【基礎から学ぶ人事制度│評価制度編④】評価基準の設計のポイント/評価の相対化とは?
このコラムは、グローセンパートナーの人気セミナー「動画で学ぶ人事制度」の内容をまとめたものです。人事制度から人材育成・教育に関する全体像を理解し、人事制度設計で押さえるべきポイントを説明します。
動画で学ぶ人事制度とは
動画とテキストに沿って演習や事後課題を進めることで、人事ポリシーの設計、等級・評価・報酬制度の概要設計、教育体系などの概要設計ができるようになっています。より詳しく学びたい方は、ぜひテキストをダウンロードして動画をご覧ください。
今回は、評価基準の設計と評価の相対化について詳しく解説します。
評価基準の設計
評価基準の設計においては、個別評価は5段階、総合評価は5〜7段階ほどの運用が良いでしょう。一般的に、人間が知覚できる違いは「良い/普通/悪い」の3段階です。上位や下位の等級に相当する例外的なケースを考慮し、せいぜい5段階が上限です。
評価項目別の評価基準(絶対評価)
業績評価で通常使うのは「A、B、C」の3つの評価です。「達成基準」に基づいて評価しますが、S評価とA評価の違い、C評価とD評価の違いは、どうしても運用に依存することになります。数字を載せるケース(S評価は期待の120%以上など)もありますが、各事業部や部門によって難易度が変わってくるので、数字を掲載することで逆に混乱を招くこともあります。S評価やD評価に関しては、慣習的に使わないなど隠れたルールもありますが、この辺りも運用上で統一しておくことがおすすめです。
行動基準の場合は、S評価は上位等級、D評価は下位等級というイメージです。Dを何回か取ると降格する可能性もあるという基準で運用すると、評価のバラつきを抑えることができます。
一次評価の総合評価(調整評価)
現場サイドで、総合評価で相対化することも可能です。日常の仕事ぶりを勘案して、項目別評価を調整します。
ただし、ここでいう評価基準は絶対評価、分布目安は相対評価と、現場で矛盾が生じてしまうので、あまりお勧めする形ではありません。
最終評価(相対評価)
最終評価は相対評価で行われることが多いです。B評価に上位層・下位層を加えたい場合は、B+・B-のようにして7段階程度にしてもよいでしょう。評価の分布の目安を明確にし、S評価やD評価は+αとして、状況に応じて使用したり、しなかったりといった形で運用することが多いです。
評価基準設計のポイント
最後に、評価基準の設計の留意点についておさらいします。
評価の段階は、多くても5段階程度にするのが望ましいです。ただし、昇給額や賞与額を決定する際には、±を含めて7段階程度に設定することも可能です。
中心の評価(B評価など)を「期待通り」とするのか、「ほぼ期待通り」とするのかを慎重に設計する必要があります。「期待通り」とする場合、少なくとも100%を超える成果が必要なのか、それとも「ほぼ期待通り」として98%程度をB評価とするのかによって、運用方法は大きく異なります。
判断を容易にするため、達成レベル(例:目標の110%以上など)は設定しない方がよいでしょう。
評価基準に複数の判断基準を盛り込まないことが重要です。例えば、2つの基準があり「片方は達成しているが、もう片方は達成していない」となると、現場で混乱が生じやすいため、そのような設計は避けるべきです。
評価の相対化
評価制度の設計で最も難しいのは、相対化するポイントの設計です。現場では絶対評価で運用し、途中で相対化する場合、必ず現場の評価と最終評価が異なるケースが発生し、それが不満の原因となりがちです。相対化を行うかどうか、また相対化する場合でも、慎重に設計する必要があります。ここでは相対化について、できる限り詳しく説明します。
絶対評価を相対化するタイミング
現場では、業績評価や行動評価などは絶対評価で運用しますが、人件費には予算があるため、最終的には相対評価を行うケースが多く見られます。どの段階で相対化するかによって、現場の納得度が大きく変わるため、その点についてケースを交えながら解説します。
ケース1
現場で絶対評価を行い、その後、評価者会議などで報酬評価が確定してからフィードバックを行う流れです。この方法には、最終的に確定した報酬評価をフィードバックできるというメリットがあります。しかし、一次評価の開始から報酬評価の確定までに約1.5ヵ月かかることや、絶対評価自体がフィードバックされないため、マネジメントや人材育成の効果が少ないというデメリットがあります。ケース2
現場で項目別に絶対評価を行い、その後、現場に相対評価の権限を持たせる流れです。人事部門から「S評価は〇%、A評価は〇%」といった大まかな評価分布の目安が提示され、現場で相対化が行われます。この方法には、現場で絶対評価と報酬評価の両方をフィードバックできるというメリットがあります(最終的に多少の補正が行われる可能性はありますが)。しかし、部署ごとに相対評価を行うと、役職者や昇格予定者に高い評価をつけ、若手や立場の弱い人の評価を下げるなど、作為的な評価が行われるリスクがあるというデメリットも存在します。ケース3
