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旅行して感じたトルコのイスラム事情



今回2週間ほどギリシア・トルコに滞在して、2週間前に渡航したロードス島の中央内陸部で山火事になっていることに驚いています。私が訪問したのは島の北部の先端部分だけなので、まったく別の場所ではありますが。。。

#日経COMEMO #NIKKEI

さて、国民の99%はイスラム教徒だといわれるトルコにおいて、イスラム教に厳格だというカタール(2022年訪問)やUAE(2017年訪問)などと比較しつつ、イスラム的には、どんな感じだったのか、ざっと以下に整理したいと思います。

⒈女性がヒジャブ(ヴェール)を被っている割合

トルコ人は、おおよそ半分ぐらいの女性がヒジャブを被っている印象でした。都会・地方・年齢など、何かしらの属性による違いはあるのかな、とも思いましたが、あまりその違いは感じられませんでした。

私の訪問したエリアは、大都市ではイスタンブールと首都アンカラ。地方都市としては西アナトリア地方のエドレミト、クシャダス、アイワルク、マルマリス。

地方だからといって多いわけでもないし、高齢者だから多いというわけでもありません。

これがカタール&UAEであれば、外国人比率90%なので判断は難しいですが、アラブ人と思われる人々は100%ヒジャブ被っていましたし、ブルカ(顔も覆う衣装)も当たり前という感じ(トルコではトルコ人らしき人がブルカ被ってるのはほぼ皆無)。

政教分離の世俗主義を国是として1923年に建国したのが、今のトルコ共和国なので、学校や役所など公の場では「ヒジャブ禁止」にしてはや100年近く経過。

[アンカラ:アタトゥルク廟(初代大統領アタトゥルクの墓)]2023年7月撮影。以下同様

なので高齢者だからといって保守的でもない。むしろ「保守的」という概念は世俗主義で、「革新的」という概念は、トルコにとってはより「イスラム色が強い」ということになるのかもしれません。

というのも、エルドアン大統領になって以来、世俗主義は後退しイスラム化が進んでいるからです。どうやらエルドアン大統領は、近代トルコの象徴としてのアタトゥルク初代大統領(日経はアタチュルクと表現)を模範にしているのではなく、オスマン帝国のスルタンを模範にしているようだ、とも言われているようです。

⒉トルコ飲酒紀行

以下の通り、高野さんの著作でもトルコの飲酒事情を紹介しましたが、今はどんな感じなのでしょう。

結論的には、日本のような非イスラム国家と同様、普通にお酒は飲めます。

(高野秀行『イスラム飲酒紀行』掲載の、アタトゥルクも通ったというトルコ料理店「パンデリ」)
(レストラン「パンデリ」ナスと羊肉の料理)

レストランでも普通のメニューとして載せているし、実際、地産のビール、ワイン、ラクという蒸留酒なども豊富。

(トルコを代表するビール「エフェス」フロリアブティックホテルにて)

ただし、日本と大きく違うのは、道徳的に「飲酒が悪いこと」として後ろめたく感じるかどうか。

明らかにトルコ人は飲酒を後ろめたく感じているようです。実際、レストランでお酒を飲んでいるのは見た目的にはほぼ外国人のみ。

(街角の商店でも普通にワイン売ってます)

アンカラでほとんど外国人のいない地元利用だけのレストランを利用してみましたが、飲酒している人は皆無で、一応メニューにはあるものの、私だけが大っぴらにビールを飲むのは、空気感的にちょっとまずいかな、という感じでした(結局私もトルコ人の同調圧力を感じてチャイを選択)

(アンカラ駅近くのレストラン「Ciğerci Aydın」)

また、私がクシャダスというエーゲ海沿いの観光地で、運転の都合で男性としての私が飲まず、女性である妻だけがビールを注文すると、トルコ人のウエイターは「信じられない」という表情で、妻にビールを給仕。そして妻が2本目を注文すると、口も聞いてくれなさそうな雰囲気でした。

