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世界情勢ブリーフィング 総集編第2号 習近平の帝国

2018年8月24日

The Gucci Postで好評配信中のメルマガ「世界情勢ブリーフィング」の総集編第2号です。
テーマは「習近平の帝国」です。
今回は中国を中心に、朝鮮半島、東南アジア、南アジアを含むアジア情勢をテーマにしました。

メルマガがスタートした2017年8月1日から2018年7月31日までの1年間の記事のうち、アジアをテーマにしたもので、今読んでも示唆に富む重要記事約120本を選び出し、それを一つに統合した上で、あらためて目を通し、加筆修正しました。300ページに及ぶ大作になりました。

これを読めば、今アジアで何が起こっているか、最新の状況を把握し、さらに今後の展望について指針を得ることができるでしょう。

それにしても、こうして振り返ると、わずか1年の間に状況が激変していて驚きます。状況の変化に応じて私の分析や見通しも修正されています。「最初に言っていたことと違うのでは?」というツッコミもあるかと思いますが、それは当然のことです。現実には予期せぬイベントが発生し、そのたびに環境は変化するからです。

重要なのは、考え方の枠組みと正確な情報のアップデートです。世界情勢はどのような構造になっていて、何が現実を動かす要因になっているのか。これが理解され、その時点で十分な情報が得られていれば、その時点で見通しを立てることができます。

その後、予想されたイベントが実際に発生すれば、判断枠組みは維持したまま、具体的状況に当てはめれば、おのずと新しい見通しが導かれます。

優れた判断枠組みと情報があれば、不測の事態が起こることは最小限にとどめることができますが、どうしても予想できなかったイベントが発生することはあります。そのときには、判断枠組みを修正します。

こうした判断枠組みの構築と修正を繰り返すことで、今の時点でベストの見通しを立てることができます。そもそも判断枠組みがなければ、何がサプライズで、それがどれほどのインパクトがあるのかもとらえることができません。「予測」は、結果以上にプロセスが大事なのです。

こうした意識をもって読んでもらえれば、読者の皆さんの知的体力も鍛えられます。自分自身で様々な判断と情報収集を行うことができるでしょう。そうすれば議論もできます。

こうした基本的な形については、最初から最後までブレがないことが読んでいただければ分かると思います。

総集編は、主に最近このメルマガを読み始めた方を対象としていますが、大幅に書き直しており、構成も工夫していますので、最初から購読している方にも楽しんでいただけると思います。

【目次】
1.中国
(1)習近平の帝国
・「王岐山とバノンの秘密会談」(17/9/29)
・「ロス商務長官の訪中」(17/10/2)
・「中国共産党大会と習近平体制2期目の展望」(17/10/20)
・「習近平体制2期目(1):『皇帝』の誕生」(17/10/31)
・「習近平体制2期目(2):新たなる『中華』世界の構築」(17/11/1)
・「李克強が留任した理由」(17/11/3)
・「『皇帝』の道を突き進む習近平」(18/3/9)
・「全人代の閉幕」(18/3/26)

(2)トランプ政権との「貿易戦争」
・「トランプ政権の新たなる混沌と貿易戦争(1)」(18/3/2)
・「トランプ政権の新たなる混沌と貿易戦争(2)」(18/3/7)
・「鉄鋼・アルミの追加関税」(18/3/12)
・「通商法301条(中国の知的財産権侵害に対する制裁)」(18/3/26)
・「通商拡大法232条(鉄鋼・アルミの追加関税)」(18/3/26)
・「米中の『貿易戦争』」(18/4/9)
・「ボアオ・アジアフォーラムと米中の『貿易戦争』」(18/4/16)
・「ZTEの制裁と華為の捜査」(18/4/30)
・「米中通商協議」(18/5/7)
・「第2回米中通商協議」(18/5/23)
・「ZTE制裁問題」(18/5/28)
・「中国への制裁発動宣言と第3回米中通商協議」(18/6/4)
・「第3回米中通商協議とZTE制裁解除」(18/6/11)
・「米中の『貿易戦争』」(18/6/18)
・「ZTE制裁解除」(18/6/18)
・「トランプ政権の『貿易戦争』の拡大」(18/6/25)
・「トランプ政権の『貿易戦争』とハーレーの生産の米国外への移転」(18/7/2)
・「米中の『貿易戦争』の始まり」(18/7/9)
・「米中の『貿易戦争』の激化?」(18/7/18)
・「習近平体制の動揺と『貿易戦争』の行方」(18/7/25)
・「『貿易戦争』の長期化」(18/7/30)
・「習近平の中東・アフリカ訪問とBRICS首脳会議」(18/7/30)

