マーケティングテクノロジーはSuitesよりもBest-of-Breed(ベスト・オブ・ブリード)がオススメ
こんにちは。グロースマーケティング編集部です。
アプリ開発とデジタルマーケティングを支援する株式会社DearOneでB to Bマーケティングをしています。そんな私が初心者マーケターにもわかるように解説していくこのコーナー。
今回で第17回目です。
ついにこの、初心者がわかったように語るグロース入門シリーズも最終回となりました。
前回第16回の記事では『データをゴミにするか宝にするかはタクソノミー設計次第』について解説をしました。
第1回目から順番に読んでいただければ、より理解が深まると思いますので、まだ読んでいただけていない人はぜひ読んでから戻ってきてほしいです。
それでは、今回のテーマを発表します。
マーケティングテクノロジーはSuitesよりもBest-of-Breed(ベスト・オブ・ブリード)がオススメ
Here We Go!
グロース戦略ならSuitesよりもBest-of-Breed(ベスト・オブ・ブリード)
この記事では、Best of Breedという概念をもとに、グロースを効率的に進めるためのソリューションの選択方法をご紹介します。
Suitesの問題
マーテック(マーケティング+テクノロジー)が普及したことによって、様々なツールが登場しています。
グロースマーケティングではとにかくデータを活用します。膨大なデータを活用するためには、データをためる、整える、分析する、つかうという各フェーズで最適なツールを使っていくことが欠かせません。
ツール次第ではせっかくのデータも活用できなくなってしまいます。
こうしたプラットフォーム面の課題を解決するために我々が提唱しているキーワードが「Best of Breed」です。「Best of Breed」とは、「最適な組み合わせ」という意味で、「アトリビューション」「A/Bテスト」「BI」「ユーザー獲得」「プッシュ通知」など、それぞれの機能を持つ異なるクラウドソリューションについて、数多くのベンダーから自社のベストなサービスを選んで組み合わせ、エコシステムを構築する、という方法です。
一方、現在、マーケティングテクノロジープラットフォームを構築する方法として主流なのが「Suites」です。
「Suites」とは、特定の一社がシリーズとして提供する様々な分野のソリューションを包括して採用・導入する形式です。
しかし「Suites」には下記3つの問題点があります。
それぞれの機能が70点で、十分ではない
導入時のコストが高額になる
一度導入するとフレキシブルに変えられない
それぞれ説明します。
1. それぞれの機能が70点で、十分ではない
全てのサービスがSuiteの中に揃っていることが、必ずしも各種業務機能のベストパフォーマンスを生み出すとは限りません。
例えばゲームを例に解説をすると、キャラクターの中には大きく2種類あって、1つが「何か1つのスキルに特化しているタイプ」、もう1つが「全てを満遍なくこなすことができる万能タイプ」があるかと思います。
ここで何か特定の課題を解決しなければいけないという状況に陥ったとします。
その場合、何か特定の課題を解決するためにはほとんど必ずと言っていいほど、何かに特化しているタイプを使用しなければ解決できません。
このように、万能タイプは満遍なくこなせるが故に、全てが平均的でいざ課題を解決する際には特化型にとって変わられてしまうのです。
2. 導入時のコストが高額になる
大手ベンダーが全機能を備えたパッケージを提供している場合が多いです。さらに競合も少ないため、導入時の費用が非常に高くなっている現状があります。これが2つ目の問題点です。
3. 一度導入するとフレキシブルに変えられない
ユーザーが、パフォーマンスに物足りなさを感じていても、その部分だけを切り離して別のベンダーのアプリケーションに変更するということが物理的に困難になります。
クライアントはこのような問題点を日々実感しながらも。「一度、一括で採用してしまったのだから仕方ない、、、」ということで、我慢して使わざるを得ないという状況に陥ります。この中途半端なパフォーマンスがグロースマーケティングの加速に大きな障害となるのです。
以上3点が、「Suites」の問題点です。
Suitesのメリットとしましては、システム・データの連携を前提としているため、操作が簡単という点があります。その他には、保守やサポート、営業の窓口が統一されているため、管理が容易という点もあるでしょう。
それではここからは私たちが提唱している「Best of Breed」について紹介していきます。
Best-of-Breed(ベスト・オブ・ブリード)のメリット
上記でも述べたように、「Best of Breed」とは数多くのベンダーから自社に最適なサービスを選んで組み合わせ、エコシステムを構築するという方法です。
Best of Breedでは常にその都度最適なツールを使用することができます。
現在、スタートアップを含め、世界中のIT企業がある特定のスキルに特化した、高機能でかつ「かゆいところに手が届く」サービスを提供しています。これらの企業は認知度、包括度で言えば大手ベンダーに比べると劣ってしまっているかもしれませんが、特定の領域ではかなり磨き込まれた機能を提供し、さらに日々進化し、改善を試みています。
