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【非営利事業と対象者設定①】"貧しい"の定義とは?
日本をはじめとする世界の国々の多くが採用する、資本主義経済の中で生きていく上では、
経済格差や所得格差が生まれるのも仕方のないことだろう。
事業が成功し、自由に楽しみながら働いて富を得る者がいる一方で、
身を粉にして働いているにも関わらず、経済的に苦しんでいる者がいる。
このような社会だからこそ、低所得者や貧しい家庭を助けようとする人・組織が生まれ、非営利事業を行う。
この記事では、"貧しい” という言葉に着目し、
実際に民間の非営利事業に関わってきた私が感じていることについて書いていきたい。
"貧しい” とは?
皆さんは「貧しい家庭」と聞くと、どのような家庭を思い浮かべるだろうか。
生活保護を受けている家庭、収入がある一定以下の家庭、ひとり親家庭、多子家庭…
一般的には、このような家庭を貧しい家庭だと考えることが多いのではないだろうか。
しかし、必ずしもこの考え方が正しいとは言えない。
例えば、制度の狭間で苦しみ、制度の恩恵を受けている人よりも貧しい生活を送っている人がいる。
収入が高くても、生活水準が高いためにお金がなく、苦しむ人がいる一方で、
収入が低いからこそ工夫して生活し、幸せに暮らしている人がいる。
また、苦しい・貧しいと感じる基準や、幸せを感じる基準も人によって異なるため、1つの基準だけで判断することもできないだろう。
何をもって "貧しい” と定義するのか。
このことは案外、難しい問題なのではないだろうか。
そもそも、"貧しい"という言葉の定義に統一性が無くてもよいと思うかもしれないが、
この問題を考える必要がある場面の1つとして、経済的に苦しむ家庭を対象とした非営利事業を行うときがある。
非営利事業と対象設定
例えば、小学生向けの実験教室の対象者は、小学生とその保護者 と限定するように、
何かの事業を行うとき、対象者を絞ることはよくある。
対象者を絞ることで、主催者の求める参加者を集めたり、参加者が集まりすぎることを防いだりできる。
これは、経済的に苦しんでいる人を助けようと、非営利事業を行うときでも同じだ。
しかし、この非営利事業が小学生対象の実験教室と異なるのは、
対象者の範囲をよく考える必要性があるということだ。
主催者は、経済的に苦しく、貧しい家庭を集めたいと考えるが、
具体的にどのような対象者を設定したらよいのか迷うのだ。
例えば、対象を「貧しい家庭」と設定した場合は、この定義の曖昧さが問題となる。
前述したように、何をもって貧しいと感じるかは人によって異なるため、
意図していなかった家庭が参加し、早急な支援を必要としている人に届かないことがある。
具体的に対象を「年収〇万円以下」と設定すれば、年収を証明してもらう必要がある。
しかし、民間の非営利事業において、利用者の年収を聞くことまでしてもよいのだろうか。
また、環境によっては対象外の家庭であっても、対象の家庭よりも早急な支援を必要とケースもあるだろう。
「ひとり親家庭」と設定しても、ひとり親家庭は必ずしも貧しいとは限らないし、
ふたり親家庭でも生活していけないほど苦しい家庭があるという事実にも当たる。
対象者を設定しないよりは、何か具体的な対象者を設定した方が支援を必要とする人に届きやすい。
しかし、具体的な対象者を設定するためには、見捨てなければならない人がいるのも確かなのだ。
「苦しんでいる人を助けたい」という想いと、
「全ての苦しんでいる人を助けることはできない」という事実の狭間で、
少しでも多くの支援を必要とする人を助けるにはどうすれば良いのか。
悩み、考えながら今日も事業を行っている。
(hina)