TSMCは発ガン性物質を多用
半導体製造プロセスにおいて、膨大な種類と量のCMR物質を使用している。
CMR物質は慢性的な発ガン性、変異原性、及び生殖毒性があり、健康に非常に深刻な影響を与える物質のことである。
発ガン性物質とはガンを誘発し、発生率を高める物質または混合物のことであり、変異原性物質はDNAの損傷、染色体異常のような遺伝毒性のうち、娘細胞(細胞分裂後に生じる細胞)や次世代の個体に変化が伝わる毒性のある物質である。
そして、生殖毒性とは、男女の性機能及び生殖機能に悪影響を及ぼしたり、子孫に発生・成長への影響を与える毒性を発現させたり、授乳を介して子に影響を与えたりする物質のことである。
具体的には、ガン、不妊、流産、奇形胎児、発育不全の原因となる物質の総称である。
2020年の企業社会責任レポート(CSR)によると、TSMCの製造現場で使用される物質の化学分析を行ったところ、178のCMR物質の使用が認められたという。
台湾の既存の半導体企業が申告したデータによると、工場から排出、及び放流された危険物質は、発がん性物質が25種、非発ガン物質が53種と申告され、評価対象となっている。つまり、TSMCのCMR物質の使用は他企業と比較しても多い。
TSMCのこのデータは、回路線幅が3nm のチップの製造のものであるが、熊本のJASMで製造される10-20nm 台のチップ、さらには第二工場で生産予定の5-10nm 半導体や、その他の拡張計画がある場合はその都度、使用されるCMR物質の化学解析もしっかりと行い公表されるべきだろう。
ただ、日本の場合、恐ろしいことに、たとえCMR物質が開示されたとしても法の整備が不十分であり、規制が難しい。
CMR物質は、化審法(化学物質の審査及び規制に関する法律)によって規制されているが、新規輸入・製造の際に届出されたものに対する審査のみであり、実際に工場からどれだけのCMR物質が排出されているのかは、調査されない。
https://esg.tsmc.com/download/file/2020-csr-report/english/pdf/e-all.pdf