なぜアフリカは中国を歓迎するのか?『アフリカを食い荒らす中国』 読了
<概要>
アフリカ大陸における中国進出の実態を実際にアフリカ諸国を取材して紹介したフランス人とスイス人ジャーナリストの共著。ちなみに本書の日本タイトルは本書内容とはだいぶ印象が異なる。本書は善悪の視点がだいぶ排除された、より客観的な内容。
<コメント>
日本語タイトルがひどいので困ったものですが、内容的には至って真っ当な2008年出版のノンフィクションです。
ちなみに中国はひどく「食い荒らしている」わけでは、ありません。「食い荒らす」という視点でいうと、500年前の奴隷貿易から現代に至る西欧列強の方が圧倒的にアフリカを食い荒らしています。
さて、なぜアフリカは中国を歓迎するのか?その答えは、以下の二つ。
となります。
国家にとって「道徳の価値観=大義名分」はもちろん重要だと思いますが、何よりも重要なのは「国益」であって、中国がアフリカに対して国益を追求すると「資源の獲得」となります。
例えば欧米の「国益」と比較すると面白い。
▪️中国がやってくるまでのアフリカと欧米の関係
戦後の欧米諸国は、アフリカに何を求めたか?それは反共産主義です。つまり戦後の欧米諸国にとっての国益は反共。
戦後日本同様、欧米諸国はアフリカが共産主義化しないため、できるだけ制御可能なよう独立阻止。独立された場合はアフリカ諸国の政治権力を西側陣営に引き入れるべく、経済的援助はじめとしたサポート強化します。
この時点で、アフリカ諸国の政治権力が権威主義的かどうか、能力があるかどうか、なんて関係ありません。ひたすら東側になびかないよう、手練手管を重ねます。
そして共産主義の恐怖が去った冷戦以降は、とって返したように自分たちと同じ「普遍的価値」をアフリカ諸国に求めます。普遍的価値とは「自由、民主主義、基本的人権、 法の支配、市場経済」のこと。
反共が終われば今度は「民主主義」陣営を増やすのが欧米にとっての国益となったのです。
独裁国家が大半のアフリカ諸国は「普遍的価値」とは一番遠くにある国家たちでしたが、欧米諸国の新しい要望に応えないと支援してもらえないので致し方なく多党制を導入したり選挙を行なったりして、取り繕おうとします。
それでも、アフリカの重要性がどんどん低下していった欧米諸国は、支援の手を次第に弱めてしまう。
▪️救いの手を差し伸べた中国
そんな状況下、国際支援なしではやっていけないアフリカ諸国の独裁者に救いの手を差し伸べたのが中国だったのです。
ただし、中国はアフリカ諸国全部にその手を差し伸べたわけではありません。特に資源国(主に石油産出国)にその手を差し伸べたのです。
つまり中国の目的は明確。「資源の確保」そして「ちょっとだけ仲間づくり」です。
人口14億人の人民に衣食住を満たす必要がある中国は、国内にある資源だけでは到底足りません。そこで目をつけたのがアフリカ。第三世界のリーダーとしてこれまでもアフリカには目を向けていた中国ですが、冷戦終了以降、西欧社会から見放されて困窮していたアフリカは、資源獲得先として格好の相手だったのです。
アフリカ(の独裁者)にとって中国は、欧米と違って包括的な支援をしてくれる意味でもありがたい存在。
支援が決まると、どんな国どんな現場にも、1週間・2週間で何万人もの労働者を送り、記録的な安値で、しかも最短の工期で、プロジェクトを完成させてしまうのです。
この中国方式にはデメリットももちろんあります。すべて中国だけで完遂してしまうので、アフリカの入り込む余地がないのです。
一般的に発展途上国は、外資を導入しつつ現地企業と合弁させたり、現地の従業員を雇わせたり、など、ノウハウなどの付加価値を外国から得ようとします。そして自立した経済を目指す。
ところが、中国方式ではこれはできません。だからこそ、安くて早くプロジェクトを完遂できる、とも言えます。安く早く完遂するためには現地人を入れてしまってはできません。
中国企業は、中国人労働者に比べて、習熟度が低く、労働時間が短く、労働生産性が低い(=怠惰)アフリカ人を雇いたくないのです。
一方で「アフリカの独裁者たちもその方がありがたい」というのがアフリカの悲しい現実。
独裁者は、独裁政権を維持するため、国民が豊かになって力を持ってしまうことを恐れているのです。国民は、あまり豊かにならない方がいいのですから。。。。
ただ、権威主義国家でもそこそこ経済成長できるという実績を示したのも中国。
なので今後アフリカはどの方向に向かうのか、は興味深いところです。
*写真:なかなか完成しないという、日本支援の立体交差(コートジボワール、アビジャンにて。2024年2月撮影)
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