【ショートショート】『惑星からのくノ一 χ』
女房のカイが突然姿を消してから丁度、四十九日。その娘は突然現れた。村外れの地蔵の前にぽつんと突っ立っていた。
歳の頃なら五つか六つ。畑仕事の帰り、おいらが声をかけるとこちらを見てにこりとした。驚いたなんてもんじゃねえ。カイに生き写しだった。
「いったいどっからきた?」
娘はただにこりとするだけ。
妙なのは、いつも日の入り直後の西の空を一時黙って眺めて動かないことだ。カイもそうだった。
娘の成長は早かった。一月が一年と同じかという早さでどんどん大人になっていく。言葉は教わるというより聞くやいなや身に取り込んでいるようだ。
あくる年にはカイそのものになっていた。
「お前そっくりの女がいた。おいらの女房だった」
「私もカイ。前のカイは寿命が尽きた。
同じ役目をもった者は同じ卵から生まれる」
「役目?」
「ここの支配者を探ること。
城にいるお前様の影武者はもう始末した」
空一面、大皿の群れが舞っていた。
「くそっ、謀られたか」
(410文字)
* * *
以上、こちらからお題をいただきました。
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