内科医律 vol1
クリスマスイヴの夜🌃
内科医の律(りつ)はレストランでの食事を終えて帰路につく。電車に揺られて向かう先は家ではなく病院だった。緊急の呼び出し?ではなく仕事とは別な用件があったのだ。
裏口から入り誰もいない真っ暗な医局へと続く道はいつ歩いてもやや不気味だが、一番奥の当直室から漏れる灯りだけが微かに光を放っていた。
「今日の当直は誰だったっけな」
と少し考えながらも医局に入り冷蔵庫を開ける。それは病棟へのサプライズクリスマスケーキだった🎂
(南6病棟ナースステーション)
「お疲れ様!落ち着いてますか?」
「あれ?先生どうしたんですか?」
最初に気が付いたのは院内で一番の美人と名高い保園愛美だった。
「せっかくのクリスマスイヴに夜勤もお気の毒様と思いましてねw」
と医局から持ってきたケーキを愛美に手渡すと、普段はクールビューティを地で行く愛美の表情がみるみる崩れていく。
「先生!すごいっ!ありがとうございます✨先生も一緒に食べましょ食べましょ!私コーヒー入れますね!」
そこに夜のラウンドを終えて戻ってきたのはもう一人の夜勤者で愛美の後輩でもある宮野瞳だ。
「宮野さん!先生がこれ買ってきてくれたの🎂」
「えっ!マジですか?
めちゃ嬉しいっす 😆」
瞳は愛美と違い思った事はすぐ口にだすわかりやすいタイプだ。
どちらも所謂美人なのだが誰もが美人と認めるタイプの愛美よりも、やや天然である意味真っ直ぐな瞳の方を律は少しだけ「気になって」はいた。
「さて切り分けましょう!」
休憩室から持ってきたナイフで愛美が手際よくケーキを切り分けて行く。
「あー、でもひと切れ余っちゃいますね?先生二つ行けます?w」
愛美はいたずらっぽい笑みで律をからかう。
「あ、でも今夜の当直の先生もいるからその先生にも食べて貰いましょうか?」
と瞳が提案する。
「今日の先生は初めていらしてる先生みたいですよ、女の先生みたいです」
「そうなんだね!じゃあちょっと当直室に声かけに行ってきますね」と律はナースステーションを後にした。
「クリスマスイヴに当直する女医さんか、どうな人なんだろう。。。」
律は再び真っ暗な廊下を微かな光を放つ当直室へ向かって歩いて行くのだった。
to be continued
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