心が決める物の価値
子供の頃に輝いて見えたものは大人になると輝きを失って見えるように感じることがある。
ギザ十というものを知っているだろうか。日本で1951年~1958年にかけて製造された10円玉で、側面がギザギザになっていることからそう呼ばれている。
そこそこの流通量で、レアというほどのものではないが、側面が平らな10円と比べると数が少ないことで多少の珍しさはあるのだ。
小学生の頃友達に教えられてギザ十の存在を知った僕は、その日すぐに家族にその話をした。すると後日父親が10円を渡してきて、見るとそれは側面がギザギザした10円だったのだ。
さらに数ヶ月後には6枚の10円玉を父親から渡され、側面を見ると全てギザギザしていた。僕が「すごいね!どうやってこんなに手に入れたの?」と言うと、父親はニヤニヤしながら「頑張って集めたんだ」と言っていたのをよく覚えている。
当時はそれをすごいと思っていたが、中学高校とお金を使う機会が増えると割とよく手に入れるようになった。
大学生になってアルバイトをするようになると、かなりの確率でレジに入っているのを見るようになり、僕の中でギザ十のレア度はどんどんなくなっていったのだ。
バイト先の仕事の締め作業で入金機に現金を投入する際にはギザ十は吐き出されてしまうことがあり、つい先日それが起こってしまい、何度かやり直す手間がかかってしまった。さらに次の日も全く同じことが起こったのだ。
その日の帰りに歩きながら(10円統一しろよ...)と思った。