され、懲役1ヶ月の実刑判決を受けました。
政府や軍に関係する建物や、空港の撮影も基本的に撮影禁止です。
▼詳しくはこちらのブログ記事もどうぞ
ミャンマーでは交通事故も多く、街中を歩く際は注意が必要です。
歩行者優先は徹底されていませんので。
交通量の多い交差点を渡る際は現地人の後をついていくのが最も効果的ですね。
近年はホテル数が増え、交通インフラも改善傾向
ミャンマーは発展途上国という認識があり、実際にその通りです。
インフラもまだまだ未発達なところが多く、観光客を集めるにはまだまだ不十分な環境と言えるでしょう。
しかし、近年はホテル数が大幅に増加しており、5つ星ホテルからバックパッカー向けの格安宿までたくさんの候補ができています。
そして、交通インフラもバスやタクシーに関しては徐々にですが改善されてきています。
ヤンゴンを走る路線バスはYBSというサービスが導入され、外国人でも比較的利用しやすくなりました。
同じように、ヤンゴンの空港から市内のダウンタウンまでを結ぶエアポート・バス(YBSの1路線という扱い)も誕生しています。
また、ヤンゴンではタクシー配車サービスのGrabが導入されています。
ミャンマーのタクシーはメーターがなく事前交渉制で使いづらかったですが、事前に値段が確定するGrabの導入によって大幅に利便性が高まりました。
希望的観測ですが、今後はヤンゴン以外の都市や観光地でも同じように便利になっていくと思います。
「ミャンマーは途上国だから観光に適していない」という状況でもなくなってきていますね。
ミャンマーの観光地としての魅力とは?
日本ではまだあまり観光地としての魅力が知られていないミャンマーです。
これについては、僕はある程度の使命感を持ってブログやTwitterでの発信をしているところでもあります(笑)
それはさておき、僕が思うミャンマーの観光地としての魅力は以下の2つがあるのでご紹介します。
① 他の東南アジア諸国ともまた違う独特な光景
(例)
・そびえる無数の仏塔
・黄金に光輝く神聖なパゴダ
・イギリス領時代のコロニアル建築
・チャイナタウンの活気
・インドっぽさも感じられる雰囲気
僕は50ヵ国程度の国を巡りましたが、その中でもミャンマーの独特さはピカイチです。
独特な世界観を見たい人にはおすすめの国と言えるでしょう。
東南アジアに属しますが、インドの文化も強く受けています。
② 様々なアクティビティー&ツアー
(例)
・ヤンゴンの街歩き
・バガンの遺跡巡り
・カローのトレッキング
・インレー湖のボートツアー
・ガパリやメルギー諸島でのウォーターアクティビティー
・パアンの洞窟寺院巡り
あまり知られていませんが、ミャンマーでは外国人向けのアクティビティーやツアーも充実しています。
冒険心溢れる旅行がしたい人にはとてもおすすめできる国です。
こうしたアクティビティーは、基本的に滞在先のホテルやゲストハウスで申し込みが可能です。
日本語ガイドをつけたい場合は、VELTRAなどの現地オプショナルツアー予約サイトから申し込んで参加することができます(一部ツアーのみ)。
ミャンマーへ行くなら今が超お得
ミャンマーへ行くなら今がベストです。
その理由は以下になります。
① ホテル代が激安
5つ星ホテルは1泊8,000円~、ゲストハウスは朝食付きで1泊400円~から予約可能です(ヤンゴンの場合)。ホテル数が増えたものの観光客が増えていないので閑古鳥状態です。
② 観光地化されていない光景が未だに残る
2011年にようやく民主化を果たし、経済発展の途上です。外国からの観光客も少なく、現地ならではの光景が未だに多く残っています。
③ 現地人が外国人観光客にめっぽう優しい
僕の知り合いはミャンマーの1番の良さは「人」とみんな口を揃えます。観光客だからと適当にあしらったり、ぼったくりの対象として見るだけの人はほぼいません。外国人=お客様としっかりみていて、みなさん歓迎してくれます。
ミャンマーへの航空券の探し方
