クロスバイクのボトムブラケット(BB)を交換する
先日来所有するクロスバイク(GIANT ESCAPE R3)のノンドライブ側(チェーンがかかっている右側ではなく、反対の左側)のクランクを止めているボルトが緩んでくるという現象が出ていて困っていました。可能性のあるトラブルとしては、クランク、クランク固定ボルト、ボトムブラケット(BB:ペダルを漕ぐときにクランクの回転中心となるところ)のどれか。新車購入から5~6年経過しているため、ここは思い切って全部交換することにしました。
まずはBB交換から手を付けるということで、その時の写真に解説を加えてクロスバイクのBB交換手順を紹介します。
BB交換に必要な工具一式
BBには様々な規格があり、それぞれに応じて必要な工具が異なります。今回のターゲットは一般的に「スクエア・テーパード」と呼ばれるタイプ。とはいえ、クランクが付いた状態だと、どういうBBがマウントされているのか普通分かりません。このあと説明する手順で一旦クランクを外してみると、どのようなBBが使われているかわかります。
ちょっと見難いですが、クランクボルトをレンチで外してみると四角い軸が刺さっているのが見えますので、スクエア・テーパードタイプだとわかります。
このタイプのBBを付け外しするのに必要な工具は以下のとおり。
左上から
・(なるべく長い)眼鏡レンチ 径はBBレンチの径に合わせます。今回は24mm
・BBツール amazonで1000円くらいから
・トルクレンチ 普通の六角レンチでも可。クランクボルトの径に合わせます。今回は8mm。
・スパナ コッタレスクランク抜きの径に合わせます。今回はペダル外しにも使う薄型スパナの16mm
・コッタレスクランク抜き amazonで1000円弱から
道具がそろったら早速分解していきます。
※※ 注意! ※※
何台かBB交換を行っていたのですが、最近注意が必要なBBに当たったので、捕捉します。
写真の様にBB下のケーブルガイドがボルトで固定されているタイプをバラす際には、真っ先にこのボルトを抜ける寸前まで緩めてからBB交換の手順を踏んでください。一旦抜いてしまってから、無くさない程度に軽く締めてもOK。写真に残し忘れたのですが、どういうわけかこのボルトに結構長いものが使われているケースがあって、ボルトがカートリッジBBに突き刺さる、押し上げているような感じになってました。そのまま無理やりBBを外そうとすると、異様に硬かったり、BBに傷が行ってしまったりしますし、ネジ切り山を崩してしまうことにもつながります。本当にご注意ください。
クランクを外す
クランクを外す作業は、スタンドなどを使い自転車を立てた状態で行うのをお勧めします。クランクの回転軸部にあるボルトを六角レンチで緩めていきます。このボルトは、ドライブ側、ノンドライブ側いずれも正ネジですので、普通に反時計回りで緩めることができます。
抜けました。いまこの状態は、「BBの回転軸がクランクにガッチリ刺さっている状態」です。「テーパード」の名が示す通りBBの軸は先細りになっているのでクランクに深く、強く圧着することで固定されています。これを力だけで引っこ抜くのは至難の業ですし、逆に引っこ抜けたらそれはそれでかみ合わせが悪い状態なので良くないです。
ここで「コッタレスクランク抜き」の出番です。
コッタレスクランク抜きは、写真のような構造をしています。複雑に見えますが、「ねじ切りされた太目の胴体(指でつまんでいる部分)の中に細めのボルトがねじ込まれた状態」と考えればシンプルです。使う前に細めのボルトの方を緩め、下の写真の様に頭が出ている状態にしておきます。
先ほどクランクボルトを抜いたところに、コッタレスクランク抜きの胴体部分をねじ込みます。これも正ネジなので時計回りで。これは手で十分で、強いトルクをかける必要はありません。
こんな感じ。次に細めのネジの頭にレンチをかけ、締めこんでいきます。(正ネジなので時計回り)
BBの軸とクランクの圧着を外すので存外力が要ります。コッタレスクランク抜きの胴体にすべてねじ込まれるまでは回せるはずですので頑張ります。途中からクランクが浮いてくるのがわかると思います。
最後まで締め込めば、クランクを手で抜ける程度まで緩んでいるはずです。もしそれでもまだ抜けないようなら、コッタレスクランク抜きの胴体の方をレンチで絞め込んでみます。それでもだめなら、、フレームとクランクの間に何か挟んでテコの原理で外すしかないでしょう。
次にドライブ側のクランク(+チェーンリング)を外します。要領は反対側と全く一緒です。この作業では、チェーンを切る(ミッシングリンクを外す)必要はありません。クランク抜く直前までチェーンをリングに引っかけたままで、クランクを抜くときにリングから外し、フロントディレーラーにひっかけておくというイメージです。
