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ニューヨーク州司法試験(2022年7月)のざっくりした感想

7月に受けたニューヨーク州司法試験(NY Bar)に無事合格しましたので、記憶が朧げになりつつありますが、せっかくなので感想を記録として残しておこう思います。写真は試験後に観光で訪れたナイアガラの滝です。最も大きい試験会場がニューヨーク州のバッファローにあるため、試験後にナイアガラの滝観光を行うのが鉄板となってます。

試験概要と勉強方法

まず、ざっくりと試験の概要ですが、MBE、MEE、MPTという3種類の試験を受ける必要があります。MBEは択一試験、MEEは論文試験、MPTは論文試験ではあるものの知識を問われず、仮想の法律と事実をもとに実務的な書面を書き上げる試験です。

試験は7月26日と7月27日の二日間に渡り実施されました。ロースクールの卒業式の関係で色々とバタバタしながらちょうど試験の2ヶ月前の5月26日から本格的に勉強を始めました。ロースクール在学中から勉強している方もいましたが、私はロースクールでの予習、復習、修論で限界を迎えていたので、後述する日本人ノートをざっくりパラパラ眺めたこと以外にNY barのための勉強はほとんどしなかったです。

勉強時間はToggle Trackという時間管理アプリを使って記録をとっていたのですが、確認したところ合計317時間43分でした。しばしば測り忘れてたこともあったのですが、最大で350時間くらいの勉強時間だと思います。よく指標となる択一の問題の解いた数ですが、barbriの問題集全てとエマニュエルで大体1500問くらいだったと思います。400点満点中266点以上で合格ですが、私は287点でした。受かればいいんです。

勉強方法ですが、barbriという大手予備校のプログラムに従って勉強をしていました。

barbriのプラットフォームで、毎日その日に受ける必要がある講義と練習問題をわかりやすく指示してくれるので、ペースメーカーとして大変助かりました。いわゆる日本人ノートという日英併記で各科目をまとめて解説した資料があれば、講義を受ける必要はないという意見も結構聞いたのですが、日本人ノートを一読したところさっぱり頭に入ってこなかったので、講義も全て受けるようにしました。ただ、講義を一通り受けて、barbriの択一の練習問題をそれなりに解いた後に日本人ノートを再読したら、かなりわかりやすくまとまっていることに気づいたので、それ以降は日本人ノートを読むようにしました。
barbriをこなすのでいっぱいいっぱいだったので、よく体験記で目にしていた流行りのAdaptiBarは使用しませんでした。
ということで自分流の勉強方法みたいなのは確立せずに、何も考えずにbarbriを信じきって勉強しました。barbriの問題集以外にいわゆるエマニュエルという択一試験の過去問集は解きました。

https://www.amazon.com/Strategies-Tactics-MBE-Bar-Review/dp/1543805728

あとはSmartBarPrepという各試験科目の重要な論点をコンパクトにまとめた資料を復習用に使用していました。また、JD Advisingというサービスが、試験直前に論文式試験で出題されるであろう問題(論文式試験では15科目からランダムで6科目が出題される形式なので、勉強したのに試験で全く出題されない科目が発生します!)。の予想をしてくれるのですが、今年は予想が外れすぎて、試験終了後阿鼻叫喚の嵐でした。勉強時間が全く足りていなかった私もJD Advisingを信じて、出題可能性が低いとされたCorporation、 Contracts、Trustsはほとんど勉強しなかったのですが、6科目中まさかのこの3科目が出題され、絶望しました。

感想

思ったよりしんどい試験でした。LLMという留学生が1年間ロースクールで学ぶコースでは主に実務的、発展的な科目を学ぶ方が多く、ニューヨーク州司法試験で出題される科目の授業をロースクールで受けるわけではないので、大変の科目をロースクール卒業後に初めて学ぶことになります。15科目という大量の科目を2ヶ月という極めて短い期間で勉強する必要があり、試験まで勉強のタスクに追われる日々で精神的に辛かったです。完全に自分の責任ですが、ロースクール在学中に少しでも勉強を始めていればと何度も後悔しました。結果的に合格しましたが、精神衛生上勉強開始時期は早ければ早い程いいと思います。