ここからはミャンマーへ実際に赴く際に役立つ情報を提供していきます。
基本的には、個人旅行でミャンマーを旅行する場合のノウハウを共有します。
まず、航空券を探す場合は、航空券の一括検索サイトを利用するのがおすすめです。
英語が理解できる場合はSkyscannerやExpedia、日本語で万が一の際の対応も受けたい場合はSkyticketやサプライスといったサイトを選択しましょう。
どれも料金体系的にはそれほど大差がないので、いろいろと利用してみて自分が使いやすいなと思ったものを利用すれば良いと思います。
日本からミャンマーへの空路は、成田・ヤンゴン路線のみ全日空(ANA)が1日1便運航していて、価格はだいたい往復10万円~です。
経由便はエアアジアなどのLCCの利用した場合だと往復5万円~になります。
タイやマレーシアを経由地に利用するのが一般的ですが、ベトナム・中国経由でも行くことができます。
▼詳しくはこちらのブログ記事もどうぞ
タイからミャンマーへ陸路で行く方法(バックパッカー向け)
バックパッカーが中心ですが、タイからミャンマーへ陸路で入国する人も多いです。
その際はメーソート・ミャワディ間の国境を利用します。
他にもタイとミャンマーの間には国境がありますが、メーソート・ミャワディ間国境以外の場所は制約があるので注意です(2019年6月時点)。
陸路移動にかかる日数は1泊2日、費用はおよそ3,000円となります。
空路(バンコク~ヤンゴン)だと1時間で1万円超なので、この差をどう捉えるかですね。
▼詳しくはこちらのブログ記事もどうぞ
ミャンマー旅行の持ち物
講演ではミャンマー旅行に必要な持ち物についても話しましたが、時間の都合もあってあまり深くは話せませんでした。
以下のブログ記事で詳しく過去に書いていますのでそちらを見ていただければと思います。
▼ミャンマー旅行の持ち物についてまとめたブログ記事
ミャンマーのインターネット事情
ミャンマーのインターネット事情について知っておいて欲しいことは以下です。
・街中に無料WiFiはほぼ通ってない
・レストランやカフェ、ホテルのWiFiは遅いことが多い
・現地のSIMカードは4G回線が使えて便利
結論は、「WiFiはまだまだ当てにならないのでSIMカードを利用しましょう」です。
現地でSIMカードを購入するなら、telenor(テレノル)が最も外国人観光客向きとなります。
また、タイのAISが出している複数カ国対応のSIM2FLY(シムトゥーフライ)もミャンマーで利用することができます。
お使いのスマホがSIMフリー化できていない場合は、日本から海外用モバイルWiFiをレンタルして持って行くと良いですよ。
ちなみに、ミャンマーで最もポピュラーなSNSはFacebookになるので、ミャンマーの友達を作りたい人はFacebookのアカウントを持っておくと良いですよ。
▼詳しくはこちらのブログ記事もどうぞ
ミャンマー旅行でおすすめのアプリ
個人旅行でミャンマーを訪れるなら、アプリの利用は割と必須です。
以下で僕が実際にミャンマーで使用しているものをご紹介します。
① agoda
大手のホテル予約サイトです。
東南アジアに強いと言われていてミャンマーでは掲載数も多く、Booking.comよりも安いことが多いです。
こちらはPC版もあります。
② Maps.me
バックパッカー御用達の地図アプリです。
事前にダウンロードをしておくことで、オフラインでもGPSによる現在位置情報やナビゲーション機能を利用することができます。
③ Trip Advisor
言わずと知れたネット版の旅行情報サイトで、PC版もあります。
「地球の歩き方」、「るるぶ」や英語の「Lonely Planet」といったガイドブックを持っていくのもアリですね。
何かしら1つ用意しておくと良いです。
④ Currency
外貨計算アプリで、非常に使い勝手が良いです。