これで両側のクランクを外した状態になりました。次に露出したBBを外していきますが、その前に毛足長め、硬めのブラシを使ってBBの露出部分の汚れや異物を掻き出しておきます。ポイントは円周状のギザギザの凹み部分。BBツールを当ててみて、変に斜めになったりしないか、よく確認しておきます。
BB外し
ここからの作業は自転車を倒して実施することを強く推奨します。BBツールを使う際に、滑らない様にグッと押し付ける必要があるからです。まずノンドライブ側(左側)から外します。
写真の様にBBツールをBBの溝に合わせて嵌め、眼鏡レンチをかけて反時計回りに緩めていきます。BBは水が溜まりやすい部位ですし、金属と金属の接点が広いパーツなので固着していることが多い様です。ですので、BBツールの頭を片手でグッと押さえながら、なるべく力がかかる角度でレンチを回すようにしましょう。
どうしても回らない場合、フレームとBBの間(赤矢印のとこ)に潤滑油を吹きしばらく置いてから再チャレンジしてみてください。また眼鏡レンチが長ければ長いほど力がかかりやすくなるのでホームセンターとかで長めのヤツを探してみてください。長さを活かす方法としてフレームのシートチューブやダウンチューブ、チェーンステーとほぼ同じ角度でレンチをかけ、フレームとレンチを一緒に握り込む、もしくはどちらかを握りテコの原理で親指で押し広げる様に使うと力がかかります。今回使ったレンチの様にオフセットのついたものであれば、上の写真の状態からレンチを裏返して、レンチとフレームの距離を近づけたほうがより力がかかります。
ちゃんと回せればこんな感じでパーツ(左ワン)が外せます。
次にドライブ側(右側)を外します。こちらは先に外した左ワンよりも更に固着しやすいようです。外れない場合は赤矢印部円周部に注油してから再挑戦しましょう。また、この自転車ではBBシェルの幅が68mmのISO/JIS規格なので、右ワンは逆ネジになってます。BBを緩めるためには時計回りに回す必要があります。ご注意ください。
完全に緩めるとずぼぼっとBB本体をBBシェルから抜き出すことが出来ます。ここまでやって初めて取り付けられているBBの型番をしっかりと確認することが出来ます。
嵌っていたのはVPというメーカーのBC-73 シェル幅68mm 軸長110.5mmのものでした。せっかく交換するのでここはSHIMANO製にしておくかということでこのタイプの定番 BB-UN55 を店頭在庫で確保してもらいました。ただSHIMANOには軸長110.5mmは存在しないので、.5mm短い110mmをチョイス。
BB取付け
まずフレーム側のBBシェル内部をきれいに掃除します。今回は意外と綺麗だったため、劣化したグリスをふき取るだけでした。錆びの様子もなかったので一安心です。
取付の準備の為、BBシェル内側にグリスを塗ります。ここではおなじみ万能デュラグリスを使ってます。スレッド(ねじ切り部)に満遍なくいきわたる程度にしっかりと塗布します。
同様に新しいBBのスレッド部もグリスアップします。このとき写真の様に後から左ワンが嵌る部分にも忘れずに塗っておきましょう。
外した時と逆でドライブ側からBBツールを使ってねじ込んでいきます。ドライブ側は逆ネジなので反時計回りに。このとき、例の長い眼鏡レンチを使ってぐいぐい行くと、とんでもないトルクになってしまうので、ほどほどにしておいてください。もしくは閉めるときは短めのレンチを使うか。
同様に左ワンを入れていきます。左ワンはその内側と外側のねじ切り部の両方にグリスを塗ってください。(もちろんフレーム側BBシェルの内側も)左ワンは正ネジなので時計回りにねじ込みます。
BB-UN55には左ワンにもねじ切られていない余白の様な部分があります。なのでしっかり絞め込んだとしても、この余白部分がフレームからはみ出すことになります。VPのBBや、同じSHIMANOでも後継のUN300になるとこの余白部分がありませんので、ノンドライブ側はBBがシェルからはみ出ません。この違いにご注意ください。
クランクの取り付け
最初に外したクランクを取り付けていきます。ここからは再び自転車を立てて作業します。順番は左右どちらからでも構いません。今回はドライブ側から。
ドライブ側のクランクにはチェーンリングがついていますので、ブラんとしたチェーンをリングに引っかけながら軸に差していきます。クランクの四角い穴と、BBの四角い軸が嵌るように。
外す時はコッタレスクランク外しを使いましたが、付けるときはクランク固定ボルトを締め付けるだけです。
ドライブ側を締め付けたら、逆のノンドライブ側のクランクも取り付けます。この時ドライブ側のクランクと、180度ズレた位置に固定するということをお忘れなく。
これでメンテナンス完了です。
乗り出してから何度かクランク固定ボルトの増し締めをしておきましょう。
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