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あの頃の僕へ。

あの頃の僕へ。

そう題した三谷幸喜さん執筆のサントリー広告が成人の日の新聞各紙に出ていた。
そもそも、紙の新聞を開いて読む若者は少ないだろうし、自分もたまたま図書館で見かけたから遭遇できた。

この欄は長年、伊集院静さんが新成人へ向けてメッセージを書いていた。「大人の流儀」を説いていた。

三谷さんは、「あの頃の僕へ。」として、伊集院さんとは異なるスタイルで60代の自分から、当時の自分へメッセージを送る形とった。

「六十代になって思うのは、自分という人間がびっくりするほど未完成だということ。思っていた六十代とは全く違う。この段階で完成していないということは、一体いつ完成するのだろうか。さすがに最近、心配になってきました」

サントリー広告より

どんな六十代を想像していたのだろう。
自分は小学生の頃、成人(二十歳)の自分があまりに想像できなくて恐怖に近い不安に駆られたことがある。一体その頃まで、生きているんだろうかと。

今思うと、考えても分からないこと、考える必要などなかったことに、なぜ怯えていたのか滑稽だ。だがその当時はそう悩んでしまったのだから仕方がない。将来など、見えないから皆、生活していられる。

ある作家の、「昔のことを思い出してばかりいると、後ろ向きだという人もいるが、どんどん振り返っていい。シニアなど前ばかり見ていると、死ぬことしか見えない」という旨のエッセイを読んだことがある。

あはは。確かに、誰でもいつか引き返すことのできない崖っぷちに必ず遭遇するのだから、一生懸命前進していく必要もないし、ゆっくり行けばいい。

「六十代までに財布を三回落とします。五十代の初め、愛犬の散歩をしている最中に木にぶつかって、おでこから出血するので気をつけるように」

同上

と結ばれているメッセージは、すでに続編を連想させる。早くも来年の「あの頃の僕へ。」を読んでみたい。


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