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『夜からの手紙』 467字


「今まで有難う」

夜からの手紙の書き出しはこうだった。

(何を唐突に・・・相変わらずだなあ・・・)

とはいえ、夜とはもうずいぶん長い付き合いではあるが、少し胸がざわつく文言ではある。

読み進んでみると、なんのことはない、
いつもの卑近な内容である。

やれやれと安堵の息を吐くのを見て、怪訝そうに娘が私を見上げる。

言い忘れたが、お察しの通り、夜と私は夫婦なのだ。

と言ってもお互いに実際に会ったことはない。

「え?子供がいるじゃないか?」って?

君たちには不思議であろうが、我々のようなものにとっては別に珍しいことではない。
会わずともお互いに想い合うことで情を通じあい、子を儲けることもできるのだ。

「私も息子も貴方たちを心から愛しています。これからも末永くよろしくね」
夜の手紙はこう結ばれていた。

「お母様は何て?」
「ああ、お前を愛しているってさ」
「まあ・・・何かと思えば改まって・・・」
そう言いながらも娘は嬉しそうだ。

私は「昼」。妻の名は「夜」。
息子の名は「夕暮れ」。
双子の娘の名は「夜明け」。

互いに会うことはないが、
掛け替えのない、愛おしい家族である。


<了>
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