九六
承認欲求のその先に
恋人は出張に行くと夜は飲みに行くけれど緊張と緩和を楽しめているとしたらなんとなくわたしも楽しくなってしまうの。
仕事中の恋人のことを想い、わたしは穏やかに過ごしていることが伝わりますように。
めいっぱい伝えたいと伝えすぎたら飽きられると愛してるのジレンマがもどかしい。
願わくばもう少しだけ、恋人の耳に心地いい声でありたかった。
仕事で一息つく瞬間に彼が思い出すのは笑ってるわたしであれ。
勝手に今日出張から帰ってくると思っていて。帰ってきたからといってまだ会えなかったから何も変わらないんだけどでもやっぱり、恋人のいない東京の空はいつもより少し低い気がした。
手放したくないか手放したいかでいえば絶対に手放したくないのがわたしの恋人。
恋人はわたしの栄養。だから恋人に会えなかったりせめて声が聞けないと弱ってしまうのは当たり前の話。
恋人はいう「自分の気持ちは自分のもの」と。わたしは思う「恋人の気持ちはわたしのもの」と。
恋人がかわいい。でもそのかわいさを知るのはわたしだけ。だっておじさんだから。おじさんを好きになるってかわいさの独り占めをできることなのかもしれない。
わたしが大丈夫っていったら大丈夫。だって大丈夫じゃなかったことなんて何一つないんだから。
愛してると惜しみなく伝えるのはこの恋がいつ終わってもいいように、死刑台への階段を一歩一歩上るようなもの。
些細なことで心が揺れるのはただ恋人の穏やかな日々を願うことができていないから。
「生きとし生けるもの全てに太陽が必要」という言葉が好き。わたしは恋人の太陽の一つになりたい。
恋人のいう「話をすると安心をする」という根っこにある不安が何からくるものなのかわたしにはわからないけれど、わたしはここにいるよ。ずっと、ちゃんと、恋人のことを想ってるよ。
恋人はきっと1mmもそんなこと思わないんだろうけどわたしはほんとに恋人に出会えてよかったと思うしもう少しだけ「愛してる」って伝えればよかったなって思う。