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そもそもエビデンスとは何か?林英恵著『健康になる技術 大全』より

<本書の概要>

公衆衛生の専門家による、最新(2023年2月時点)の健康のための科学的根拠(=エビデンス)の成果を網羅した健康大全。

<コメント>

最近、動画サイトPIVOTをよく視聴しています。そのなかで紹介されていた著書が非常に興味深かったので一気に通読。

昨年2023年時点での最新の科学的成果を網羅的に扱っていているので、今最も科学的に正しい健康関連の知見が得られる非常に有益な著作。

興味深い知見が多いので個別に展開。今回は「エビデンスとはそもそも何か」。

私含めて、YouTubeなどのSNSからの情報が主となりつつあるこの時代において「陰謀論」や「バズっている話題」「都市伝説」などが世の中を席巻した場合、「今、何が事実なのか?」が非常に問われているのではないかと思われます。

そのなかでも「科学」は最も信頼性のある「事実」のひとつではないかと思いますが、具体的にエビデンスとは「科学的根拠」のことで、特に著者の場合は

一つひとつの研究の結果から出てきた情報をまとめたもの、つまり科学的な証拠の集合体のこと

本書39頁

ということで、なぜここまでいうかというと、各種科学の知見の信頼性には強弱があるから。

以下エビデンスのピラミッドより、信頼性の高いものから並べました。

⑴複数の研究の総合的なレビュー(メタアナラシス・系統的レビュー)

 ⑵の実験の結果をまとめ、分析したもの。→下図の①

⑵無作為に割り付けた研究・前後比較・準実験・検察研究

それなりの研究対象が多く、対照実験や無作為のグループで比較するなどを経た研究結果。
→下図の②・③

⑶事例やケース

人間への実験等を経て査読をつき論文で検証されているものの、実験対象者が少ない研究結果。
→下図の④

⑷専門家個人に意見・動物実験・試験管での研究

一番質の低いエビデンスで、これをもってエビデンスとは言い難いもの。
→下図の⑤

本書33頁

このなかで⑴=①の部分が、どうやら著者がいう「エビデンス」のようです。

一般にテレビショッピングなどの健康食品などで紹介されるエビデンスは、ほとんどが⑶⑷の事例で、本来のエビデンスとは言えないらしい。つまり信頼性が低い、ということ。

哲学者の竹田青嗣や西研は、誰もがそうとしか思えないもののことを「普遍的確信(※)」と呼んでいますが、上の⑴メタアナラシスがこれに相当するのでは、と思います。

※普遍的確信
共同的な共通確信であることを超えて、理性ある人間の間で必ず共有されうる確信。数学や自然科学に代表される認識‐確信、さらにある種の哲学的認識‐原理(神の存在証明の不可能性など)。

竹田青嗣著『新哲学入門』第二章3より

哲学の知見は、オープンな環境のもとで信念検証的な性格を持つ性格上、日々アップデートしていくべきものですが、この辺りは科学もまったく同じ。

ただ、科学のエビデンス「⑴メタアナラシス」までいくと、新しい証拠などが発見されない限り、恒久的な定説になるのでしょうが、⑵以下のエビデンスについては、仮説レベルで日々アップデートされていくレベルの知見なのかもしれません。

なので、世の中に蔓延る多くのエビデンスにも様々なエビデンスがあり、果たしてその個別のエビデンスの精度は「メタアナラシスに相当するのかどうか」、私たちは、一つ一つ注意力をもってチェックすることが必要かもしれません


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