【ショートショート】『塩の女王』
海砂糖の利権をめぐって争いの絶えない村だった。
海砂糖は海水から造られる。古くから秘伝によって塩人だけが造ることができる砂糖だ。皆を虜にする奥ゆかしい甘さが評判を呼んでいる。
しかし今では、袖の下を使ってお上に取り入った悪の塩人が幅を利かせ、汗を流して作業する一般の塩人から搾取の限りをつくしていた。
その日の宿にした旅籠の娘は、はたから見ても器量良しだった。娘の言うことには悪塩人の嫌がらせでこの旅籠も店じまいの危機にあるらしい。
その夜にも悪塩人とその手下は現れた。
「娘を差し出せ。そうすれば旅籠は安泰、たんまり金だってやるぜ。へっへっへっ」
「帰れ! 帰ってくれ。」
旅籠の親父は気丈に振舞っていたが、とうとう手下どもが暴れだした。
「早く娘を差し出さんと、こうだ」
親父が蹴られて転がるのを見て黙っているわけにはいかなくなった。とうとう自分の身分を明かす時がきたのだ。
「ええい、しずまれ!しずまれ!」
「この紋所が目に入らぬか」
「おおお」
「ははあ~~!」
それは、塩対応の女王『ぱるる』こと島崎遥香様からのお墨付きだった。
自分こそが塩人中の塩人なのだった。
悪塩人は転がるように逃げていった。
めでたしめでたし。
(510文字)
* * *
以上、こちらと
こちらからお題をいただきました。
ぱるるさまごめんなさい。ずっとファンです。
こんな、悪魔のささやきに負けてしまった。
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