ガル

オリジナルや二次創作の小説を乗っけていきたいと思います。

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  • メルクストーリア短編集

    メルクストーリアの二次創作です。

  • オルトスの旅の記録 〜雪の国〜

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第一話 春の丘の早暁

ーーー織糸は綴られる 刺し抜き捻りかがり抜き 結まれ畳まれ合わさって 「はぁ〜ここはどこだろう〜、完全に迷子だよ〜」  後ろ髪をカールに巻いて星型の花で編んだ花冠を乗せ、灰色を基調として斑点の入った翅、重く濡れたそれを羽ばたかせた少女が一人、薄暗い洞を進んでいく。  天頂より岩の隙間から激しい風音が低い振動となって鳴り響き、豪雨で地表に溜まった水が洞の地中へと注がれている。そのような穴がいくつかあることは見て取れるが、周囲の差し渡しは闇で覆われており目測ができない広さだ。

    • フラゲノム中尉の帰国

      (あーマジ無理だ!) (疲労困憊だ! タバコ吸いてえな!) (禁煙? ああそうだ、禁煙中だ、クソ、あそこのビーチパラソルの下でかき氷食ってタバコを吹かせたらさぞ幸せなんだろうぜ)  真っ白なジーンズ、茶色のシャツに短い袖に通したジャケット、得物である鞭を肩に巻き付け黄色いネクタイを風に靡かせ、金髪の筋骨整った精悍な男が、日照りの強い島の高台へ続く道を歩む。 (王国へ要人を護送し、現地で容赦なく積まれた案件の山、滞在期間七日間を寝ず飲まず食わずで片付けーーまぁそれは言い過ぎ

      • 旅の記録−2(仮)

         船は支障なく港に着き、投錨し、すでに荷物の運び込みが始まっている。  大勢の人に歓声と共に迎えられオルトスは目を丸くした。 「世廻り丸が帰ってきたぞー!」「おかえりなさい、世廻り丸!」「冬想祭に間に合ってよかった!」「頼んだぞリッペン 、氣をつけてなーあー言ってる側から!」  船員を出迎えた家族と抱き合ったり、品を待っていた商人は帳簿にサインをしていたり、港で働く従業員が警備をしたり砕かれた氷を運んだり、見物に来たであろう者などで賑わっている。癒されたモンスターの姿も少なか

        • 旅の記録−1(仮)

           拝啓、兄さん。  僕が旅に出てもう半年だね。  そっちは変わったことは無い?  常夏の国と違って、こっちの海はとても寒い。でも船に乗り前にしっかり準備をしてきたから大丈夫。  船員の人たちとも仲良くなれたよ。色々な国を渡ってきただけあって、面白い話も沢山聞けた。早く兄さんやミシェリア様にも聞かせてあげたい。本当に信じられないようなことばかりなんだ。  そろそろ、この航海も終わるみたいだ。  今までにないぐらい(ずっと同じこと言ってるね)、期待してることがあるんだ。  この国

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        第一話 春の丘の早暁

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        • メルクストーリア短編集
          4本
        • オルトスの旅の記録 〜雪の国〜
          2本

        記事

          また巡り会う幻想譚

          「オーレーグ」  初夏の日差しが夕陽に変わる頃、畦道を進む牛舎に積まれた藁の頂上で彼女は名を呼んだ。 「んー、なんだい?」  藁に無造作に頭をもたれかけ、ずれた眼鏡を直すこともなくのっそりと男は返事をした。  遠くには山の稜線。周囲は田や畑、そして薫風が吹くと稲や果樹がサラサラと揺れる。  彼女は妖精であった。亜麻色の柔らかい髪が靡き、深き夜の瑠璃色に星の光を灯したような羽、透き通る碧眼、冒険者の出で立ちとは言え、絵本から飛び出したように夕焼けに映える小さな姿はどこか神秘的で

          また巡り会う幻想譚