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流氷観光の王道は・・・

寒さにはめっぽう弱いくせに流氷は前から見たいと思っていた。
年末年始にコロナのため、ひとり部屋でずっとテレビを見ていたら、BSで釧網線の番組(ひとシーズン前の番組だったところがBSっぽい)に遭遇。これならひょっとすると暖かい車内から流氷見えるかもと思い、2月13日~15日、行ってみた。

初日空路釧路へ。JR釧路駅から知床斜里まで行ってそこで1泊。2日目は「流氷物語2号」で知床斜里駅から網走駅まで約1時間。網走泊。3日目は網走から女満別空港へ向かい東京へ戻るだけ。シンプルな行程だが満足度は高く、結果、オススメだ!
 

鹿と目が合う釧網線

釧網線は釧路の隣、東釧路から網走を結ぶ。てっきり釧路からだと思っていた。
14時14分釧路発網走ゆきの普通列車は1両(キハ54 525)、さすがに座れないことは無いと思っていたが、流氷シーズンでもあることから土日を避けた。15分くらい前に列車が着くと駅員さんに聞いたのでホームに向かった。2人組客や私のように1人客が数組、そして沿線住民と思しき方も数人。「ローカル感」満点だ。


渋い


 
すると、旗を持った「軍団」が近づいてくる。旗を持っているということは、JTBかクラブツーリズムか。ムム。それは中国語軍団だった。ツアコンらしき人が皆に話す時は標準語、各々が話すときは方言であることからおそらく台湾かなと。台湾言語はさすがに聞き取れない。
 
ローカル感一転、賑やかなツアー列車となった。普通列車なので席はすぐに埋まり、軍団の皆さんを含めて座れない乗客も。これは想定外。はやく並んでいてよかったとつくづく。だって自分の目的地、知床斜里駅まで2時間以上あるんだから。
 
ディーゼルがどうどうと音を立てて走り始めた。10分少し走ればすぐに釧路湿原が広がる。といっても視界はどこまでも真っ白。そして左右に木立が現れ始めると立派なカメラを持った客がカシャカシャカシャっと連写。鹿がいたという。全く分からなかった。

そしてそのあとくらいから何度かけたたましい警笛が鳴る。それは鹿を威嚇し避けるためのものだとわかった。
目を凝らすと、いるいる、鹿が。バンビみたいに跳ねるように雪の中を駆けていく。振り向きざまに何度も目が合った(ような気がした)。


車窓から鹿(結構な頻度で見かける)


なるほど、警笛が鳴ったら外をよく見れば鹿がいるんだな、と気づく。そしてまた長い警笛。その直後急ブレーキがかかった。
 
運転手が戻ってきたのは10分後。
どうなって、どうしたのかものすごく気になるが何しろ車内は空席が無く、ひとたび立ち上がれば自席は座られてしまう。
 
「列車遅れまして大変申し訳ございません」
と言って走り始めたが、列車とぶつかって無事な鹿はいないだろう。そういうことなんだな。ワンマン運行のため、運転業務以外も全て1人でこなす。そうか、これも「通常業務」なのだと理解。
 
その「10分間」の後は、警笛のたびに「轢かれるなよ、早く逃げろよ」と思わないではいられなかった。

釧路を出て2時間近く、カラオケの映像に出てきそうな1両の「雪列車」は荒野を走る。
 
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20221205/7000053090.html
シカ衝突事故防止でJR花咲線・釧網線が夜間に一部減速運転(2022年12月5日NHK)
  

極寒の街のにおい

「軍団」は、途中塘路駅で降りていった。釧路から30分(鹿の10分を加えれば40分)と意外と早めの下車だったのでそこからは「静かなローカル線」となった。この日の目的地、知床斜里駅には10分遅れの16時40分頃に到着。氷点下8度はじゅうぶん寒いのに、暮れかかった空と風で体感はマイナス2桁。
 

知床斜里駅はおしゃれな外観


外から見た駅舎はかなりこじゃれていた。小さなロータリー内に「ルートイン」が建っている。駅前ホテルに予約しておいてよかった・・・。転ばない程度の小走りで突進、ロビーに駆けこむ。安堵の温度。うれしい。即チェックイン。
 
それはいいが、さて晩飯をどうするか。この寒空に長時間さまようのはゴメンだ。目の前に北海道のコンビニ、セイコーマートがある。だがせっかくだ。何か探したい。もちろん「居酒屋」だ。地域応援クーポンも入手済み。(このへんがどうも貧乏根性でいけない)
 
グーグル&食べログによれば、ある。寒がりとしては目の前のセイコーマートで済ますのが常道だが、飲んべ心がググっと持ち上がり、雪中行軍開始。(アホだね)


知床斜里の夜は零下10度を下回る

極寒を歩いていてふと気づいたことがある。
なんだろう、この匂いは。
飲食店のそれではない。このミリミリと脳に差し込む寒さの中で感じるこの匂い。

そうだ。北国特有のものではないだろうか。妻のホームタウン、ハルピンでもこんな感じだったような・・・。
じゃあ、ハルピンと共通するこのにおいの正体はなんだろう。

凛とした、などという言葉で片づけられない酷寒、側溝から立ち上る湯気、車が巻き上げる粉塵、たとえ晴れていても舞って呼吸器に容赦なく侵入する雪片、たれる鼻水。それだけではないだろう。耳を鳴らす風切り音、凍るまつげ、痛む顔面、外気温に近いほど凍えた指先・・・こういうのがない交ぜになることで感じる匂いなのだろうか。
 