従業員3,000名以上の大企業で採用されています。現場では絶対評価で運用し、一次・二次評価で絶対評価のフィードバックを行います。最終評価は、事業部長や部門長クラスが決定し、報酬評価は特定のロジックに基づき、人事部門が相対化する流れです。相対化をシステム化している企業もあります。この方法には、評価決定の調整時間が比較的少なく、相対化されるポイントが社員にとって分かりやすいため、不平不満が少ないというメリットがあります。一方で、事業部や部門で最終評価を決定することで、高評価者と低評価者が固定化する傾向があります。ケース4(おすすめ)
現場で絶対評価をフィードバックし、その後、評価会議などで最終評価を相対化します。この方法のメリットは、最終評価の相対化において評価結果について情報交換ができる点です。可能であれば、評価だけでなく評判の交換、昇進・昇格の検討、異動の検討、成長課題の共有なども行うことで、より建設的な会議になるでしょう。これは弊社が最もお勧めしている流れです。ケース5
外資系などの職務等級制度に採用されているものです。この制度では、人を評価するのではなく、仕事を評価するため絶対評価が貫かれます。基本的に同一の仕事をしている限り、昇給しないことが前提です。流れはシンプルですが、仕事をいくつかの視点でポイント化して絶対評価を行うため、評価制度の設計と維持には時間とコストがかかります。余談ですが、日本では定期昇給の習慣があるため、担当している仕事の価値が徐々に上がるように評価され、結局年功的な運用になっているケースも見られます。
相対化の母集団設計
評価の相対化において、どの母集団で相対化を行うかの設計は難しいです。以下の点を考慮して決定してください。
目的に応じて、どのグループを母集団にするのか決定する
誰を昇格させるかを重視する場合は等級別にグループを組み、職種ごとの業務内容の違いを重視する場合は職種ごとにグループ化します。もちろん、両方が複合的に混在する場合もあるでしょう。相対評価を行う評価者が、一人ひとりの仕事ぶりをある程度把握できること(拠点単位で実施するなど)
見えない人に対して相対化をするのはかなり難しいです。評価者からメンバー一人ひとりの仕事ぶりを把握できること、つまり「見える」ことが前提条件となります。昇給額や賞与支給額の配分の偏りを防げること(管理職・一般社員を分けるなど)
例えば管理職が良い評価を得やすい会社では、管理職と一般職を分けることも必要になってきます。人数が少なくなりすぎないこと(2~3名で相対化は困難です)
あまり細分化しすぎると、相対化が難しくなってしまいます。
相対化の方法
相対化の方法については、主にExcelなどを使用します。下記のように一次評価・二次評価の評価結果を入力し、評価会議などで相対評価を実施します。
左からプロフィール、業績系と行動系の評価、ウエイト付けをして点数化します。総合評価得点でソートをかけて、「上から〇%がS評価」といった形で決定したり、「A君とB君は入れ替えた方がいいのでは」など評価会議で議論して、最終的に決定していきます。
この表は弊社HPからExcelシートをダウンロードできますので是非ご活用ください。
▼無料ダウンロード:評価結果集計一覧(評価の相対化)
相対評価に関するフィードバック
現場で絶対評価の結果が良い人は、相対評価の結果も良い傾向があるでしょう。一番問題なのは、絶対評価より相対評価の結果が低くなる場合です。もしそうであれば、その被評価者は日常の仕事ぶりや周囲からの評判といった面で何らかの課題を抱えているはずです。それらも含めてしっかりフィードバックできれば、その被評価者の行動変容につながるでしょう。
多くの人事制度は、昇格により年収水準が上がる傾向にあります。従って、賞与や昇給の評価に一喜一憂せず、確実に毎期および中長期的に成長することが大切であると、評価者と被評価者に伝え続けることが大切です。これまでの解説を基に、自社ではどこで相対化を行うのが良いのか、一度社内の皆さんと議論をしてみてください。
評価制度設計に役立つ資料のご紹介
▼人事評価シート活用マニュアル(テンプレートあり)
▼評価制度のムダを取り除く方法<評価制度にかかる時間の算出シート無料テンプレート付>
▼評価結果集計一覧(評価の相対化)
より詳しく学びたい方へ
より詳しく学びたい方は、動画をご覧ください。テキストと演習用ワークシートは弊社HPからダウンロードできますので、ご利用ください
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テキスト・演習用ワークシート
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