サービス設計、土台は分析と市場調査
サービスを設計し提供するためには、「いきなり自分の作りたいものを作ってリリースする」なんてことはせず、様々なデータを踏まえて分析と市場調査を行いながら市場に向けてサービスを提供しなければなりません。今回は、その”分析”と”市場調査”について解説していきます。
サービス設計の流れは
3C分析→SWOT分析→4P分析→デプス調査→ペルソナ設定→市場調査
の順で行われます。
1)3C分析、SWOT分析
3C分析とは、サービス設計の1歩目として以下のCから始まる3つの項目について分析することを言います。
・Customer:顧客
・Company:自社
・Competitor:競合
3つのCについてきちんと分析しサービス設計を行わなければ、どんなサービスも普及、拡大することはありません。
中でも特に重要なのは自社(Company)の分析です。
自社の立ち位置や強み、弱みを把握しなければいけないわけですが、意外と正確には把握できていないものです。自社分析をしっかりとしておくことが、よいサービスを設計し提供するはじめの一歩となります。
自社分析をするのに使われるのが”SWOT分析”です。
このSWOT分析は3C分析をするうえでセットと覚えておきましょう。
S:Strength 強み
W:Weakness 弱み
O:Opportunity 拡大可能性
T:Threat 縮小可能性
それぞれの頭文字をとって”SWOT分析”です。
実際に例を使って説明していきます。
仮にあなたが、カフェを新しくオープンしたいクライアントに向けてコンサルタントとしてアドバイスを行うとします。このクライアントは、すぐ近くにチェーンのカフェがあることを不安に思っています。どのようなお店を展開すれば良いのか、それぞれの”C”について考えていきます。
まずはSWOTで自社の分析していきます。
【自社分析=SWOT分析】
Strength(強み)
・自由に料金設定ができる
・独自のキャンペーンを実施できる
・自由なメニュー設定ができる
Weakness(弱み)
・認知度(ブランド力)が低い
・大手ではないので仕入れ原価が高くなる可能性がある
Opportunity(拡大可能性)
・夜はバーとして営業できる
・定休日はイベント会場としてお店を貸し出す
・地域のイベントに参加してコラボする
Threat(縮小可能性)
・近年、いろいろな業種でアルコールの取り扱いが増えているため大手でもアルコールを販売されると、集客が減る可能性がある
・コロナウィルスの流行によって外食する人が激減
自社の分析ができたら、次は顧客と競合の分析を行います。
【顧客分析】
・オフィス街 ・休日はあまり人がいない ・サラリーマンが多い
・男性が約6割 ・40代くらいが多い ・スーツ姿の人が多い
【競合分析】
朝の入店数は50人ほど、昼時には約100人ほど、夜は40人ほどの入店数・女性が多い・店内でフードを注文する人は入店数の30%ほど。
客単価530円とすると1日売上は100,700円ほどであると考えられる。
このように3C分析、SWOT分析のフレームワークに沿って、分析を進めていきます。
2)4P分析
3C分析ができたら、次にするのは4P分析です。
4Pとは、
Product(製品):デザイン名、ブランド名、パッケージ、サービス、保証
Price(価格):価格設定によって、必然的にターゲットが決定されるので慎重な検討が必要
Place(流通):市場に流通させるための経路や販売する場所
Promotion(プロモーション=販売促進):顧客ニーズを満たすためのターゲット選定や購入機会を提供するための流通、販売経路の確保
の4つのPで始まる言葉のことです。
先ほどの、カフェの例で考えてみましょう。
Product:製品
男性サラリーマンが多いという観点から、おしゃれさよりもボリュームを重視したランチメニューを用意。夜はアルコールメニューを用意。
女性客取り込みのため、タピオカなど競合にはないメニューを提供。
Price:価格
ランチタイムはサラリーマン取り込みのため、ドリンクとセットで900円。夜は競合がいないため、高めに設定し客単価4,300円程度を狙う。
Place:流通
オフィス街のため、一定のデリバリー需要もあることを想定。
そのため、ランチデリバリーを宅配サービス提携して提供。
Promotion:販売促進
LINE@登録でドリンク一杯無料の特典実施。
このようにフレームワークにのっとって、1つ1つ物事を考えることで論理的に分析することができます。
ここまでイメージができたら、自社と競合の4Pを比較し改善を行います。
3)市場調査
