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「科学とはなにか」佐倉統著 を読んで

<概要>
「科学とはなにか」というよりも、科学だけでなく技術含めた科学技術と社会の関係についての著者の経験談や考えに関する随筆を収集した著作。

<コメント>
著者(佐倉統)の本は進化論関係で何冊か読んでいたので、もうちょっとアカデミックな内容を期待していたのですが、ちょっと違いました。したがって以下は書評というよりも、本書を通した科学に関する個人的見解です。

科学技術は、社会にとってどのような意味があるのか?について、さまざまな視点から述べているのですが、そもそも「科学」というのは、何かの手段として生まれたわけではないのではないでしょうか?これは学問全般に対していえるのでは、と思いますが。。。。

第一に科学技術含む学問は全て、基本的には人間が「生きる」ための手段でもなく、政治権力を拡張するための手段でもなく、人間の根本的な欲求の一つである、因果律に基づく知的欲求を満たすための営みとして生まれたのではないかと思います。

したがって位置付けは「芸術(文学なども含む)」などと同じようなもので、人間の生を豊かにしていくものです。

科学はもともと哲学のうち「事実」に関する領域を扱ったものが切り離されて独立した分野として発展。知覚に基づき自然を測定して数値化し、法則性のあるものを仮説として提唱し、他者の反証によって定説(著者曰くの「事実」)になっていくという学問。

著者曰く

科学における「事実」とは、専門研究者集団たちがよってたかってアラを探し、それでも瑕疵が見つからなかったときに初めて認定されるもの

第二に、このうち人間の「生きる」行為に役立つものがあって、それらが活用されて「より多くの人間が寿命を全うできる社会」に貢献してきた。さらに共同体間の生き残り競争においても、つまり軍事力という領域でも大きな役割を果たし、科学技術の水準が戦争の勝敗に大きく影響するという事態に至っているのは、今も同じです。著者は

21世紀の科学技術は一般市民、生活者、社会のためのものである

と謳っています(この中に軍事力は入っていないのかは不明)。

以上のように科学技術は、人間にとって二つの価値があると思ってます。

したがって国家が税金を使って科学技術を発展させようとする意図は「国民の精神的豊かさの増大」が第一で、第二に実社会で役に立つ発見や説を活用して「国民の経済的豊さの増大」と「安全保障の強化」ではないかと思います。

最近は、本書含めて第二の価値ばかりを強調するキライがありますが、私は、むしろ芸術と同じように、科学技術という知的活動そのものの「歓び」の視点にも、もっとフォーカスしてもいいのではないかと思います。

*写真:2021年 千葉県流山市 菜の花満開の江戸川土手

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