難易度について色々議論がありますが、個人的にはとても難しい試験だと思います。350時間くらいの勉強時間で合格しているので、客観的に必要な勉強時間は短く見えますが、これはもともと日本で司法試験に合格しており、法律の体系的な考え方がわかっているからこそ、勉強時間を短縮できたからにすぎないと思っています。例えば、日本の憲法や刑事訴訟法は、アメリカの憲法、刑事訴訟法がベースになっているところが多々あり、また、民法、民事訴訟法、刑法等ベースとなる考え方はアメリカでも基本的に変わりません。したがって、日本の法律の体系に従って、アメリカの制度を相対化しながら学ぶことで、効率的に勉強ができました。日本でしっかりと法律の勉強をしていない方がニューヨーク州司法試験を合格するレベルまで持っていくためには、350時間の勉強時間では絶対に足りず、ニューヨーク州司法試験対策のために必要だった勉強時間の長さは難易度を図る上であまり参考にはならないと思います。

日本人はニューヨーク州司法試験に合格する確率が極めて高いので簡単なのでは?という意見もありますが、これはニューヨーク州司法試験を受けている日本人の方は試験を突破する能力がダントツに高い方ばかり(東大、京大、慶應等の日本のトップロースクールを上位の成績で卒業したという人たちが大半を占めています。)であり、日本人の合格率から客観的な難易度を図ることもナンセンスでしょう。

何よりも当然ながら試験は英語なわけで、特に論文の試験が大変でした。論文試験の問題1問につき、A4くらいの紙1-2ページにわたってびっしり書かれた仮想の事例を読み解き、自分の記憶している解決に導くルールを説明し、事例に当てはめて結論を導くという作業を、30分以内で行う必要があります。非ネイティブで大体350-500words(ネイティブは800wordsくらい書くらしいですが、私にはどうしても不可能なので諦めました。)の答案を3時間で合計6通書くという作業を行う必要があり、思い出しただけでも胃が痛くなってきました。また、日本の司法試験では六法を参照することができるので、全くわからない問題が出たとしても、とりあえず六法を引いて何か手がかりを探すということができるのですが、ニューヨーク州司法試験では、六法は存在せず、自分の記憶に頼るしかないので、試験直前期はひたすらルールを暗記し続けることになります。ただ、採点基準がよくわからないのですが、あまり厳密にルールを書かなくても点数はつくようです。というのも、Corporation、Contracts、Trustsとほとんど勉強していない科目の論文試験で、よくわからない論点(特にRule Against Perpetuities!)を朧げな記憶から引っ張ってきた重要そうなキーワードを並べて雰囲気でルールをでっち上げて答案を書いても、論文の点数は合格水準のものでしたので、法律論文っぽい雰囲気を出しつつ事実の評価を行っていれば、それなりに評価されるようです。これは日本の司法試験で必要となるスキルで、そのままアメリカでも流用できたのは助かりました。

というわけでニューヨーク州司法試験は決して簡単な試験ではありません。極めて優秀な知り合いが落ちていたり、イェール、ハーバード、スタンフォードなどの超一流ロースクールの卒業生の合格率も100%ではなく、合格率を過信して油断すると普通に落ちる試験だと思います。

その他

  • 知り合いで試験前々日に飛行機でバッファローに行こうとしたところ、当日フライトがキャンセルになるという事件を結構聞きましたので、バッファローで受験する方は交通事情に気をつけて、念の為早めにバッファロー入りするのが無難です。

  • 宿泊先は、試験会場と隣接しているHyatt Regency Buffalo / Hotel And Conference Centerがおすすめです。試験終了後ホテルフロントで試験お疲れワインを無料で配ってました。https://www.hyatt.com/en-US/hotel/new-york/hyatt-regency-buffalo-hotel-and-conference-center/buffa

  • 試験後のバッファローウイングが本当に美味しかったです。

  • 小室さん本当におめでとうございます!



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