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文化庁の「AIと著作権に関する考え方について(素案)」の解説 パート2

皆さま、こんにちは。
弁護士をしております、中野秀俊と申します。
今日のテーマですけれども、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について(素案)」の解説 パート2というお話をしたいと思います。

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以前、パート1として文化庁の見解についてご説明をしましたが、今回はその第2段となります。文化庁の審議会がChatGPTなどの生成系AIと著作権の関係について2023年の6月頃に「AIと著作権の関係」という資料を出しました。これについて2023年12月20日に出された素案では違反となる具体例が深掘りされて書かれています。
パート1ではAIの開発や学習をさせる段階における注意点ついてご説明しましたが、今回は生成AIを利用する段階における注意点についてお話していきたいと思います。

パート1のYouTube動画はこちら!
https://youtu.be/1ERXpssRi-8

生成AIを利用するときの著作権の注意点

パート1でもお話しましたが、プロンプトによって生成系AIから生成されたものがたまたまほかのコンテンツに似ている、もしくは同じになるということも考えられます。この場合、著作権侵害になるのかという問題がありましたが、基本的には生成系AIであっても著作権侵害の考え方はこれまでと同様です。
著作権侵害になる場合とは、類似性と依拠性がある場合です。類似性がある場合とは、元のコンテンツと似ているかどうかです。これについては裁判例が多くありますが、問題となるのは依拠性です。依拠性がある場合とは、元のコンテンツを知っていてそれをパクってつくったというものです。この依拠性があると著作権侵害になるわけですが、具体的にはどのような場合なのかをご説明します。

生成AIを利用と依拠性

たとえば、AIの利用者が既存の著作物を知ったうえで生成AIを利用して類似したものを作成した場合は依拠性があるとされます。ドラえもんやポケモンなどを知ったうえで、それと似たようなものをつくりたいと考え、「ポケモン 黄色」などのプロンプトによって作成した場合には依拠性があるとされます。
また、image to imageのように画像を読み込ませた場合や既存のコンテンツのタイトルをプロンプトに入れている場合も依拠性があるとされます。これは画像や固有名詞をそのまま入力しているため非常に分かりやすい例といえるかと思います。

では、元のコンテンツの権利者としては自分のコンテンツが使われていた場合にどうすればよいのでしょうか。もし権利侵害をしている人が「生成系AIでつくったものがたまたま似ていただけで依拠性はない」と主張した場合には、既存著作物へのアクセス可能性や既存著作物への高度な類似性があることを立証すれば依拠性があると推認させられます。もちろん、ドラえもんやポケモンなど広く知られているものであれば知っていたはずだとなるかもしれません。しかし、そうでないものであっても「漫画化やアニメ化がされている、SNSで発表している、たまたまにしては似すぎている」などの主張が有効です。これは類似性からのアプローチだと考えられますが、これらの主張によって依拠性があると判断するとされています。

 問題は既存の著作物をそもその認識していなかった場合です。そこまで有名ではなく、特定のマニアだけが知っているものやまだまだ駆け出しのコンテンツなどでAI利用者が認識していなかった場合であっても、AIの学習データに既存著作物が含まれている場合には依拠性があると認められるとされています。これは故意だったかどうかにかかわらず依拠性を認めると文化庁は指摘をしています。
ただし、生成AIが学習に用いられた著作物をそのまま生成する状態になっていないといえる事情であれば依拠性がないと判断するとしています。これがどのような事情なのかという具体例は書かれていませんが、プログラム的に読み込ませたものをそのまま出力するような形になっていない場合には依拠性がないと判断されるようです。これから具体的にはどうなるのかという部分はありますが、基本的にはみんなが知っているようなものを読み込ませた場合や同じようなものが出てきた場合に「それは知らなかった」は通用しないということだと思われます。

生成系AIを利用する側としては、アウトプットされたものを見て「ドラえもんに似ている」「ポケモンに似ている」と感じたとすれば発表しないということが重要になってくるかと思います。

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