寒さは相当きつかったが、零下30度近くなるハルピンよりは良いのかもしれない。歩いて少々のところに居酒屋を無事見つけ、北海道の「北の勝」「福司」をいただく。満足。
 
 

翌朝の駅舎と斜里岳

流氷見たり


学生の頃、冬の定山渓に向かっていたバスが停留所でもない場所で止まり、キツネがステップまで上がってきたのには驚いた。もちろんすぐに降ろしたのだが、きっとバス運転手の乗客へのサービスだったのだろう。今思えばのどかな光景だった。

今回は鹿以外にタンチョウヅルの美しい姿が、と言いたいところだが、さすがに車窓からは見ることはできなかった。
 
そうそう、本命は流氷なのだ。
直接的なきっかけは、年末に見たテレビ番組だった。加えてそう遠くない将来流氷が接岸しなくなるのではと思ったこと、見に行くのを先送りにすればするほど、自分の気力体力が萎えるだろうと思ったことも大きい。
 
2日目は、知床斜里から網走へ向かう列車から流氷を見ようというわけだ。駅を出ると割とすぐにオホーツク海沿岸に出る。神奈川県藤沢市の江ノ電が腰越駅から鎌倉高校前に向かう途中で相模湾に出くわすが、スケール感は釧網線に軍配。


黒っぽく見えるが氷

 
普通列車で行くつもりが、2月26日までは「流氷物語号」という臨時列車があるという。普通料金で乗れるのだが、530円の指定席料金を払えば窓側に座れる。途中浜小清水駅で20分停車して駅に隣接した「道の駅」で休憩、買い物ができ、じかに海側を見ることもできる。
 
昨日のような「軍団」がいないとも限らないし、メインイベントでもある「窓から流氷」を見逃すわけにはいかない。費用対効果は問題なかろうと判断、購入(ここは大人買い)。

だが軍団は現れなかったし、冬の平日火曜日とあって全員ゆうゆうと座れたのだった。但し、わずかな数の窓側指定席はやはり完売。買ってよかった。(オホーツク海と反対側席には空席があったという意味です)
 
さてガッと海風景が広がったところでびっくり。白い白い。氷の塊がハッキリ見える。来た甲斐あるというもの。


後方の白い塊が全部きたらホントの「接岸」

最初は強風の際に見える白波が立っているのかと思ったが、海は氷だらけだ。列車内の網走観光ボランティアの方の解説によれば、「完全な接岸」ではないという。沖に見える「ホントの塊」がさらに押し寄せるとのことだが、じゅうぶん、じゅうぶん。(黒く見えるところも氷)

約1時間の乗車時間のほどんどで沿岸を走るため満喫できる。途中駅で20分停車してくれるため、海側に向かってみると、「ガゴっ、ゴゴっ」と氷のぶつかり合う音が聞こえた(ような気がした)。オホーツクの荒々しい巨大な塊は、冷たいはずなのに激しい「熱量」を感じる。 

列車内で網走観光ボランティアが釧網線沿線の魅力を解説してくれる。流氷や網走はもちろん、沿線の動植物から監獄や、囚人による道路建設まで飽きさせない。だからと言って話し続けているわけでもなく、適度な間に好感が持てる。 

流氷観光はこっちが王道


網走駅には予定通り12時30分に到着。到着直前に車内から宿泊するホテルが見え、方向感覚をつかむ。まずは昼飯だ。

駅を出て歩き始めたが牛丼チェーンしかなかったため、すぐに戻った。(本当はもっといろいろあったのかもしれない)駅舎内の喫茶店でナポリタンというわけにもいかないので、鮭とイクラの親子丼を注文。若干肩透かしを食らったが、気を取り直して散策開始。

ラーメンを食べたわけではありません


チェックインまで2時間はある。ここも歩いた歩いた。4.9キロとある。 雨さえ降っていなければ難なく歩ける距離でも極寒、雪降るなかの行軍は体力を消耗する。

駅から道の駅「流氷街道網走」までトボトボ歩く道すがら、人は数えるほどしかすれ違うことは無かったのだが、この道の駅に入った途端、おいおい、どうした?この一大集団、行列、人いきれ。

そこは「流氷観光砕氷船オーロラ」乗り場だった。 流氷観光と言えばこれが王道だ。そりゃそうだ。面倒な列車を乗り継いでくるより、大型バスでどーんと着いて船に直行。船に当たる氷の音もここでは本当に聞こえる(だろう)。 


かなりの吹雪の中出航・いってらっしゃーい

果たしてひねくれ者は砕氷船には乗らず、寒い中を乗船して甲板に立つ人々を見送り(この時かなりの吹雪)、ひと休みしてからその日のホテルに向かって再び歩き始めた。(寒さ嫌いの大いなる矛盾)

街中に堆積した雪は、新たに積もった箇所以外はお世辞にもきれいとは言えない。ちりやほこり、削られた道路の砂などが表面を覆う。車にこびりついた雪(というか氷)など目も当てられない。ハルピンもそうだったな、と思い出す。 


網走川もがっちり凍って・・・

さて、宿に到着、全国旅行支援のおかげもあって朝食付きで5000円台はまあいいじゃない?このほかに2000円地域応援クーポンも取得。ここでも夕食時にしっかり使って北海道経済に微々たる貢献をしてきた。(そういえばふるさと納税もしたっけ・・・) 

ひとりのんびり、満足度の高い行程でした!(とにかく寒かったけれど)
以下は写真のみ。



ホームどこだよ・・・
記念撮影用のフレームを持つ車掌さん、そりゃ寒かろう
知床斜里~網走間を走る「流氷物語号」
これは釧路市内の書店で購入(まあ記念品ですね)








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