最後に市場調査を行いますが、市場の規模を把握するためにもいくつかの手順があります。それをこれから解説していきます。
市場規模を知るためには
①特定の商品やサービスを必要(ニーズ)としている人
②ニーズに対して人々はいくら払うのか
の二つの情報が必要になります。
②のことを”メンタルアカウンティング”とも言います
そして、この二つを調べるのが市場調査といわれるものです。
ニーズの数とそのサービスに支払うお金、言い換えると「そのサービスに支払ってもいいと思える金額」を調べるためにニーズ調査、デプス調査、ペルソナ設定を行います。
順番に説明します。
【ニーズ調査】
これはいたってシンプルです。
「こんなサービスがあったらどう?」と聞いてみることです。
ここで重要になるのは、聞く対象をカテゴリ分けすることです。
例えば、主婦に聞くのか、サラリーマンに聞くのか、30代の男女なのか、40代の男女なのかで回答は異なってきますよね?どんなカテゴリの人からの回答なのか、カテゴリ分けしておくことが非常に重要になってきます。
【デプス調査】
ニーズ調査で得た回答をもとにさらに詳しく調査していきます。
デプス調査では、特定のニーズを持ったカテゴリの人達を集め以下の順序でヒヤリングを行い、ブラッシュアップしていきます。
①スモールトーク
日常会話、自己開示を行い相手に安心感を与える。
②ライフスタイル
趣味や家族構成、職業、帰宅時間など1日の流れを聞き出す。
③ワンアヘッド質問
年収や家庭の経済状況、ローンの残高など折入った質問をする。
④3つのWHY
WHYを3回聞くような質問を繰り返す
サービスに対しての意見や、ねぜ必要と思ったか、不要と思ったかなどの質問をする。
ここまでの流れで大切なのは、質問に対しての答えに重きを置くのではなくポロっと口にした言葉をメモしておくことです。
また、自分たちが開発しているサービスは必ず最後に伝えるようにします。ライフスタイルなどを聞いた後に、サービスの説明をすることで「この年収、世代、経済状況の人はこのサービスに興味があるんだな、気に入るんだな」とわかります。
【ペルソナ分析】
次に、デプス調査を行って得た情報の共通点を盛り込んだ人物像を想像してください。そうです、妄想ですね。この妄想した人物のことを「ペルソナ」といいます。
年齢、性別、職業、年収、家族構成、趣味、住んでいる場所...など、詳細であればあるほど良いです。
そしてプレゼンなどでは、このペルソナを逆算しながら説明すると効果的です。
例を出すと
「30代の子持ちの主婦で、朝は子供を保育園に送った後、仕事に行っています。旦那は会社員でいつも22時頃帰宅します。16時に仕事を終え、17時に保育園に子供を迎えに行きますが、スーパーで買い物をして晩御飯の支度をするのが大変です。このような主婦10人にデプス調査をしたところ、8名がぜひ宅配晩御飯サービスを利用したいと言っており、このサービスに対して月2.5万円くらいなら払えると言っています。この街には、同じような主婦が2万人ほどいる」となります。
それぞれの数字を式に当てはめると、このエリアの市場規模は
2万人×80%×2.5万円=月間4億円ほど、と予想ができます。
ここまでで、分析と市場規模について解説してきました。
あと一つ、サービスの浸透の仕方を解説して終わりにしましょう。
【普及曲線】
市場規模がわかってサービスをリリースしても、いきなり市場規模通りの成果が出るわけではありません。サービスが市場浸透していくには、順番があります。下の図を見てみましょう。
サービスはイノベーター、アーリーアダプターの16%の人々から浸透が始まります。
iPhoneで考えてみましょう。現在、日本でiPhoneを使用している人の数は約6億人です。しかし、iPhoneが初めて日本で発売された2008年の7月の時点で、皆さんの周りにiPhoneユーザーがどれだけいたでしょう?ほとんどの人がガラケーやiPhone以外のスマホを使用していたのではないでしょうか。
それが今では人口の半分以上のシェア率となっています。
iPhoneが発売され、買ってみようかなと行動に移す16%の人々、それがイノベーターやアーリーアダプターです。それ以外のアーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードといった人たちへは、先に述べた16%の人からの口コミなどで徐々に浸透していきます。
つまり、いきなり市場規模全体にそのサービスをいきわたらせる必要はないということです。むしろ、初めに16%の人々を満足させることができれば、あとは勝手に広まっていくのです。
まとめ