【ショートショート】『クリスマスカラス 2』 #親切な暗殺
前編はこちら。
いつものように合鍵を取り出し君のマンションのドアを開ける。目の前に現れたのは知らない男だった。そして僕に『きえろ』と言った。
そいつのすぐ後ろに急いで纏ったらしい毛布から素足を晒してつっ立っている君がいた。
◆
あれからずっと、うなだれて生きてきた。
ギザギザになってしまった感情線。それを見ているうちに何かのスイッチが入った気がした。
急いで部屋を飛び出した。赤や緑のランプが点滅する浮かれた通りを駅まで走った。
雪が薄っすら積もっていたが、雪国育ちの僕にとってはなんでもないことだ。
ホームへの階段を駆け上がると同時に上り電車が発車した。
通過する車両の窓に目を凝らして全身真っ黒ないでたちの君の影を探すが見当たらない。
でも僕は知っているんだ。ホームの最後尾の乗車位置の前。いつもそこに佇む君の影を地面から引き剥がすのが僕の役目だったんだから。
雪がちらつくホームを急ぐ。
やっぱりそこに君はいた。凍り付いて引き剥がすのは容易ではなさそうだ。
「おいでよ」
道端の子猫を招きいれるように手を伸ばした。いきなり爪を立てられたってかまわなかった。
ダウンジャケットの前を開く。
「寒いから入んなよ」
走った後の汗がやけに冷たかった。
君は勢いよくしがみついてくるとそのまま押し続けた。ホームの端まで進み、後がなくなった僕らは抱き合ったまま線路上に浮遊した。
視界の端に向かってくる通過電車のヘッドライトが見えた。
◆
とある機関が研究中の”親切な暗殺”と呼ばれるプロジェクトがあると聞く。標的本人そして実行者にさえ、それが危険人物除去のため意図されたものであると気づかれないようにする研究なんだとか。
(670文字)
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以上、こちらからお題をいただきました。
前のお話からの続きです。わかり難くてすみません。
久しぶりに参加させていただきます。よろしくお願いします。
ちょっと文字数オーバーしてしまいました。