女性歯科医の罠@香港
歯を抜いたハナシを書いていて思い出した。
何科であっても海外で病院に行くのは心細く、言葉の不安も募る。
1990年代半ば、駐在していた香港で歯が痛くなった。ちょいと風邪を引いた、お腹を壊したというのと異なり歯痛は放置できない。
幸い、駐在員規定の中で医療費をカバーしてくれる。必要最低限の治療をして、日本に戻ったときにきちんと治そうと思った。日本でもそうだが、歯医者は「相性」みたいなものがあって、痛い痛くない、治療期間が長い短いなど、医者によってずいぶんと左右されるものだ。
他社の駐在員に聞いて、オススメの歯医者へ行くことにした。
歯科医は女性でイギリス籍だという。若いわけではないがちょっとチャーミングな先生だった。虫歯を治すのにチャーミングかどうかは関係ないし、削られればやはり痛い。だが「そうでない」よりはいい。
1回の治療時間は長くないが、その分回数が多いのが気になった。予約を取るのも、行くのも面倒だった。だがなぜか嫌でない。歯医者特有のニオイはするし、痛い時は痛い。なぜだろう。
近かったのだ。チャーミング先生が。こちらはバカみたいに口を開けて、苦痛に耐えているが、その間、先生の胸がこちらの肩口当たるのだった。いや、確実に当てに来ていたのだった。それからは気になって仕方がなかった。
このままでは虫歯でない歯も全部削られてしまう!
虫歯1、2本なら1回では終わらないが、普通は3、4回で治療は終わるだろう。診療回数を増やして稼ぐ作戦だったわけだ。ある意味悪徳歯科医と言える。企業の駐在員なら治療費が自腹でないこともお見通しなのだった。
受付も人が悪い。やっと気づいたかという顔で、「もう(治療は)いいです、って言わないとずっと続きますよ」
チャーミング歯科医の罠。
ちょっと懐かしい香港のハナシでした。