部対抗リレーの恒例行事
部対抗リレーは、徒競走の意味合いでの人気は勿論なのだが、よせばいいのに必ず笑いを仕掛ける者たちが出てくる。この演出は、教諭陣には知らせておらず、必ずサプライズで当日いきなり事件のように始まる。気の毒なのは、この仕掛けの後、体育会の顧問たちにこっぴどくシバかれるという宿命にあり、代々「望むところだ」と声を上げる精鋭が揃う。
このサプライズを行う全員がシバかれるわけではない。シバかれるのは、演出の中で怪我しそうな程、危険な行為に近い演出を行ったチームが公開処刑を受けることになる。そもそも、部活対抗リレーとなるので、体育祭の責任者から生徒は怒られるし、体育祭責任者は、部活の顧問に対しても厳重注意をするだろう。注意を受けて、部員をシバきに行くというのも恒例の行事である。
恒例の部対抗リレーで気の毒な部がいる。それは、剣道部だ。胴着を切ることが一重苦目。これにより非常に走りにくい。面をつけていることで前も見えにくい。これが二重苦目。更に、竹刀を持たされている。三重苦目。バトンの他にだ。邪魔でしょうがない。これだけ邪魔なものをつけている中で、スピードを競うのが不利過ぎる。
サッカー、ラグビー、陸上であれば、走ることが本質にもなっている。その延長でリレーであれば、彼らの利の部分を発揮することになる。しかし、剣道部は、走ることが本質ではないため、利を活かせないばかりが、リレーだけなら、胴着をつけなくてもいいものを、なぜつけさせられているのだろうか? 辞退した方が、部の面子と名誉を守れる気がしないでもない。
次にバスケ部だ。通常、バスケ部は、トップ集団にいることが多い。持久力にも長けているが瞬発力にも長けている部員もそれなりにいたりするからだ。また剣道部のように、部の象徴となるような恰好をする必要もないし、ユニフォームを見れば、誰でもバスケ部と分かるから、そのまま走れば問題なかったはずだ。
しかし、何を思ったが今年のバスケ部は、スタートからサイドステップでゴールまで突き進むという偉業を成し遂げた。最初は、第一走者だけかと思った。何故なら、サイドステップでスタートした時点で、「出オチ」が完了しており、このままバトンを渡した後も、第二走者がサイドステップを続ければ、レースの遅延に繋がるだけでなく、ただ滑るだけの存在になってしまうからだ。
そのルールに情けをかけたのか、第一走者のスタート時に、一旦逆走しハンデをつけてから通常のコースに戻るという奇行に出たのがサッカー部である。スタート直後から場内は爆笑に包まれ、いかにしてトップ集団にまで順位を上げるかが課題になった。
そもそもラグビー部は俊足が揃っており、ラグビー部に叶わない前提がある。その中でよく逆走しようと思った勇気は称えたい。
部対抗リレーは、毎年、ラグビー部が優勝するのがほぼ決まっているため、2位以降でいかに場内の期待を裏切ってレースを盛り上げるかが肝になる。バスケのサイドステップは、ナイストライだが、すぐに滑り始めてしまう。それが悪い期待の裏切り方だ。恐らく場内は、バスケ部も上位に食い込んで欲しいと願ったに違いない。
部対抗リレーには、常勝チームへかけられた期待と、それ以外のチームに掛けられたいい意味での期待の裏切りだけが注目されるのだが、いい意味での期待の裏切りににも入れてもらえない部活もある。
先ほども言及した、剣道部、弓道部、卓球部、水泳部、テニス部あたりである。テニス部は、モテそうな部活なような気もする。しかし、リレーにおいては、突き抜けた俊足が花形であって、モテそうなイメージがあったとしても、俊足でなければぼやけてしまうし、この大会においては完全に埋もれてしまうのだ。
箱根駅伝の大東文化大や順天堂大学を思い描いて欲しい。記録に残る準以内には入るものの、突き抜けていないがために、順位に名前が残るくらいの印象しかないのは否めない。それが、テニス部なのだ。
卓球部。テニスと並ぶラケット競技で、近年、日本のチームもランキングを上げて注目株の競技になってきたことは事実。埋もれていた競技を明るみに出した功績は大きい。
しかし、部対抗リレーになると、やはり「俊足」でなければ埋もれてしまうのだ。次に、なぜだか卓球部のユニフォームが地味である。なぜ、サッカーのようなユニフォームにしないのだろうか。
会場に入ってきた時に、「サッカー部が入ってきた!」という印象を与えて卓球を始めたら面白い。逆にテニスも卓球もラケット競技だが、なぜテニスのユニフォームは地味に見えないのだろうか。逆に言うと、テニスのユニフォームで卓球の試合に出たとしたら、地味には見えなくなるのだろうか。謎が多い競技である。
さて、水泳部だ。水泳部の強みは、泳いでいなければ「肉体美」にあると思う。結構いい感じの「細マッチョ」好きな人は会場にいるはずで、それが部員の普段の姿とのギャップを生み、モテキャラに変えてくれるかもしれない。なのに、なぜ、普通の体操着で走るのか。気の毒過ぎる。
弓道部はどうだろうか。私の高校の弓道部は強かった。にもかかわらず、部対抗リレーになると、そんな事実がかき消される程に偏見の眼差しにさらされる。弓道の場合は、胴着というのだろうか。面と小手を除けば、剣道部に繋がるものがあることは否めない。
いい裏切りとしては、剣道部も弓道部も走りにくさがある中で、ラグビー部と同じほどの俊足がいたとしたらかなり盛り上がる。胴着を着ているだけで、俊足ではないというバイアスが生じることは、2つの部に関しては、非常に気の毒に思える。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?