(3)中国のアジア外交
・「トランプのアジア歴訪」(17/11/13)
・「米中のアジア外交」(17/11/20)
・「中国のインフラ外交(1)」(17/11/29)
・「中国のインフラ外交(2)」(17/11/30)
・「日中経済対話」(18/4/23)
・「日中韓首脳会談」(18/5/7)
・「日中韓首脳会談」(18/5/14)
・「上海協力機構(SCO)首脳会議」(18/6/27)

(4)台湾
・「米国在台協会・台北事務所の落成式」(18/6/18)

(5)中国の政治経済
・「中国政治の読み解き方」(17/12/22)
・「香港」(18/7/4)
・「深セン」(18/7/6)

2.朝鮮半島
・「トランプ政権の北朝鮮外交」(17/8/15)
・「北朝鮮の弾道ミサイルの日本上空通過と日本政府の対応」(17/8/30)
・「北朝鮮の核実験(「ICBM搭載用水爆」の開発)(1)」(17/9/5)
・「北朝鮮の核実験(「ICBM搭載用水爆」の開発)(2)」(17/9/6)
・「北朝鮮の核・ミサイル問題の補足」(17/9/8)
・「北朝鮮と中国、ロシア」(17/9/13)
・「トランプのアジア歴訪と北朝鮮」(17/11/2)
・「北朝鮮」(17/12/4)
・「北朝鮮」(18/1/8)
・「南北対話」(18/1/15)
・「平昌五輪と北朝鮮」(18/2/8)
・「北朝鮮の軍事パレードと平昌五輪参加」(18/2/12)
・「北朝鮮」(18/2/19)
・「北朝鮮」(18/2/26)
・「米朝首脳会談」(18/3/12)
・「金正恩の電撃訪中」(18/4/2)
・「金正恩の訪中(補足)」(18/4/9)
・「北朝鮮の核実験とICBM発射中止宣言」(18/4/23)
・「南北首脳会談」(18/5/2)
・「米朝首脳会談」(18/5/7)
・「金正恩の再訪中、ポンペオ国務長官の再訪朝、米朝首脳会談の決定」(18/5/18)
・「米朝首脳会談」(18/5/21)
・「米朝首脳会談の混沌」(18/5/29)
・「米朝首脳会談」(18/6/4)
・「米朝首脳会談」(18/6/15)
・「米朝首脳会談(補足)」(18/6/19)
・「中朝首脳会談と米韓合同軍事演習の中止」(18/6/25)

3.東南アジア
(1)ASEAN
・「ASEAN50年の光と影(1)」(17/12/5)
・「ASEAN50年の光と影(2)」(17/12/6)

(2)インドネシア
・「インドネシアの課題とジョコ政権の改革(1)」(18/4/6)
・「インドネシアの課題とジョコ政権の改革(2)」(18/4/11)
・「スマトラ島、カリマンタン島」(18/4/13)
・「インドネシアでのテロ」(18/5/21)

(3)マレーシア
・「マハティールの復活」(18/2/16)
・「マレーシア総選挙」(18/4/9)
・「マレーシア史上初の政権交代」(18/5/25)
・「マレーシア・シンガポール高速鉄道の中止」(18/6/4)
・「日経『アジアの未来』」(18/6/18)

(4)タイ
・「プラユット首相の米国訪問」(17/10/9)
・「タイの前国王の国葬」(17/10/23)
・「タイ政治(1):総選挙の延期」(18/2/21)
・「タイ政治(2):権力構造と今後の展望」(18/2/23)

(5)フィリピン
・「ドゥテルテとトランプ」(17/10/10)
・「フィリピンのマラウィ市の解放」(17/10/23)
・「ドゥテルテの訪日」(17/11/8)
・「フィリピンのバンサモロ基本法の成立」(18/7/30)

