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大学選定の面接

 私が説明会にこのエージェントを訪れたのは、大学の合格発表でも最後のあたり。2月下旬か3月初旬である。渡米の飛行機が5月中旬に出発することを考えると、最後のグループである。

 受け入れ大学は、東海岸のDC、マサチューセッツ地区、中西部のテキサス地区、西海岸のカリフォルニア地区と、大きく分けるとこんな感じである。総合大学とカレッジと呼ばれる小規模な大学も含まれていた。

 アメリカというと、誰もがLAに行きたがる。気候も乾燥していて涼しく、夏はクーラーいらずという程、過ごしやすい地区の様である。それにエンタメも全て揃っているし、NYと並んで情報の発信元という感じで、多くの人に人気がある。また、シリコンバレーがあるのも、カリフォルニアのサンフランシスコで多くの起業家を輩出している場所でもある。

 私は、その昔、非常に映画が好きで、映画監督になりたいともったことがあった。カリフォルニア州立大学のロングビーチ校は、提携大学になっていて、ここは、スピルバーグ監督が卒業した大学でもある。しかし、私が説明会に訪れた時には、既に受け入れ定員に達しており、多くの大学が締め切っていた。

 その他に、ボストンにある、バークレー音楽院をドラムでいけないかと探ってみた。すると、父が

「バークレーに行ったら、お前は音楽活動ばっかりやりそうだし、プロになりそうだからダメだ。」
とNGが出た。

 次にボストンのクラーク大学には、当時「言語学」に関する専攻があった。予備校時代の英語の先生が、英語を英語で教えるTESLの話をしてくれて、言語学を学び、英語の教師になろうと夢見たことがあった。そこで、クラーク大学の言語学に進めないかを確認すると、クラーク大学は受け入れ数が少なく既に埋まってしまったとのこと。

 では、「一体どこに空きがあるというのだろう」と考えあぐねたが、自分が一度も検討にいれなかったワシントン特別区にあるカソリック大学なら、まだ空きがあるとの事だった。その名前は、受け入れ大学の写真を見ていて目に就いたのを覚えているが、自分がクリスチャンではないので素通りしていた。

 カソリック大学といっても、クリスチャンである必要はない。設立当初は、神学や聖書学、哲学という学部で始まったものの、私が入学した時は、建築学、演劇学、看護学、音楽などで有名だった。

 マンモス校ではなく、比較的生徒は少ない大学ではあったが、現地のアメリカ人に「カソリック大学に通っている」と言えば、「いい大学に通っているね」と言われるような大学ではあった。

 父からすると、ワシントンDCの大学へ通ってもらうことが望みだったようだ。なにせ、DCは政治を行う地域で、エンタメに近いものはあまりない。観光地として、メモリアルや博物館がいくつかあるものの、他のアメリカの州と比較すると、ダイヤモンドの形をした小さな地域。しかも、DCの東側と南側は危険なためほぼ行かない。となると、DCの北西部しか行動範囲がないのだ。

 行く側として、ここまで勉強しかすることがない地域を選ぶのは癪だが、アメリカに行けるなら、正直どこでもよかった。それ程、「アメリカにいること」自体が私にとって重要だったのだ。

 当時の私の邪な考えは、表向きの理由は何であれ、アメリカに行ってしまえば、そのまま「プロのミュージシャンを目指せる」と思っていたのだ。別にバークレー音楽院に行かなくても、音楽活動はきっとできると信じていた。だから、「言語学を学んで将来は大学で英語を教える」だとか言っておいて、現地に行ってから、音楽活動に打ち込もうと思っていた。

 残念ながら、カソリック大学には「言語学」の専攻はなかった。その代わり、もう一つの興味である心理学があった。大学を選んだときは、英文学としていた。しかし、外国人が英文学部を選ぶというのは非常に敷居が高いという。他にも留学生にとって敷居が高い専攻は、哲学、文学、歴史、看護、法律、医学、などだ。

 なぜかと言うと、この学部の中で文系科目は、読書量が多いということ、理系に関して言うと、専門用語が多く、その用語を覚えなければならないことだ。看護学部の教科書は、どのクラスをとっても百科事典みたいな教科書の厚さである。理由は、薬の名称を覚えなければならないのと同時に、病名も覚えなければならないからだ。

 歴史や哲学、文学部は、読書量が多い。ここに敢えて挙げなかったが、社会科学系も読書量が多い。そういう理由もあり、留学生の多くは、経済、IT、会計、国際教養などの学部を選ぶことが多い。

 医学、法学、教育学部は、学部に沿った職業を選ぶとすれば、免許がいる。しかし、その免許は、アメリカでしか有効ではない。日本に帰国することを前提とするならば、この3学部を卒業して、日本でその道に進むなら、日本の大学も卒業する必要も出てくるだろう。それはお金がもったいない。この3学部に進む人は、アメリカで骨をうずめる人にお勧めする。

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