【開催報告】Can you celebrate?~「反婚」「非婚」を考える~(2021/10/27)
「結婚」と聞いてどんなことを考えるでしょうか?
幸せ、笑顔、愛、永遠、、、そんなイメージでしょうか?あるいはもう少しドライに契約、行政お買い得パックといったイメージでしょうか?
「同性婚」が選挙の争点にもなる中、今、改めて「結婚」とは何なのかを考え、そして「反婚」「非婚」という考え方・取り組みを知ることで見えてくる地平を参加者のみなさんと考えるイベントを企画しました!今日は、10月27日に開催されたイベント「Can you celebrate?~「反婚」「非婚」を考える」の開催報告をお届けします。
二つの「同性婚」判決から考える「結婚」
2015年にアメリカ合衆国最高裁が同性婚を認めないことは憲法違反であると判断した判決と今年、札幌地裁が同じく同性婚を認めないことは憲法違反であると判断した判決の二つを見比べました。どちらもその国の歴史に残る画期的な判決です!
アメリカ合衆国最高裁の判決では、結婚とは「二人の他に類を見ない結びつき」「子どもを育てる」「国家社会秩序の基礎」といった側面からその重要性が語られています。また、札幌地裁の判決では婚姻の本質として「両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにある」と言及されていることを確認しました。
で、結婚ってなんだろう?
判決を参考にしつつ、参加者みんなで「結婚ってなんだろう?」と考えてみました。
法律ってもうちょっとドライに「行政お買い得パック」くらいに考えていると思っていたのに、「精神的身体的結合」とかエモい感じで来てぶっちゃけビビった...という感想が出たのを皮切りに、結婚の「エモみ」について盛り上がりました。
「人間関係は恋愛⇒結婚だけではないのに、結婚制度があるとそれさえすれば『安定』すると思ってしまう。そういう社会の中で少し先の未来を確信したいがために結婚したくなる気持ちはわかるけど、、、もっとそれだけじゃない世の中になってほしい。」
「同性婚の話題になると愛は尊いという話になるけど、愛じゃなくて権利の話でもっと論じてほしい。」
「友達とずっと生きていきたいけど...。」
結婚ってなんだろうと改めて考えてみると、同性同士を排除しているだけでなく、そのヒエラルキーの中にはできれば性的接触があった方がいい、「愛」があった方がいい、子どもがいた方がいい、「家族」を作った方がいい、、そういう段階があることが見えてきました。
戸籍による差別をスルーしてなるものか!!
ここで戸籍制度について考えます。最近結婚した芸能人の報道を見てみると「入籍」という言葉が使われていたり、「バツイチ」という言い方など、結婚に関する用語には戸籍に関連する言葉が多いです。そもそも戸籍ってどんなものなのでしょうか。
戸籍制度の法的性格としては、身分登録の書類です。しかし、1871年の戸籍令に始まるその歴史的性格からして「天皇の臣民の名簿」というイデオロギー的側面も強く、1947年に家制度が廃止されて新民法に合わせて改正されましたが、戦後は夫婦と未婚の子からなる「婚姻家族規範」を体現する存在として、そこから外れた人を差別してきました。
つまり、その家制度維持装置としての性格から女性差別の側面を持ち、さらに婚姻家族規範から非嫡出子差別の側面もあります。さらに、外国人が入れないことから外国人差別、かつて族称欄があり簡単に閲覧できたことから就職差別に利用され部落差別の一翼を担っています。詳しくはぜひ参考文献を見て勉強してほしいのですが、様々な差別の塊であることがわかります。
Let’s「反婚」「非婚」
ここまで来れば、なぜ「結婚に反対する」のか、もうわかるはずです。
「結婚」にはあまりにも問題が多すぎます。性愛規範、モノガミー、そして戸籍と切り離せない差別の問題を無視して、結婚制度に「包摂」されることを拒む思想と実践が「反婚」「非婚」です。
「椅子を追加するんじゃなくテーブルを変えたい」
結婚制度、戸籍制度についての簡単な説明を踏まえて、参加者でざっくばらんにおしゃべりをしました。
同性婚など今ある制度に包摂されるのではない道を探りたいと語る中で「椅子を追加するんじゃなくテーブルをかえたい」という発言が出たのが印象的でした。
「制度が先だっていて、様々な差別で雁字搦めになっている中で、誰かと親密な関係が築けたらいいなとは思うが、それがどうなっていくのかはよく分からない」という「結婚」ではない地平を切り開くことへの不安も聞かれました。
【感想】マジでお話できてよかった
同性婚法制化へのムーブメントが盛り上がる中、あえて「結婚」そのものを考えたいとイベントを企画しました。たくさんの関心のある人に集まっていただき、ざっくばらんにお話することができて企画者自身とても元気が出ました。
参加してくださった方々も、普段、本を読んで一人で考えるけれど他人と「反婚」について話す機会がほとんどないので、自分と同じようなことを考えている人に出会えてよかった、お話できてよかったと感想を寄せてくださいました。
「差別のない社会」を求めて、もっと考え、知り、実践したいと思ったイベントでした。
参考文献
早稲田大学図書館にもあるので、是非チェックしてみてくださいね!
同性婚訴訟札幌地裁判決 札幌地裁令和3年3月17日
Obergefell v. Hodges, 576 U.S. 644 (2015).
下夷美幸『日本の家族と戸籍』東京大学出版会、2019年
佐藤文明『戸籍って何だ?』緑風出版、2010年
アジア家族法会議『戸籍と身分登録制度』日本加除出版、2012年
エリザベス・ブレイク『最小の結婚』白澤社、2019年
李里花編『朝鮮籍とは何か』明石出版、2021年