(6)ミャンマー
・「ロヒンギャ危機とアウンサン・スーチーの苦境」(17/9/21)
・「ロヒンギャ危機と中国・ミャンマー」(17/10/13)
・「ロヒンギャ危機」(17/10/30)
・「ロヒンギャ問題」(17/12/4)

(7)カンボジア
・「カンボジアの強権政治と米中との関係」(17/10/12)
・「カンボジア選挙と欧米の制裁」(18/3/5)

(8)ラオス
・「ラオスのダムの決壊」(18/7/30)

4.南アジア
(1)インド
・「中国とインドの対立(1)」(17/9/14)
・「中国とインドの対立(2)」(17/9/19)
・「ティラーソンの南アジア訪問」(17/10/30)
・「インドの州選挙」(17/12/25)
・「中印首脳会談」(18/4/30)
・「インドのカルナータカ州議会選挙」(18/5/21)

(2)パキスタン
・「カラチ」(17/11/21)
・「ラホール」(17/11/22)
・「パキスタン紀行(1)」(17/11/23)
・「パキスタン紀行(2)」(17/11/24)
・「パキスタン元首相の有罪判決と身柄拘束」(18/7/16)
・「パキスタン下院選挙」(18/7/23)
・「パキスタン下院選挙」(18/7/30)

(3)バングラデシュ
・「ダッカ」(17/11/28)

(4)スリランカ
・「コロンボ」(17/11/17)
・「スリランカの非常事態宣言」(18/3/12)

(5)モルディブ
・「モルディブの非常事態宣言」(18/2/14)

(6)ネパール
・「ネパール首相のインド訪問」(18/4/9)
・「カトマンズ(1)」(18/4/20)
・「カトマンズ(2)」(18/4/27)

【あとがき】
21世紀は「アジアの時代」と言われます。それは、労働人口の豊富さと若さ、国土と資源の豊かさといったポテンシャルを考えれば、先進国の資本と技術を導入することで、自然に発展を遂げ、いずれは欧米を追い越す・・という、ある意味で素朴な考え方が根底にあったと思います。

しかし、実際にアジアの国々を見ていると、そういった伝統的な要因を超えたダイナミズムを感じます。「リープフロッグ型発展」という言葉がありますが、新興国では、携帯電話とインターネットに代表される先進的なテクノロジーが伝統的なインフラを必要とせずに普及し、蛙が飛び跳ねるように二次曲線的な成長を遂げる可能性があると言われています。

特にアジアの国々は都市と地方の格差が激しいですが、こうした新たなテクノロジーによって地方経済が表舞台に出てくれば、さらに飛躍的な発展を遂げるチャンスが生まれます。中国では先進国をしのぐ勢いで技術革新の社会サービスへの適用が進んでいますが、スタートアップの成長や地方経済の取り込みに向けた動きは、東南アジアやインドでも見られるようになっています。

また経済のグローバル化は国境を超えたサプライチェーンの構築を促し、企業や個人が世界を俯瞰して地域の特性に応じた事業を展開するようになっています。アジアの政治と経済の多様性はこうした戦略を実施する上で大きな魅力になっています。

日本企業は、中国から東南アジアに生産拠点と販売拠点を拡大し、いまやインドをはじめとする南アジアにもその領域を拡大しようとしています。アジアから日本には物品のみならずサービスや人の進出も増えており、双方の距離はさらに近くなるでしょう。

一方、政治面でもアジアは多様であり、近年は「中国モデル」とも言うべき権威主義と国家主導の経済発展を組み合わせたシステムが勢いを増しているように見えます。また、近代的な発展を遂げる一方で、実際に現地を訪れると、昔ながらのアジアらしいカオスに満ちた雰囲気が最先端のインフラと隣り合わせに共存しているのを見ることができます

アジアが単線的に欧米にキャッチアップするという、きれいなシナリオを描くのは現実的ではなく、また適切でもないでしょう。不謹慎かもしれませんが、個人的には、そうした野生的な熱気と混沌がアジアの魅力であり、だからこそ新たなチャンスも大きいのだろうと思います。

この総集編とその続編となる2018年8月からのメルマガを通じて、そうしたアジアのダイナミックな活力を感じ取っていただければと思います。

※記事を購入すると、本編のPDFファイルがダウンロードできます。

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