見出し画像

オリジナル曲制作

 初めてオリジナル曲を書く時は、出来上がると凄い達成感を味わうだろう。特に作曲を手掛けたメンバーが、メンバー全体に共有し、バンドとして完成させた時は、達成感に満ちている。

 しかし、今度、デモを録音して何度か聞いてみると、何かが足りないことに気が付いてくる。私のバンドで作曲をしたものでは、「メロディキャッチーさ」と「ブリッジ」である。少なくともこの2つが抜けていると、言い換えると、後で「稚拙」に聞こえてくるようになる。

 では、その二つを追加すればいいのかというと、そんなに単純で簡単にできることでもない。大体、その人の作曲するスタイルというのは、オーソドックスに決まっているものが多く、癖が出てくる。その領域から抜け出すのは、非常に難しかったりするのだ。

 一番いいのは、自分が書いた曲を、バンド以外の作曲ができる人に聞いてもらい、全く新しい耳で思い浮かぶフレーズやインスピレーションを追加するお手伝いをしてもらうのが一番早いだろう。

 「新しい耳」というのは、レコーディングや作曲では非常に重要になる。手紙を書くのに似ている。好きな相手に手紙を書き、翌日投函しようとしている状況を思い浮かべて欲しい。まだ、封筒に入れないままで、翌日の朝、起きたら一度読み直してみて欲しい。「何を書いているのだろう」と思う時があるはずである。

 作曲やレコーディングに関しても同じである。レコーディングしたものを、翌日、もう一度スタジオに行って聞き直してみると、なんでこれでオーケーが出たのかと思う時が多々ある。

 何度も同じフレーズや音を聞いていると、それが耳に慣れてしまい、違いに気がつけなくなってしまう。しかし、一晩寝た後に聞き返してみると、前日に感じた印象と異なる印象を受けることが多い。耳がリセットされていると言ったらよいのか。その耳を信じて、物足りない部分をつけたしながら、第二のフェイズへと進むのが一番よい。

 ローカルバンドでのレコーディングとなると、自分たちの予算も限られていて、作業時間を延長することが困難になる。その為、修正を続けずに出来たままを完成品にすることが多い。そういう状況の時は、次に作曲する際に盛り込んで、新しい曲のレベルを一段階上げるようにする。

 これは、作曲だけでなく、商品開発と全く同じである。今回制作したものにマイナーチェンジしたい箇所が見つかったけれども、7割完成しているなら、リリースするべきである。少しでも売り上げに繋げるのが鉄則である。

 また、好きなアーティストのアルバムを買い続けていると、今回の新譜は、1曲しかいいのがないと思う時がある。これが、未完でもリリースすべきのいい例である。1曲でも「シングルカットすれば売れそうなキャッチーな曲」があれば、残りの曲がまるで捨て曲になっていたとしても、リリースすべきである。

 逆の言い方をすると、全曲が捨て曲になってしまっている時は、その中の1曲だけでも編曲家の力でも借りて、アレンジを加えキャッチーなメロディラインを作ってからリリースすべきである。そうでなければ、売上も上がらなくなる。

 メロディにキャッチーさがある曲が1曲あり、シングルカットをする。シングルを聞いて「いいね」がたくさんついたとすれば、その人達はアルバムが気になる可能性も出てくる。そこで初めてアルバムが売れるというわけだ。

 仮にそのアルバムが「駄作」だとメディアから罵られたとしよう。それでもツアーは、CDを売るためのマーケティング活動であるので、CDをリリースしないままツアーに出るのもリスクであろう。ニューアルバムに、1曲しかキャッチーな曲が入っていなかったとしても、それ以外全て古き良き時代の曲を演奏すれば、ファンは間違いなく喜ぶし、そのライブをみて感銘を受けた新しいファンがニューアルバムを買うだろう。

 アーティストによっては、前期と後期で曲調が変わったアーティストもいる。古くからのファンは、後期のアルバムが好きではないが、後期から聞き始めた新しいファンもいたりする。10枚のアルバムを出して10枚ともミリオンセラ―を出し続けるのは至難の業である。だから、少しでも前進できるように、ビジネスとしての曲作りとツアーマネージメントするのが本当のプロだろうと思う。 

 なぜこんなことに言及するかというと、世界には、勿体ないバンドがいくつかいる。バンドのメンバーの軋轢で活動停止になったり解散になったりする。しかし、アーティストは、アルバムを買ってくれるファンがいるから成り立っているわけであって、まずはそのファンが喜ぶことに全力を注いで欲しいと願う。

 ミュージシャンも人間なので、メンバー間での衝突は避けられないかもしれないが、エゴを出さずにアルバムを出し続け、ツアーに来て欲しい。

 また、仲違いによってソロ活動に入る人気バンドもいるが、コケることもしばしば。概ね、ボーカルがソロになると、バンド時代の曲調で新譜が出ることをファンは期待しており、それ以外の期待はあまりない。往々にして、ソロになると、バンドの頃の曲調とはガラッと変わって、腹落ちしないアルバムに仕上がったりすることはある。

 バンドの時は、人気バンドだったから予算も下りただろうし、メンバー各々にファンがついているから、見に来るファンも多い。ソロになれば、ボーカルだけが、人気バンドのメンバーで、演奏部隊はバックバンドとなる。そうなると、バックバンドのファンが来るわけではないので、集客も自ずと減ることになり、小規模の箱でのライブが続くことがある。

 事情が事情なので、ソロでの活動を余儀なくされたかもしれないが、人と人は、最終的には、受け入れ合った方が得策に間違いない。報酬の%が少ないから再結成は受け入れないと思っても、動員数が桁違いでもあるし、それに音楽が好きで始めたのだから、それで人生を終えられるのであれば本望ではなかろうか? 

少なくともソロでこじんまりとした箱でしかライブが出来ない姿のまま、アーティスト人生を終えるのであれば、最後に伝説のアーティストとなって生涯を閉じる方が、自分にとってもファンにとっても幸せではないだろうか? 私は、少なくとも、そう信じている。

いいなと思ったら応援しよう!