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漢字練習プリント
小学生当時、学校で漢字練習のためのプリントを宿題としてもらうことがあった。恐らく今でも平仮名やカタカナ、漢字の宿題のためのプリントを学校で渡されることだろうと思う。
私は、すぐに漢字練習プリントが好きになった。低学年の時は、漢字練習帳よりもプリントで出されることが多かった。しかし、学校で渡されるプリントはすぐに終わってしまうことから、自分で同じものを作成して印刷しようと考えた。
最初に悩んだことは、どうすればこんなにきれいにまっすぐな線が引けるのかということだった。後に学校には、コピー機の印刷では映らないグリッド入りの紙があって、そのグリッドに沿って文字を書いたり、表を書いたりしているので、きれいに線が引けるのだということを知ったが、その当時はどうすればいいのか分からなかった。
手に入る紙と言えば、わら半紙か上質紙しかなく、双方にグリッドはない。あったとしても、コピー印刷に映る線だっただろう。
そこで思いついたのが、画鋲作戦だ。学校で貰う漢字練習の紙の下に上質紙をぴったりと重ねて、漢字を書き入れるマスの四隅に画鋲で穴をあける。画鋲を抜いたら、穴同士を線で結ぶと真っ直ぐな線を引くことが出来た。これを繰り返して、きれいな漢字練習帳のようなマス目を上質紙に書くことが出来た。
画鋲を刺した紙には穴が開いてしまっているが、コピー機で印刷すれば、穴っぽさが印刷されるものの、さほど気になるレベルではなく自家製の漢字練習帳が完成した。
頭のいい人なら、ここで「漢字練習帳を使えば良かったんじゃない」という正論を投げかけてくるだろう。コピー1枚10円、当時ノート1冊120円程の時代である。12枚印刷すればノート1冊分の金になるし、ノートの方が両面にマスが書かれてあるから、より多くの漢字が練習できる。
私は、この印刷を母に会社で印刷してきて欲しいと依頼したのだ。会社の印刷は、枚数がカウントされており、月極で印刷した枚数分の請求が会社に来る仕組みになっている。しかし、そんなシステムを知ったのは、最近のことだ。当時は、「会社がコピー機を購入していて、印刷は無料で自由だ」と考える小学生だったのだ。
母も隠れて印刷しなければならないので、ドキドキしながら印刷していたと話していた。昨今、社員証のようなIDでユーザーを特定してから印刷をするので、誰が何枚印刷したかは特定できるようになっていると思うが、恐らく当時は、そこまで細かくは管理されていなかったのだろうと思う。母にまとめてコピーしてきてもらうことを楽しみに待っていた初心な小学生だった。要するに金が全然なかったのだ。