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「京都の風土」 自然編

京都の自然風土は、気候でその特徴が大きく分かれます。すなわち舞鶴・丹後の「日本海側気候」とそれ以外の「盆地気候」。

*各種数値は気象庁の「平年値」を引用

■典型的な日本海側気候の「舞鶴・丹後」

山陰地方や北陸地方の気候と同じで、大都市圏の東京・大阪などとは全く異なる気候。つまり年間通して晴天が少なく雨雪が多い。気温も夏暑く冬寒い、という人間にとって厳しい気候。

特に日本海側気候の冬は世界的にも特殊な気候で、大陸からの乾いた冷たい空気が、日本海を北上する暖流対馬海流」の湿気を目いっぱい吸い込み、列島の山地で上昇して大雪を降らせるという気候。これが世界有数の豪雪地帯を日本海沿岸にもたらしています。

tenki.jpより

夏はフェーン現象(※)で、むしろ太平洋岸よりも一時的に暑くなる場合もあり、年間を通して日本海側から断続的に流れる雲によって、一日中晴れるということが少ない。必ず一日のうちで雨と曇りと晴れが連続的に訪れる特殊な気候。

※フェーン現象
山頂(尾根)を境にした双方の地域の湿度のギャップで発生する現象の一つ(気象庁HPより

実際、住んでいる人は実感わかないかもしれませんが、日本海側は、そんな世界的にも貴重な気候のなかで生活しているのです。

数値的に舞鶴市を事例に、他地方と比較するとより分かりやすい。舞鶴市の湿度が一番高い季節は冬(82%)ですが、東京(冬51%、夏76%)などの太平洋岸では、湿度が一番低いのが冬で真逆です。

年間を通して日本海から雲がやってくる舞鶴では日照時間が年間1,552時間と、大阪市:同2,049時間、京都市:同1,794時間と比較しても圧倒的に少ない(全国平均は1,850時間)。

冬寒く(1月3.7℃)、夏暑く(8月27℃)、年間気温差が激しい。ちなみに「底冷えする」といわれる京都市内でも1月の平均は4.8℃、大阪市では6.2℃(実は奈良はもっと寒くて1月0.1℃)。一方で夏は京都市内で28.5℃、大阪市29℃とさすがに舞鶴の方がまだマシな状況。

このように、首都圏に住んでいる人が舞鶴や丹後などの日本海側に移住する場合、気候が大きく異なることをよく理解しておかないと、大変なことになります。気候の影響で家の設備・自家用車・公共交通機関などで大きく異なっているからので。

一方で日本海岸側気候は年間通じて湿度高めで晴天率も低いので、敏感肌、特に乾燥肌や日焼けの苦手な方には都合のよい気候。またカニ・イカをはじめとした豊かな水産資源を誇り、気候の厳しさだけで判断するのはもったいない地域でもあります。

したがって風土論的には、インドア志向になりやすく厳しい気候にも耐えられる忍耐強い社会になりやすい、と想定されます。

ちなみにプレジデントオンラインの都道府県別県民性をみると、同じ日本海側気候の新潟県・石川県・富山県・鳥取県・島根県で「忍耐強い」「粘り強い」「辛抱強い」というキーワードが登場しますので、やはり厳しい気候が性格に反映されている可能性があるかもしれません。

■マイルドな盆地気候の「京都市」

京都市は典型的な盆地なので、盆地気候の特徴である夏暑く冬寒く、乾燥していて、晴天率高く、雨が降りにくい、と想定できますが実際はどうなんでしょう。

気温は、上と同じく気象庁の平年値で比較すると、夏は8月で28.5℃、冬は1月で4.8℃で寒暖差は23.7℃で東京の21.5℃、大阪の22.8℃、と比較しても年間の寒暖差は厳しく、さすがの盆地気候です。

夏の28.5℃は、大阪の29℃と同程度で、東京の同26.9℃、奈良・金沢の27℃、津市の27.9℃、福岡・和歌山の28℃、と比較しても暑さは相当に厳しく、京都は国内でも格段に夏の暑い地域といえます。

一方で冬1月の平均気温4.8℃は、東京の5.4℃、大阪の6.2℃よりも低いのですが、同じ盆地の奈良の0.1℃、伊賀の3.5℃よりも高く、底冷えするほどの寒さともいえません

湿度は、年間65%で、4月が一番乾燥していて59%、秋が一番湿気多く68%。東京の場合は京都とまったく同じ年間65%で梅雨時に76%に上昇し、乾燥する冬に51%まで下がります。したがって湿度は年間通じて平均的で年間のギャップも大きくない、という印象。したがって1日の寒暖差も湿度が低くないので極端なギャップは出ないのでは、と思われます。

日照時間は、年間1,794時間で東京(同1,926時間)、大阪(同2,049時間)よりも少なく、盆地気候とは思えない日照時間の低さ

年間降水量は1,522mmと東京(同1,598mm)と同水準で大阪(同1,338mm)よりも多く、決して乾燥した地域ではありません。

以上まとめると、気温は年間の寒暖差大きく、夏はうだるような暑さですが冬は底冷えするほどではなく、湿度は平均的で晴天率も特別高いわけではないマイルドな盆地気候、といったところでしょう。

したがって、京都の夏は避けるべきですが、意外に冬は言われているほど極端に寒いわけでなく、冬の観光は実は穴場かもしれません。日本海からの雪のおこぼれもあって、雪景色もきっと美しいはず。


ちなみに京都の月別観光客数をみると紅葉の季節の11月が最大観光客数でその次が3月下旬から4月の桜の時期ですが、実は一番観光客が少ない2月も隠れた観光シーズンかもしれません(ただし日照時間は最も少ない月なので効率的に回るのが大事)。

実際今月10月のほか、来年2月も京都をフィールドワークしようと思うので実体験してみたいと思っています。

*写真:2010年東福寺:庭園



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