自分が元気じゃないと、優しくできない
「押すなよ口で言えよ!」と、電車の中で喧嘩が勃発しそうな場面に居合わせた。勝川駅で大きなスーツケース2個と、スーツケースと同じくらい大きなバックパックを背中に担いだ初老の男性が乗ってきた。スーツケースは重そうで、片手で持ち上げるのが難しくふらふらしながらなんとか乗車した感じだ。こんなとき、普段なら反射的に手を差し伸べるのだろうが、今日は昨日食べた焼肉のせいでお腹が痛いのと、下痢による脱水が合わさって、私はこのまま熱中症で死ぬかも知れないと本気でヤバい体調だったので、手を差し伸べたら共倒れする可能性が高く、何もできずに混み合う車内でドア横の手すりにギリギリ持たれて立っていることしかできなかった。車内のトラブルは、この荷物たっぷりのおじいさんと背が低いクールビズの若手サラリーマン風の男性の間で起こった。混んでいる車内ではバックパックをおろして前にかけたりするなど、他の乗客に配慮したいものだが、おじいさんのバックパックはクールビズの左肩にぶつかりまくっていた。クールビズはあからさまに嫌な顔をしていたが、「カバンやめてよ」と言うことはなく、代わりに肩でバックパックを押し返した。「押すなよ口で言えよ!」が発せられた瞬間、車内に緊張が走る。このおじいさん言うんだ。言うタイプだ。クールビズは驚いて「ずっと当たってんだよ!」と言った。この若者も言うタイプだった。こういうの見たことある、スマホで動画撮ってるひといるかもと見渡したがいなかった。それくらい、撮るか取るまいか決められないくらいの小さな戦いだ。「バックパックが肩にぶつかって、肩で小突き返して、ぶつかっちゃったかなちょっと離れよう、みんなハッピー」、これがクールビズや乗客が思い描いたシナリオだろう。でも違った。おじいさんが好戦的タイプだったとは想定外だった。
私が元気だったなら、スーツケースを車内に持ち上げるところから、手伝っている姿を乗客に見せることができたら、背中のバッグデカいですね、一回おろしましょうか、私スーツケース押さえておくので、と危険を回避できていたはずなのに、昨日の焼肉のせいで、私が体調不良なばっかりに、トラブルをひとつ、防ぐことができなかった、なんと不甲斐ない、もう焼肉を食べるのはやめよう。
今日も、最後まで読んでいただきありがとうございます。人のために仕事するなら、まずは自分が幸せで元気じゃなきゃいけません。