やはり「女性がお酒を飲む、特に男性を差し置いて飲む」という行為は、相当にトルコ人にはショックな状況のようです。

また、メニューにお酒が載っていなかったレストランで「ビールはないの?」と聞くと、店のオーナーさんらしき人と相談して、裏の方からビールを持ってくるなんてこともありました。

これがUAE(ドバイ)やカタールだったら、店頭ではまずアルコールは売っていません。

特に昨年W杯で伺ったカタールでは、少なくとも私の行動範囲には、いっさいアルコールはありませんでした。UAEのドバイでは、ホテルには置いてありましたが、外のレストランや売店でもほとんど見かけず。

この辺りは、同じイスラム圏でもだいぶ事情は違います。

とはいえ「アルコールは後ろめたいもの」という価値観はイスラム圏共通の価値観として持ち合わせているのでしょう。

(アイワルク「Bacacan Hotel Ayvalık」のレストランにて)

⒊トルコに豚肉はあったのか

そして、穢れの象徴ともいうべき豚肉ですが、これはまったくトルコにも存在しませんでした。肉といえば、ラム肉がほとんどで、これに一部鶏肉と牛肉がある、という印象。

(アンカラ駅近くのレストラン「Ciğerci Aydın」の羊レバー)

豚肉はイスラム教徒にとっては、相当に忌避されているらしく、私たちが「汚物」を食べたくないのと同じくらいの強力な忌避感なのでしょう。

(クシャダス「Antepli Et Restaurant」羊肉ケバブ&鶏肉&ラムミンチ肉パイ包)

したがって豚肉はアルコールと違って、宗教の戒律を飛び越えた、完全にタブー的な存在なのかもしれません。

⒋女性の隔離

例えばUAEでは、公共交通機関は、地下鉄やバスでは女性と男性の乗車場所が分かれていますが、トルコでもバスや地下鉄に乗ってみましたが、完全に男女分かれて乗車する、というような習慣はありませんでした。

ただし、2人席などで相席になる場合は、女性が座っていると絶対男性は座りません。逆に男性が座っていると女性陣に席を譲るなどの女性を守る行動は持ち合わせていました。

モスクにおいても、メッカの方向を示すミフラーブの前で堂々と礼拝できるのは男性のみ。女性はすみっこの隔離された場所でしか、礼拝できないようでした。

なので、礼拝所たるモスク内はともかく、公の場においても、女性と男性は明らかに一緒にいるという場合は既婚者のみと思われ、世俗主義のトルコといえども、この辺りはイスラム圏らしい状況ではありました。

(イスタンブールのレストラン「Modena」よりマルマラ海を望む)

⒌ビーチで女性は水着を着るのか?

基本的にイスラム圏の女性は、家族以外の男性のいる場では髪や肌を見せないのが一般的な風習ですが、肌をみせざるを得ないビーチではどうだったのでしょう。

結論的には、ビキニスタイルの女性も少数派ですが、いました。その少数派の若い女性も、さすがに表面積の大きいビキニスタイル。

(クシャダスのビーチ)

多くはTシャツとパンツで、20%ぐらいはヒジャブを被ったままでビーチでのんびりする、というのがイスラム風。この割合は、クシャダスというビーチで、見た目、あまり外国人がいないビーチ。

一方で外国人が多分、半分ぐらいだった地中間沿岸のマルマリスでは西洋とあまり違わない印象。

マルマリスのビーチ

同じトルコでも外国人の状況によって大きく変わるのかな、と思います。

以上、世俗主義のトルコであっても、現代イスラム的価値観が行き渡っており、だいぶ私たちの文化圏とは異なる印象。でも他のイスラム圏と違ってトルコはみな自分の価値観に合わせて、それぞれ各自の判断で行動している点は、同じ近代民主義国家として親近感が持てます。

UAEやカタールと比較すると、99%イスラム教徒のトルコ人といえども、ヒジャブを被らない女性も半分ぐらいいるわけですから、相当に自由な感じがしたのです。

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