さらに、今現在最適なものが、今後も最適であり続けるという保証はどこにもありません。まして、私たちが現在生きている時代は、不明瞭で数年先まで見越してビジネスを行うことは困難です。
そんな時代を生きているからこそ、常に最適なものは変わり続け、その都度ベストなソリューションを見つけ、切り替えていくことが大切となります。
また、世界の最先端グロース企業、Netflix、Amazon、Facebookなどは年に1,000回以上もの施策を試み、トライアンドエラーから学習を繰り返しています。
しかし、多くの日本企業ではいまだに時間をかけてよく計画を練り、成功か失敗かをみんなで見守るという方法をとっています。これでは到底世界の大企業には太刀打ちできません。
Best of Breedを採用することで、それぞれの施策が完璧でなくても、情報を把握し、理解したらすぐに取り掛かり、より良いものは取り入れ、悪いものは排除してく、そしれまたこれを繰り返す。
このようにしてサービスを磨き込んでいくことが大切なのです。さらにこれはグロースマーケティングの真髄で、このサイクルを繰り返すことで、ビジネスをより大きくグロースさせることが可能になるのです。
Best of Breedは、グロースマーケティングの3つの軸の一つである「高速に施策を繰り返す」ために重要な要素なのです。
Best-of-Breed(ベスト・オブ・ブリード)の始め方
Best of Breedでシステムを考えると、自然とSaaSのソリューションを使用することが多くなります。ここでは、Saasのサービスを前提としたBest of Breedのポイントを7つ紹介します。
スモールスタート
もちろん初めからうまくいき、大成功を収めるのが理想です。しかし、いきなり最初から大成功というのは少し現実的ではありません。特にグロースマーケティングでは、小さく初めて、継続して伸ばしていくことを目的としているため、小さく早く初めて成長につなげていきます。
そのため最初はある程度範囲を狭めて、特定の製品だけで実施してみるという発想が大切です。そこで効果検証を行い、うまくいけば他の製品にも展開してく、というフローで、会社の中での理解者・利用者を拡大させていくイメージです。
目標・指標設計が大事
ノーススターメトリックをはじめとする目標・指標からしっかりスタートすべきです。SaaSのサービスはそもそも小さく初めてスケールしていくことを前提に料金テーブルが設計されているので、どの範囲で何を計測するか、どういう規模で始めるかといった指標を、事業会社とSaaS企業が共に設計することで、初めは少人数のアカウント利用からはじめ、成功を重ねると共に徐々に拡大していくという手順が踏めます。
本格活用前のオンボーディング重視
「導入したが使われていない」を回避するためにも、活用準備段階でのオンボーディングはとても重要です。社内で環境を整備し、人材をアサインし、活用方法をトレーニングしていくと言った点にかなりウェイトが置かれていることがSaaSの特徴とも言えます。
過去ノウハウを元にしたフレームワーク活用
上記のNetflix等のグロース最先端企業のノウハウをもとに、ツールを活用して成功に導くための活用パターンがある程度フレームワーク化されています。そのため、やるべきことが比較的明確になっており、無駄なく導入することができます。
個別定例ミーティングなどによる進捗確認と改善
実際に使い始めた後、ベンダーと個別定例ミーティングなどで進捗の確認を行い、より適切に活用するための改善アドバイスを受けて改善を進めていきます。
「導入しても効果的に活用できていない」を避けることができ、導入費等を無駄にすることはありません。
勉強会(リアル)やウェビナー(オンライン)による”活きた”実践ノウハウ取得機会
導入企業をまたいで学びを共有する場が設けられることもあり、そこでは生きた実戦ノウハウが学べます。例えば、飲料メーカーが自動車メーカーのマーケティング実践事例を参考にしたり、ということがあります。
ベンダー実務支援サポートの活用
ソリューションによっては、実務サポートのための人的支援を提供することがあります。
Best-of-Breed(ベスト・オブ・ブリード)でグロース戦略を行っている事業会社の事例
ここからはBest-of-Breedでグロース戦略を実際に行い、デロイトトーマツが発表した「世界の小売業ランキング2021」*1で見事1位になったWalmartのBest-of-Breedグロース戦略を紹介します。
同社のモバイルマーケティングチームは、顧客のデジタルジャーニー、フロー、ファネルを全体的に把握することで顧客体験を向上させることに成功しました。
同社は「人々がお金を節約し、よりいい生活を送れるようにする」という目標を創業時から掲げています。まずは、課題の一つであったデジタルカスタマーエクスペリエンスの最適化に焦点を当てることにしました。
デジタル上の顧客行動を理解するために必要となるデータ収集や分析を行うために、ユーザー行動分析ツールAmplitudeの導入を決めました。*2
