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授業の様子⑲:グローバルスタディーズ学科
今回は、グローバルスタディーズ学科の選択必修科目のひとつである「グローバルヒストリー概論」の授業の様子を紹介します。
「世界史」というと、「フランス史」「中国史」のように、「国家」を単位として、その歩みを時系列に沿ってたどる、いわゆる「縦の歴史」が想起されることが一般的でした。それに対して、世界の異なる地域同士の「横のつながり」を意識し、歴史的なできごとや考えなどが、世界的に広まったり、複数の地域間で影響しあったりしていく過程について考察していくのが、グローバルヒストリーの手法です。
イギリスの歴史学者E. H. カーの著作『歴史とは何か』には、「歴史とは現代と過去との対話である」という有名な一節があります。歴史学は過去を対象とした学問と思われがちですが、現代が変化すれば、対話の枠組みや中身も変わります。ですから、過去をどう理解するかを提案する歴史学の枠組みや方法は、現代の文脈にあわせて変化する必要があるわけです(羽田、2018:3)。
国家という枠組みが相対化され、多様なアクターの動きに光があたるようになった現代、グローバルヒストリーの手法をもちいて世界の歴史をみなおしてみようというのが、この授業の目的です。
「近代市民革命」、「奴隷貿易廃止運動」、「第一次世界大戦」、「バンドン会議」、「1968年」など、近現代史の異なるできごとを毎週取り上げ、担当教員の解説や、課題文献の講読を通して、新しい視点からの解釈を試みました。
授業も終盤に近づいた1月26日には、日本のグローバルヒストリー研究を牽引してこられた羽田正 国際文化学部客員教授をゲストに迎えた特別回「現代を理解するためのグローバルヒストリー」を行いました。
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歴史の役割に立ち戻って、現代社会に暮らす私たちには、なぜグローバルヒストリーによる新しい歴史の見方が必要なのかを示したうえで、ロシアのウクライナ侵攻を例に、グローバルヒストリーの方法をもちいると、どんなことが見えてくるのか、解説していただきました。
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これまで親しんできた「世界史」とは異なる歴史の見方・手法に触れることは、学生たちにとって大きな刺激となったようで、続く最終回の授業では、歴史教育のあり方について、真剣な議論が交わされました。
世界のつながりを意識すると同時に、異なる立場からの、ときには対立する世界の見方があることも認識し、世界で唯一の普遍的な歴史の描き方は存在しないことを理解することも、グローバルヒストリーの重要なレッスンのひとつです(コンラート,2021:172)。
これから海外でのフィールドワークに出かけ、さまざまな立場からの歴史観、世界観と向き合うことになる学生たちには、そのたびに、さまざまな見方が生まれる背景を探ろうとする姿勢を身に着けてほしいと願っています。
参考文献
羽田正『グローバル化と世界史』、東京大学出版会、2018年。
セバスティアン・コンラート著、小田原琳訳、『グローバル・ヒストリー 批判的歴史叙述のために』、岩波書店、2021年。
2023年2月20日
中尾沙季子(グローバルスタディーズ学科教員)