ミャンマーの現地通貨(チャット)は日本円よりも桁が大きくしばらくは理解しにくいので、瞬時に日本円でいくらになるか計算してもらえるのは大変ありがたいですね。
⑤ Grab
タクシー配車アプリで、東南アジア版のUberです。
料金が事前に決まってボラれる心配も少なくなりますし、クレジットカード払いもできるのでとても便利ですね。
ミャンマーでは今のところヤンゴンでのみ利用可能です。
⑥ VoiceTra
情報通信研究機構(NICT)が音声認識、翻訳、音声合成技術の研究の一環として開発・提供している無料のスマホ用翻訳アプリです。
ミャンマー語(ビルマ語)を含む31言語に現在対応しています。
翻訳精度がとても高いので、Google翻訳よりも使い勝手が良いです。
ミャンマー旅行に必要な英語力
ミャンマー旅行にどれほどの英語力が必要かについては、基本的に旅行英語ができれば問題ありません。
ミャンマー人の英語力は比較的高いほうですが、全員が喋られるわけではないのでご注意を。
基本的に観光業従事者であればペラペラです。
多少の訛りはありますが、早口な人はほとんどいません。
また、日本語学習者も多くたまに日本語が話せる人と出会います。
そういった時は例えお世辞でもちゃんと相手の日本語を褒めてあげるようにしてください。
ミャンマー旅行のモデルコース
講演の最後に、ミャンマー旅行のモデルコースについて軽く解説しました。
① 主要3地域周遊ルート
ヤンゴンを拠点に、バガンとインレー湖を周遊するルートです。
ルート例:ヤンゴン➡︎バガン➡︎インレー湖➡︎ヤンゴン
初めてミャンマーに訪れる人は、このルートで旅行する人が多いですね。
弾丸であれば5日ほどでも可能ですが、できれば余裕を持って7日以上は欲しいところです。
② 主要4地域周遊ルート
上記の3地域にマンダレーを足したものです。
ルート例:ヤンゴン➡︎バガン➡︎マンダレー➡︎インレー湖➡︎ヤンゴン
こちらは10日以上の日数が欲しいところですね。
講演では紹介しませんでしたが、忙しい人向けに以下の3連休で行けるモデルコースも本noteではご紹介しておきます。
③ ヤンゴン3日間
ヤンゴンに滞在しつつ、その周辺の見どころを日帰りで訪れるコースです。
滞在中は、バゴーとチャイティーヨー・パゴダ(ゴールデンロック)といった場所に日帰りで訪れることができます。
④ マンダレー3日間
マンダレーに滞在しつつ、その周辺の見どころを日帰りで訪れるコースです。
滞在中は、アマラプラ・インワ・サガイン・ミングォン・モンユワといった場所に日帰りで訪れることができます(3日だと全部はキツイので取捨選択が必要です)。
ちなみに、ミャンマー旅行のベストシーズンは乾季の12月〜2月となりますので、ご旅行をお考えの人はこの時期に訪れるのが良いかと思います。
年末年始や学生の冬休み・春休み期間中が良いですね。
ただし、雨季の7月や8月は観光客が少なくホテル代が安くなるメリットもありますので一概には言えないところでもあります。
▼ミャンマーのシーズンについてはこちらのブログ記事でも解説しています
まとめ
以上が僕が成蹊大学での講演後半でお話しした内容でした。
基本的には、「ミャンマーに行くなら今がベスト」といったことを僕が最もお伝えするべく、お話をしてきました。
▼ミャンマーに行くなら今がベストな理由
・観光ビザが期間限定で免除
・観光客が現状少なく、ホテル代がお得
・今後は観光地化が進むので、ローカル感を味わいたいなら今
前編と合わせ、2万字近いnoteになってしまいましたが、ここまで読んでいただきとてもありがたく思います。
▼前編はこちら
ブログやTwitterではミャンマーを中心に海外に関する発信を多く行っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
大学などでの講演の依頼も、ぜひともしていただけると大変嬉しいです。
それでは(^^)
ブログ:ぐちをぐろーぶ
Twitter:@guchiwo583