Amplitudeではモバイルに特化した高速な行動分析が可能で、優れた計算能力、測定基準、柔軟性を兼ね備えており、操作が容易で顧客データ分析への障壁を取っ払い、分析にかかる時間を削減することできます。
同社は、チャネルをまたいで買い物をするオムニカスタマーにサービスを提供し、サポートすることを目的としてモバイルアプリを活用しています。アプリは、店舗で買い物をするお客様にも店舗に行く前に商品を調べたり、当日の受け取りや配送のためにアプリ内で購入を済ませたりするお客様にも同じような価値が提供できるように設計されています。
食料品と雑貨の二つのアプリを提供していましたが、2020年5月に両方のアプリダウンロード数が過去最高になったタイミングで、顧客体験向上につながると考え2つのアプリ統合を決断しました。Amplitudeは既にアプリ利用を加速する上で重要な役割を果たしていましたが、このような大規模な取り組みにおいても、リアルタイムレポートを作成し、いつ、どのイベントがきっかけでユーザーの行動が急変したのか、セグメントが変化したのかを簡単に確認できるようになりました。
同社はAmplitudeを利用したことで顧客行動の把握、データの可視化が可能になり、アプリの利用状況、購買状況、添付機能の利用状況などの主要な指標を掘り下げて、変化する顧客タイプを理解し、それに基づき改善を試み、戦略を立てることが可能となりました。
さらに、どのチームにいてもどの部署にいても全員がデータにアクセスでき、必要なデータを有効に使用することができるようになったため、グロースマーケティングで重要とされている「一人一人がデータに基づいて意思決定を行える環境構築」も実践することができました。
また、同社は顧客体験向上を目的に、テストの最適化を目指しSAUCELABS社のツールを導入。*3顧客の時間を節約するために、デジタル戦略に大きな投資を続けていましたが、従来の慣行からシームレスへの移行に課題を抱えていました。
時間のかかる手動テストに頼っていたため、3週間の開発サイクルで月に2度しかデプロイ*4を行えておらず、顧客の声をアプリに反映するまでに時間がかかってしまっていました。
そこで自動テストの導入を決め、テストの速度、デプロイの回数を向上させることに注力するようにしました。
自動テストへの移行を進めている中で同社は、自分たちが必要とする規模で動作するテスト管理ツールがないことに気づきました。そこで品質自動化プラットフォーム、Test Armadaの開発を開始。Walmart社が成功するためには、チームがアプリを開発・テストする方法の文化全体を変える必要があることを理解していました。これにより、センター・オブ・エクセレンス(DXTチーム)が誕生。DXTチームは、Test Armadaを補完する最適なテストフレームワークとプロセスを選択することに注力しました。
選定されたテストフレームワークとプロセスは標準化され、様々なチームに展開され、全員が同じように作業できるようになりました。
同社では現在、世界中の40以上のプロジェクトでプラットフォームを使用して、テスト管理を行なっています。SAUCELABSのツールと合わせて使用することで、過去7年間で1,400万回以上のテスト実行を可能にしました。
現在は1日当たり約5万回という脅威の数のテストを行うことができるようになり、デプロイサイクルも月2回から、1日に複数回へ高速化を実現しています。
これらのツールを使用したことで、同社は1年以内に、新しいブラウザやOSのサポートを手動でテストしたり更新に費やしていた750,000時間以上の工数を削減することに成功しました。
このように用途、目的に応じ、様々な会社のMAツールを連携することを我々はBest-of-Breed(ベスト・オブ・ブリード)と呼んでいます。
まとめ
今回の記事ではBest of Breed、グロースするなら色んな人と付き合うべきということついて紹介しました。グロースマーケティングをより効果的に行うためにぜひ参考にしてみて下さい。
お役に立ちましたでしょうか。
グロース入門シリーズをお読み頂き、御社でもぜひグロースマーケティングに取り組みたい、DX推進をしたいが何から手をつければよいか分からない、リソースが足りないなどの課題が山積みで相談したいなどお困りでしたら、ぜひ寄り添い支援して伴走する我々にご相談ください。
グロースマーケティングについて詳しく書いた書籍を出版しています。
それではまた今度。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この初心者がわかったように語るシリーズはこれが最後です。シリーズを通してお役に立てたでしょうか。
今後は、グロースマーケティングのもう少し発展した内容について発信していきますので、ビジネスをグロースさせるためにそちらも参考にしてみて下さい。
*1出典:https://marketing.itmedia.co.jp/mm/articles/2106/23/news171.html
*2出典:https://amplitude.com/blog/walmart-customer-experience
*4Webアプリケーションなどのシステム開発プロセスにおいて、システムを利用可能な状態にすること