24.01.14 コンサート曲目解説 Quintetto per chitarra e archi / Mario Castelnuovo-Tedesco

2024年1月14日 アンサンブル「PantaTonika」第1回演奏会のために、noteで随時プログラムノートを公開していきます。


Quintetto per chitarra e archi, Mario Castelnuovo-Tedesco (1895-1968)

マリオ・カステルヌオヴォ=テデスコは、イタリアの作曲家。作曲をイルデブランド・ピツェッティ (Ildebrando Pizzetti) に学んだ後、前途有望な新進作曲家のひとりとして、早くから注目されるようになる。彼は大変な多作家で、様々な編成の作品を残したが、シェイクスピアを始めとする偉大な文芸作品に着想を得た作品や、世界的ギタリストであるアンドレス・セゴビア (Andrés Segovia) との出会いをきっかけとしたギター作品はとりわけ注目に値すると言える。特にギター作品は今日でも多くの演奏家によって愛奏されており、テデスコは20世紀ギター音楽の作曲家を語るうえで欠かすことのできない存在となっている。

本曲は、彼がギター作品を書くきっかけとなるアンドレス・セゴビアに捧げられた作品であり、元の編成はギターと弦楽四重奏である。「五重奏」とタイトルにある通り、所謂ギターコンチェルトとはならず、各パートがそれぞれ主役として扱われており、高度なアンサンブル技術を要する作品となっている。曲は4つの楽章に分かれており、
Ⅰ. Allegro, vivo e schietto
Ⅱ. Andante mesto
Ⅲ. Scherzo   Allegro con spirito, alla Marcia
Ⅳ. Finale   Allegro con fuoco
のように速度記号がつけられている。

Ⅰ. Allegro, vivo e schietto

Con brio で、大きな跳躍をもつテーマと、甘く半音階的な動きが特徴のテーマがそれぞれ各パートで模倣されていく。対照的な2つのテーマはそれぞれ発展しながら、途中で同時に奏される箇所があり、彼の数学的・建築的な作曲技法が遺憾なく発揮されている。

Ⅱ. Andante mesto

いきなり半音階を用いた不気味なテーマがヴィオラから始まり各パートに受け渡されていく。対旋律の動きも半音階であり、頻繁に転調しながらも美しい色彩の和声が展開されていく。途中に現れるギターの特徴的な動きは、どこかスペインの風が感じられる。 

Ⅲ. Scherzo   Allegro con spirito, alla Marcia

同音の連打と弦楽器のフラジオレット、スパニッシュなギターの動きが特徴的である。1,2楽章で登場する半音階的なフレーズや、大きな跳躍を伴った動きも至る所で現れており、組曲としての統一感が現れている。

Ⅳ. Finale   Allegro con fuoco

冒頭6/8のテーマと、途中の2/4のテーマの2つの対照的なテーマがあり、前者は、跳躍など勢いのある動きが特徴で、後者は順次進行的な動きが特徴である。この2つのテーマは曲の後半、盛り上がりに合わせて同時に奏されるようになり、6/8と2/4を交互に行き来しながら進行していく。また、1楽章の模倣の要素、2楽章で用いられた装飾的なフレーズ、3楽章に登場する同音の連打や、スケルツォ的なフレーズ、 (2,3楽章に登場するスペインの要素を思い出すように、) タランテラを思わせる冒頭のテーマなど、まるで今までを回想するかのように1-3楽章の要素が現れることで、全体の統一感と最終楽章としての盛り上がりを巧みに表現している。

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