春のスキーワックス

いやぁ、春ですね。この週末は来週に大きなイベントが続くのでワックスメンテナンスに勤しんでおります。

はい、春に向けて試乗会で気持ちよく滑ってもらうためにワックスチェンジです。基本的には製品状態のままで試してもらうのがモットーのGRのスキーボードですが、春の溶けた雪にはさすがに手を入れます。

と言ってもクリーニングと、春向けのリキッドベース「NF-03LQD」と「ARL」です。普段は仕上げに「NF-02LQD」を使っていますが、それが一段固くなります。

 え?NF-03って低温度用のワックスじゃないか?って?使うならNF-01じゃないかって?

 実は、春の雪は「硬い」んです。

硫安が撒かれたゲレンデは固すぎる

 雪を維持するためにこの時期からゲレンデに使われる「硫安」正確には硫酸アンモニウムは農業用の肥料として有用な資材です。※中の人の副業は農業

 硫安は水に溶ける時に周囲の温度を急激に奪う性質があり、雪を固めます。つまり一時的に氷を作って溶ける雪を凍らせて融雪を防ぐ目的があり、元は肥料なので(色々と環境に対して懸念すべき事はありますが)安全性は確保されているものです。

 なので雪解けが進むリフト乗り場やパークで利用され、場合によってはゲレンデ全体まで撒かれる硫安。この硫安が撒かれた後は凍りますから雪面は硬くなります。

 この硬くなった雪面、雪は一時的にですがハイシーズン並みに硬くなります。それは「春用ワックス」というものでは防ぎきれないくらい硬いのです。柔らかい春用ワックスは硫安の撒かれた雪で削り落とされ、滑走面は徐々にギタギタにヤスられ、その荒れた滑走面の細かな傷にはゴミや汚れが付着し・・・と繰り返した結果、びっくりするくらい板は汚れます。
 さらに春用のワックスがゴミを巻き込み、ワックスは効果を失ってただのヤニのように・・・その結果がこちらです。

いわゆる「塗りっぱなしOK」というワックスを塗り続けた結果

 この状態では滑るはずもありません・・・。

 こうした状態を防ぐ簡単な手段の一つが「硬いワックスを使う」ことなのですが、一般に硬いワックスは素人が行うには勇気がいる温度にアイロンをセットして行うので敷居がとっても高いです。
※温度で140度以上、砂糖も溶けます。

 そこでおすすめなのがGRでもしばしばおすすめしているリキッドワックス。アイロンを使わないので滑走面を痛める心配がありません。その中でもNF-03LQDは硬いワックスとしても使えるものなので、GRではこの時期の仕上げに重宝しています。

 ただしこちらだけではちょっと効果が期待できません。クリーニングが必要なのです。

クリーニングとは?

 クリーニングは主にホットワックスを使って行う滑走面のメンテ作業です。柔らかめのワックスを使って滑走面をホットワックスし、ワックスにゴミや汚れ、ヤニなどを浮かして取り除き、同時に滑走面自体のケバや小さな傷を掻き取ってしまいます。
 方法は一般的なホットワックスと同じで、ずいぶん古い動画ですが過去に公開しております。

この動画もそろそろ更新しなければ・・・

 この作業も実は今ではかなり楽な方法があり、ワックス初心者でもできる方法がありますが基本は動画の通りです。こうして滑走面を元の状態に戻すことが最も大事で、滑らなければクリーニングするだけでもかなり滑りは元に戻ります。これに保護のためのNF-03LQDを用い、さらに水弾きなどを良くするためにARLやBlendsTop、LF-01LQDなどを使えばバッチリです!

簡単なクリーニングでもここまで綺麗に

 動画ついでにゲレンデでできるワックスの動画もございます

 これらの情報でさらに詳しく!と感じる方は、GRがお世話になっているハヤシワックス様で競技者向けになりますがブログが公開されています。

 春も快適に!と考える方はぜひこれらをご参考にしていただくともっと楽に快適にスキーやスキーボードが楽しめると思います。

 なお補足として・・・

 GRでしばしば採用している滑走面「エクストリューデッド」ですが、その滑走面としての性能はシンタードに劣るものの、春雪に関してはシンタードよりも性能劣化が少ない素材です。※多少ワックスが切れても滑れる
 サルトロから採用を始めた「シンタード」はとても良く滑る滑走面ですが実は劣化に弱く、一度劣化させるとクリーニングがしにくく、ワックスが切れるとエクストリューデッドよりも滑らない滑走面になります。劣化はしにくいものですが、劣化させた場合のシンタードはぜひ「ホットワックス」をご検討ください。リムーバーなどのお手軽クリーニングではケバなどが除去し切れず、ワックスが抜けたシンタードは何をしても何を塗っても滑らない滑走面になってしまいます。ホットワックスは用意がなくても、大きめのゲレンデに行くと現場で行ってくれるワックスサービスなどを行っているレンタルショップやスキーショップがございますので、そちらで依頼することが可能です。

(補足の補足)
 シンタードはワックスがきちんと使われている限り、春の雪でも滑るのは快適です。ただし問題は「ワックスが切れてしまっている時、滑走面がガサガサになっている時」は滑らない状態ですので、シンタードで何しても滑らない!という場合はお店に依頼してクリーニングやサンディングをしてもらうとだいたい復活できます。

 またシーズンアウトの際は必ずメンテナンスやクリーニングをしてしまうこともおすすめします。劣化したままの状態で板をしまうと錆びてしまったりワックスが入らない板になる場合もございます。こちらについてはGRでは他社のものでもメンテナンスチューンを承りますので、よかったら一度お問合せください。


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