ブラシの話(前編)
チューンナップやメンテナンスでお世話になるブラシ。持っていて損のないものですが、使用用途によって様々な種類があります。
そんなブラシの話を長くなるので二回に分けてお伝えします。
ブラシの種類
ブラシには大きく分けて三種類のブラシがあります。表紙の写真の左から金属ブラシ、ナイロンブラシ、馬毛ブラシです。
このうち馴染みのあるのはナイロンブラシでしょう。最も手には入りやすく、よく見かけるのはブラシが白いナイロンブラシでは無いでしょうか?
これらのブラシは同じものに見えて使い方が異なり、間違った使い方をすると余計な手間になってしまいます。
金属ブラシ
金属ブラシはスチールブラシと真鍮ブラシがあります。また金属ではありませんがナチュラルファイバーブラシやボアブラシも基本用途が同じブラシなので、便宜上金属ブラシのカテゴリーでまとめて考えて大丈夫です。
金属ブラシはメンテナンスなどの最初の段階で使います。滑走面よりも硬く鋭いので滑走面にこびりついた埃や汚れ、油や劣化した滑走面の除去に使用します。布やウェスで拭っても落としきれない細かなゴミなどはこのブラシで除去します。金属ブラシを使うとその後のクリーニング作業が楽になるほか、ワックスの浸透にも効果があるので是非使いたいブラシではありますが、使い方を間違ったりやり過ぎると余計な傷をつけてしまうこともあるので加減が必要です。
金属ブラシの使い方で注意なのはワックス後のブラッシングではめったに使わないこと。イメージとして根こそぎ落としてしまうので、せっかくワックスを入れた滑走面を再び削ってしまいかねないのです。ただしクリーニング作業のように敢えて使うメンテナンスもあるので、NGと言うほどではありません。
因みに金属ブラシには強度があって
スチール>真鍮>ナチュラルファイバー>ボア(>=ナイロン)
の順に硬さが異なります。ナチュラルファイバーやボアは滑走面に対して削る効果が軽いので、慣れないうちやこまめにメンテナンスする方にはお勧め出来ます。また滑走面が硬いシンタードベースの場合はその分硬いブラシを使うと期待する効果が得られます。
一般で使う場合、真鍮ブラシがあれば十分ですが、真鍮ブラシにも種類があって、目の粗いものと目の細かいものがあります。この違いはぶっちゃけると値段の差くらいのものであまり意識しなくとも問題ありません。
むしろ悩むのがコンビネーションブラシ、真鍮ブラシと別の種類のブラシが組み合わさっているものです。上の写真のような外周部がナイロンで中が真鍮ブラシのもの、半分に分けて片側がナイロンだったりスチールブラシで、もう片方が真鍮ブラシになっているもの、様々です。
これは私個人の見解ですが、コンビネーションブラシはそれぞれの用途が理解できるまでは使わない方が良いかと考えます。ゲレンデでの現場のメンテナンスで使うなら価値はありますが、日常的に使うなら別々の方が使いやすいからです。
じゃ、なんで私の使う写真の真鍮ブラシは外周部がナイロンのコンビネーションブラシなのか?これは真鍮ブラシでもっとも大事な毛先を丸めないのに好都合だからです。
真鍮ブラシは使うと徐々に歯ブラシの毛が開いていくように丸まって寝ていきます。真鍮ブラシは毛先こそ大事なのですが、丸まってしまうと効果が期待出来なくなってしまいます。
毛が丸まって寝てしまった真鍮ブラシ。使えないこともないですが…
しかしこの外周部がナイロンブラシのものは、ナイロンブラシのお陰で毛先が丸まりにくく、使い勝手も良いのです。実際にこのブラシ、10年くらい使用してますがまだまだ余裕で使えます。
低価格の真鍮ブラシはこうした工夫がないので上のような事になってしまいます。ちょっと高いですが、もし買うなら外周部がナイロンのものをお勧めしますよ。
それと補足的にナチュラルファイバーとボアのブラシについて。ナチュラルファイバーはかっこよさげな名前ですがつまり「竹」です。そしてボアブラシは豚の毛のブラシです。どちらも腰がありナイロンより硬く、金属ブラシと同じように使えます。毛が寝にくいので真鍮ブラシより使い勝手が良いかもしれませんね。
またボアブラシは硬めのナイロンブラシ、と思っても良いかもしれません。ナイロンにはない特徴があるので重宝するのですが、それはナイロンブラシの説明で。
ナチュラルファイバー、よく見ると竹の繊維。油を吸う特徴がある
ボアブラシ。根こそぎかきだせるので本格的にやるなら重宝するブラシ
この二つは滑走面を無用に傷つけにくいのですが、古い滑走面をブラッシングで除去するのには少し向きません。ハイシーズン以外も滑る方は真鍮をハイシーズンしか滑らない方はナチュラルファイバーやボアブラシと言うイメージで使っても良いでしょう。
ただ、ナチュラルファイバーはあまり見かけないし、ボアブラシはそこそこ高いんですよね…。
そしてスチールブラシ。かつて私も持っていましたがほとんど使わず、今も使っていません。硬いシンタードベースの板では使いますが、そんな競技者向けの硬いシンタードベースの板はスキーボードではあまりなく、あってもシンタードの中でも柔らかい方のものなので使う機会がほとんど無いのです。エクストリューデッドソールやPEソールの多いスキーボードでスチールブラシは強すぎるので、敢えて遣うほどのことは無いと思います。
もしスチールブラシを使う場合は力加減に十分ご注意を。いくらでも削れていくらでもカスが出てきてしまうので、加減が判らなければ真鍮ブラシの方が良いですよ。
と、たかがブラシで話題が盛りだくさん。次回はナイロンと馬毛の紹介ですね。